連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第6週「夏の思い出はメロン色」第47回 5月26日(金)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:渡辺哲也  


47話はこんな話


お給料が下がってしまった。
毎月すずふり亭でメニューのランクを上げることを楽しみにしていたみね子(有村架純)は・・・

ささやかな誇り1


お給料が下がってしまっても、みんな、仕送りの額は下げなかった。
そうなると、みんなの懐はさみしい。
みんなの表情もさみしい。
幸子(小島藤子)の目線に定額貯金のポスターという皮肉。

お給料を1番もらっている幸子は、気を使って、みね子たちに焼き芋をおごる。
この人、こんなだから、雄大にもたかられるんだろうなあ。真面目な優しい面倒見のいい人だ。

幸子の好意に甘えて、焼き芋を食べていると、焼き芋屋さんがアポロン社のラジオで相撲中継を聞いていた。
自分たちのつくったラジオは、世の中の人々の役に立っているんだという誇りを感じた瞬間だろう。
しかも、大鵬の勝ち試合の様子を伝える臨場感あるアナウンスは、聞いてるほうを元気にさせる。

「下を向くのはやめようと思いました」とみね子。

「だから今月も行きました」 ああ、毎月行ってたんだなー、すずふり亭に、と感動。

ささやかな誇り 2


「来たな、月末娘」
井川(やついいちろう)のなかなかいい台詞。

毎月、給料日に来ては、少しずつ高いメニューを頼んでいたみね子だが、今月は、再びのビーコロ(60円)の注文。
無理して、なんでもない素振りをしていたが、高いメニューを好きなだけ食べている人たちに囲まれて、涙が出てきてしまう。

様子がおかしいことにすぐ気づいた鈴子(宮本信子)は、厨房の裏にみね子を連れていく。
鈴子は、いつのまにか「みね子」と呼び捨てている。
実と美代子のことが好きで、そのふたりの大事な娘みね子を「だから勝手に東京のお母さん代わり。おばあちゃんかな、ま、どっちでもいいや」と言って、話を聞き出す鈴子。

はじめてみね子がすずふり亭に来たときは、彼女が自分の給料で食べるプライドを大切にしてくれた鈴子だったが、いまやそんなこと言っていられない。遊びに来たらいくらでも食べさせてあげたい、という身内びいきになっている。
だが、みね子はそれを断る。
ビーフシチューが、「私の東京での目標なんです」というみね子。

特に東京でこれがしたい目標はなく(時子が女優を目指していることとの比較だろう)、ただただ働いて仕送りしている日々で、でも「それだけだと自分がないから」と、みね子はせめて「いつかビーフシチュー頼めるように」なることを目標にしていた。
「だから、自分の力で払わないとダメなんです」
それが彼女のささやかなアイデンティティだった。

「それだけだと自分がないから」という言葉にはハッとさせられた。
銀座で、買い物している人を「がんばった人たち」と肯定していたみね子は、彼らを自分に重ねて見ていたのだろう。
一寸の虫にも五分の魂、じゃないけれど、大きなことを成し遂げない人にだって、いろんな思いがある。
そういうところを掬い取って、ていねいに描いてくれて、ありがとう、と言いたくなった。

でも、そのあとは、「わかっけど・・・あら、なまりうつっちゃったわ」(鈴子)と笑いで湿気を払う。
そして、その後の、正義(竜星涼)、なにが「ごめん」なんだ! 気になる!
クリームソーダの氷のカタッと動く音と、シューッと炭酸のあがる音が、なんともいい余韻を残した。

いい話だなあ、と思うが、すずふり亭があまりにみね子に加担し過ぎなのはちょっと気になる。
偶然の出会いといえばそうだけれど、ほかにもこういう子が来たら、全員に食べさせてあげているのだろうか。
教会かなにかの設定(クッキーつくっている教会みたいに、食堂を隣接しているとか)にしたら良かったのではないか、とも思ったが、実と美代子が、ちゃんとお礼をもってきたりして礼儀を尽くしているからなのだろうなと思い直す。おそらくそういう誠実な人は少ないだろうから。
(木俣冬/「みんなの朝ドラ」発売中)