【詳細】他の写真はこちら

デジタル世代の身の丈に合った腕時計選び



腕時計はなんとなく欲しいけど、何を買っていいのか分からないという読者のために。業界で“ハカセ”と呼ばれる、腕時計ジャーナリスト広田雅将の腕時計選び指南書『デジタル世代の身の丈に合った腕時計選び』。

磁気に耐えるのではなく磁気を通してしまう



あまり知られていないが、アナログ時計は磁気に大変弱い。磁石に近づけなければ問題ないが、今の生活ではそうもいかないから困ったものだ。

仮に時計が磁気を帯びたらどうなるのか――。機械式時計の場合、遅れるか進むか、最悪の場合止まってしまう。クォーツは磁石から外せば動き出すが、やはり故障の原因となる場合がある。たまった磁気を抜くには時計屋に持ち込むほかなく、最悪の場合、何万円か支払って分解掃除する必要がある。

今の生活で磁気を避けられない理由は、主にふたつある。ひとつは、カバンの留め金に磁石が普及したこと。そしてもうひとつは、いうまでもなく携帯電話の普及だ。カバンの留め金に使われる磁石は、かつてよりはるかに強力になった。とりわけ、ハードディスクやカナルイヤホン向けのネオジム磁石が転用されるに至って、ラフに扱っても滅多に外れないほど強力になった。確かにそれは歓迎すべきことだが、結果としてアナログ時計を簡単に磁気帯びさせることになった。あくまで私見だが、高価な機械式時計を使っている人は、絶対にマグネット式の留め金を持つカバンを買うべきでない。カバンに時計を近づけて壊した人、そして高い修理代を払った人を、筆者は何人も知っている。

携帯電話もやはり鬼門だ。小さな携帯電話がクリアな音を出せる一因は、スピーカーにネオジム磁石を使ったためである。小さいとは言え、その磁力は普通の磁石の10倍以上。小さいから磁気は大したことないだろう、と思って時計を近づけると、簡単に磁気帯びしてしまう。

アナログ時計の鬼門である磁気。現時点で、完全にスルーできるのは、オメガの『マスター クロノメーター』だけだ。その耐磁性能は1万5000ガウス以上と、超伝導コイルを内蔵したMRIに近づけてもまったく問題がないほどだから、まず日常生活では無敵だ。ちなみに、マスタークロノメーター以前にも高い耐磁性能を誇った時計は存在した。しかしその耐磁性能は最大でも8万A/m。ガウスに換算すると約1000ガウスしかないのである。昔は問題なかったが今の生活では、ハンドバックの留め金にギリギリ耐えられるかどうかだ。気をつければ十分使えるが、磁気なんか気にせず時計を使いたい人にはいささか不十分だろう。





OMEGA

SEAMASTER AQUA TERRA MASTER CHRONOMETER

価格:62万6400円 ※8月発売予定

オメガの定番モデルが、シーマスター アクアテラ。しかしムーブメントは超耐磁性能を誇るキャリバー8900/8800に変更された。ケースサイズは2種類。41个38个任△襦I者は小さな38丱汽ぅ困鬚鮃イ爐、41个里曚Δバリエーションは多い。なお写真のモデルは41丱汽ぅ此ケースの厚さは41丱皀妊襪13.2弌38丱皀妊襪12.26个靴ないため、シャツの袖口にも引っかからないだろう。

ではなぜ、『マスター クロノメーター』はかつてない耐磁性能を持てたのか。理由は簡単で、磁気をシャットアウトするのではなく、磁気を通す素材を選んだからである。今までの耐磁時計は、ムーブメントの外周を軟鉄のカバーで覆うことで、磁気をシャットアウトしていた。対して『マスター クロノメーター』にカバーはない。しかしオメガは、ムーブメントに使われる素材の大半を非耐磁に変えることで、磁気を通したのである。オメガの技術力は”逆転の発想”を可能にしたのである。

現代人の生活にこそ相応しい『マスター クロノメーター』。文字盤に「MASTERCHRONOMETER」と書いてあればどのモデルでもいいが、個人的なお勧めは2017年度版の『シーマスター アクアテラ マスター クロノメーター』、しかも38丱皀妊襪澄なぜかオメガはマスター クロノメーターに日付表示を入れたがらないが、このモデルは数少ない例外で、6時位置にちゃんと日付がある。またサイズが控えめなため、腕が細い人でもフィットする。加えて言うと、最近のオメガらしく、外装の仕上げはかなり良好だ。とりわけ左右の遊びを抑えたブレスレットは、過去のオメガとはまったく別物といえるほど、良くできている。



▲38丱皀妊襪搭載する、Cal.8800。8900より小型だが、耐磁性は同じで、パフォーマンスもほぼ同等である。ケースを軟鉄でカバーするのではなく、ムーブメントの素材を非耐磁にすることで高い耐磁性能を得た。

正直、気をつければ磁気帯びの問題は回避できる。しかし時計マニアならいざ知らず、普通の人にそういう気遣いを期待するのは難しい。絶対に磁気を帯びず、正確で、そして質感も高いオメガの『シーマスター アクアテラ マスター クロノメーター』。デジタル世代の皆さんにこそ相応しい、新しい世代の実用時計だ。



▲こちらは8900を搭載した41丱皀妊襦2然覆91万8000円(税込)。かなりの金額だが、充実した内外装を考えれば妥当か。とりわけケースと文字盤の出来映えは、以前のオメガとは比較にならないほど良好だ。

文/広田雅将

広田雅将/1974年生まれ。時計ライター/ジャーナリストとして活動する傍ら、2016年から高級腕時計専門誌『クロノス日本版』の編集長を兼務。国内外の時計賞の審査員を務めるほか、講演も多数。時計に限らない博識さから、業界では“ハカセ”と呼ばれる。

※『デジモノステーション』2017年7月号より抜粋

関連記事



シンプルな腕時計の理想型「Knot」。メイド・イン・ジャパンの完成度、コスパ共に申し分なし

普通の腕時計とは異次元の装着感!薄くて軽い、かつ強い、RADO『TRUE AUTOMATIC』

ミリタリーウォッチなのにデスクワークにも向く?ルミノックスの腕時計『Ref.3001 XQ』が万能なんです

「時計ブランドが手掛けるスマートウォッチ」今、狙うべき7本はコレだ

時計のプロに訊く。予算5万円でスマートウォッチって選択肢はアリ、ナシ!?