堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生がお答えする本連載。今日の相談者は萩原千賀子さん(40歳・メーカー勤務)です。

「夫と結婚して10年になります。もともとは会社の同期だったのですが、夫は政治経済系の勉強会に入るようになり、6~7年前に会社を辞めて政治家を志すようになりました。彼はこの間、ほとんど無収入だったので、生活費は私が出していました。

5年前から、夫は地元に帰り、本格的に別居を開始。かといって険悪な雰囲気ではなく、週末にお互いの地元を行き来していました。しかし、この1年くらいは、LINEで連絡を取り合う程度。夫は自治体の議員になるために、多忙を極めていて、夢に向かって進む彼を邪魔したくないと思う気持ちもありました。それに、私自身も、初めて管理職になり生活は仕事中心になっていました。

彼の実家はそこそこお金があり、地元に帰って来た彼の生活は実家がバックアップしていました。私に対しても、月1万円ではありますが、お金を振り込んでくれていました。

しかし先日、私は仕事で大失敗し、どうしても夫に会いたくなって、久しぶりに遊びに行ったら、夫の実家に内縁の妻と生まれたばかりの子どもがいました。内縁の妻は、中学の同級生で、小学生の連れ子もいるそうです。

夫と話をしたら、”離婚する気はないし、彼女もそれでいいと言っている”ということ。私もショックですが、夫の生活費を出していた時期もあり、夫の実家の財産が相手の女性に行くのは避けたいです。離婚しなければ、相手の女と子どもに財産はいきませんよね……」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……?

あなたの夫の財産が、内縁相手の女性や子どもにいかないかというのは、相続の場面を想定するのか、現状を心配しているのかにより、話が変わります。

相続の場面としては、子どもは認知されていれば相続人になります。

内縁の妻は、相続人ではありませんが、遺言で遺贈する(亡くなってから財産を贈る)ことが書かれていた場合には、財産を承継できます。

現状としては、夫が管理する財産は、夫が相手女性に贈与することで渡ってしまいますから、あなたが全てをコントロールするのは不可能でしょう。

妻であるあなたは、生活を維持するために現状容認するという場合、ご自身への婚姻費用の支払いがきちんと確保されるよう努めることがまずは必要だと思います。また、今後も別居を続ける場合、その婚姻費用という経済面や、夫婦のやりとりについては、夫と取り決めをして安定を確保できるようにすると安心です。

相談者の夫は、一流企業に勤める妻とは離婚せず、子どもの認知はするという決断をした。



■賢人のまとめ
妻であるあなたであれ、完全にコントロールするのは難しい。だからこそ、納得がいく結果のために夫と話し合いを。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/