サイコパス一家と監督!(左からマチュー・カソヴィッツ、子役のファンティーヌちゃん、イザベル・ユペール、ミヒャエル・ハネケ監督、ジャン=ルイ・トランティニャン) - カンヌでのフォトコールにて
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 現地時間22日、第70回カンヌ国際映画祭でオーストリアの鬼才ミヒャエル・ハネケ監督の新作『ハッピー・エンド(原題) / Happy End』(コンペティション部門)の公式会見が行われ、ハネケ監督が本作とパルムドールやアカデミー賞外国語映画賞に輝いた前作『愛、アムール』との関係を語った。

 『ハッピー・エンド(原題)』は、難民が押し寄せるフランス北部の港町カレーを舞台に、ヨーロッパのブルジョワ一家の暮らしをブラックなユーモアとSnapchatの画面サイズで切り取ったドラマ。ジャン=ルイ・トランティニャン演じる祖父ジョルジュからイザベル・ユペールふんする娘、そしてスマートフォンを使いこなす愛らしいけれど邪悪な孫娘まで皆深く病んでいる。

 ジョルジュという名前は、『愛、アムール』でジャン=ルイが演じたキャラクターと同じ。二人は設定も共有しているおり、ある意味で本作は『愛、アムール』の続編と言えるかもしれない。しかし、ハネケ監督は、それは意図したことではなかったといい、「『愛、アムール』はわたしの人生に起きたことがきっかけで作ったものでした。わたしは、ただそれをもう一度違った方法で語りたかっただけです」と説明した。

 「ハッピー・エンド」というタイトルの本作のラストは衝撃的で、それは車椅子に乗るジョルジュと孫娘が海辺を歩いているときに訪れる。86歳のジャン=ルイにとって、肉体的にもきついシーンになった。それでもジャン=ルイは「3日かけて撮りました。たくさんの解釈ができるラストだと思います。もしかしたらハッピー・エンドかもしれないし、アンハッピー・エンドかもしれません。ミヒャエル(・ハネケ監督)はこのやり方にすべきだと考えました。わたしはどちらだったとしても素晴らしいと思います」と晴れやかに笑った。

 本作にはツールとしてソーシャルメディアが登場するが、ハネケ監督には思うところがあるよう。最後に現代について「われわれは情報を氾濫させ、次第に目が見えなく、耳も聞こえなくなっています。よく知っているという気になっても、何が起きているのか本当は何も知りません。個人的に経験したことしか、本当の意味で知り得ることはないのです。そうした情報はとても表面的なもので、実際の人生とは無関係です」ときっぱり語っていた。(編集部・市川遥)

第70回カンヌ国際映画祭は現地時間28日まで開催