北朝鮮の協同農場は、社会主義的農業集団化の典型的な失敗例だ。

種子や農機具が不足している上、熱心に働いてももらえる給料は変わらないため、農場員たちのやる気が起きない。彼らは収入に直結する個人耕作地に力を入れ、協同農場の仕事はおざなりにしている。インセンティブ制度である「圃田担当制」が導入されたが、約束されていた分配が行われないなど、成功しているとは言い難い状況だった。

それが最近になって急速に変わりつつあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が伝えてきた。変化のきっかけとなったのは、中国からの投資だ。

(参考記事:「中国に見捨てられたら一巻の終わり」北朝鮮で広がる不安

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、道内の協同農場の35%が中国資本との合弁で営まれている。昨年はそのすべてが豊作となり、注目を集めているという。

中でも最も成功した事例として、北朝鮮の冠帽峰(クァンモボン)会社と、中国の延辺天下之本農業生産資料有限公司の合弁事業が挙げられる。

天下之本社のウェブサイトによると、同社は2004年、道内の穏城(オンソン)郡の下三峰(ハサムボン)協同農場の田畑50ヘクタールの生産を請け負い、科学的に生産量を増加させるために、技術指導を行い、除草剤、殺虫剤などの農薬を提供し、生産量の増大に成功した。この農場は、川を挟んで中国吉林省延辺朝鮮族自治州の龍井市開山屯鎮と向かい合っており、収穫物の運送にも便利な場所だ。

農場では、合弁相手の要求する作物を優先的に栽培する。天下之本社が要求しているのは、小豆だ。北朝鮮では春には肥料の値段が上がる一方で、小豆の値段は下がる。中国では小豆の値段が高い。その価格差を利用すれば、3倍以上の利潤が得られるという。

それ以外にも、国から割り当てられた穀物の生産も行っているが、それには合弁相手から提供された生産手段を利用している。つまりは「ウィン・ウィン」が達成されているわけだ。

このような合弁に、延吉、瀋陽、北京などの農業研究所や企業も進出。道内の農場は、投資を誘致しようと競争を繰り広げている。

別の情報筋によると、中朝国境に面した穏城、会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)の多くの協同農場が、中国からの投資を誘致しようと競っている。誘致の成功が、今年の作況に直結するからだ。

核・ミサイル開発に対する制裁の影響が懸念されるが、農場としてはやれることをやるしかない。

天下之本社の場合、種子、肥料、農機具はもちろん、農場員の食料としてインスタントラーメンまで提供してくれる。何もくれない国よりも、いたれりつくせりの中国企業のほうがよっぽど頼りになるということだ。

北朝鮮の農業は、故金日成主席と故金正日総書記が提唱した「チュチェ(主体)農法」に長年縛られてきた。その代表例が、全国段々畑化だ。

1976年10月の朝鮮労働党第5期12回全体会議で採択された「自然改造5大方針」に基づき、大々的に山を切り開き、国中に段々畑を作った。保水力を失った山は、大雨のたびに土砂が流出。大規模な水害を引き起こし、農場に壊滅的な被害を与えた。それが90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の一因となった。

やり方を改めようと現場が上に意見でもすれば、大変なことになる。金日成主席、金正日総書記の教えに背いたとの理由で政治犯扱いされ、厳しい処罰を受けるからだ。

合弁農場が、このような状況からどのようにして脱することができたのかは詳らかでないが、何らかの方法で、最高指導者と国家のメンツを立てているものと思われる。