北朝鮮の国家保衛省(秘密警察)と人民保安省(警察)は、違法行為を見かけたら電話で通報するよう呼びかけている。しかし、積極的に通報しようとする人はほとんどいない。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、国家保衛省と人民保安省は「両江道から、非社会主義の温床と反党反革命分子を根絶やしにする」とのスローガンを掲げ、取り締まりを強化している。

その一環として、人民班(町内会)の会議で、特殊な建物(省庁、軍関係)やチェビなどの貧しい人の様子を隠し撮りする者を見かけたら、110番、あるいは118番まで電話で通報するように呼びかけている。

隠し撮りをする者は、外国と通じたスパイであるとみなされているわけだ。

当局が、このように通報用の電話番号を積極的にPRするようになったのは、今回が初めてだと情報筋は伝えている。

しかし、積極的に通報しようとする人は少ない。報奨金をもらえるわけでもなく、通報すれば取り調べで何度も呼び出され、面倒極まりない。さらには、通報者の方が疑われることも多い。何の得にもならないのだ。

「今は何かを見かけても、見て見ぬふりをするのがいちばん安全だ」(情報筋)

通報としたとしても、多くの人はそれを口外しない。

密告者扱いされて隣近所から孤立したり、最悪の場合は暴力を振るわれたりするからだ。

このような状況で、幹部の間にも一般住民の間にも緊張が走っている。そもそも地域経済が様々な商品の密輸で成り立っている両江道では、違法行為に関わっている人が非常に多い。そのため住民らは、「こういうときだからお互いに気をつけよう」と声を掛け合っているという。

一方で、取り締まりは長続きしないだろうと見る向きもある。国家保衛省も人民保安省も、違法行為を見逃すことでワイロを得ているからだ。非社会主義行為が根絶やしになれば、自分たちも生きていけなくなってしまう。

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