米国のトランプ大統領の「ロシア疑惑」が“底なし沼”の様相だ。一連の疑惑を捜査していたFBI長官を解任したことが傷口を広げ、新たに任命された特別検察官の捜査の進展によっては弾劾が現実味を帯びる可能性もある。写真はホワイトハウス。

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2017年5月27日、米国のトランプ大統領のロシアにまつわる疑惑が“底なし沼”の様相を呈している。一連の疑惑を捜査していた米連邦捜査局(FBI)の長官を突如解任したことが傷口を広げた。大統領自身の疑惑も相次いで浮上。新たに任命された特別検察官の捜査の進展によっては弾劾が現実味を帯びる可能性もある。

FBIのコミー長官の解任は電撃的だった。米メディアによると、大統領は1月27日、コミー氏を1対1の夕食会に招待。この席で自身に「忠誠」を誓うかコミー氏に尋ねたが、同氏は「誠実」に行動すると答えただけで、忠誠は誓わなかった。その後、コミー氏が大統領選時のトランプ陣営とロシア政府の「共謀」疑惑の捜査を行っていると明らかにしたことなどで、大統領は徐々に不信感を強めたとみられ、今月9日に解任に踏み切った。

米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、解任翌日の10日にはホワイトハウスでロシアのラブロフ外相やキスリャク駐米大使らと会談した際、「FBI長官をクビにした。狂っていて本当に変人だ」と発言。「ロシアのせいで私は大きな圧力を受けていたが、それが取り除かれた」「私は捜査の対象になっていない」などとも語った。発言は会談要旨をまとめた公式文書に記されているという。

さらに、ニューヨーク・タイムズなどは16日になって「トランプ大統領がロシアとの接触を理由に今年2月、辞任に追い込まれたフリン大統領補佐官(国家安全保障担当)に関する捜査の終結をコミー氏に求めた」と報じた。ホワイトハウスは報道を否定しているが、コミー氏は大統領との会話のメモを持っているとされる。

疑惑は17日に米司法省がモラー元FBI長官を特別検察官に任命した後も続出。米紙ワシントン・ポスト22日、トランプ大統領がFBIによる捜査公表に対抗するため、情報機関に圧力をかけ、コーツ国家情報長官に対し、証拠はないという見解を公に示すよう求めたほか、ロジャーズ国家安全保障局(NSA)局長にも電話で同じ要求をしたと伝えた。コーツ氏は不適切だと考え、要請を拒否。ロジャーズ氏はなぜ応じられないかを丁寧に説明し、このやりとりはNSAの内部メモに記録されているという。

こうした中、まだ少数派だが、民主党内では「司法妨害」などを理由に大統領の弾劾を目指すべきだと主張する声もじわりと広がり始めている。弾劾で大統領を罷免に追い込むには、下院の過半数の賛同を得て訴追し、上院の3分の2で有罪に持ち込む必要がある。両院の多数は共和党が握っているが、民主党は特別検察官の捜査に期待を寄せる一方、独立調査委員会の設置を呼び掛けるなど、粘り強く事実を積み上げていく方針だ。

トランプ大統領は核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮に対し、軍事力行使をもちらつかせ、中国にも北朝鮮を制止するよう圧力をかけている。しかし、肝心の政権で混乱が続くありさまでは金正恩・朝鮮労働党委員長や習近平国家主席から足元をみられかねない事態だ。(編集/日向)