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今回のテストはひと味違う

612psのメルセデス-AMG E63 S 4MATIC+は、先行するスーパー・サルーンたちを打ち負かせるだろうか。それを確かめるべく、「AUTOCARトライアスロン」をここに初開催する。

AMGのメタリックなレッドに塗られたEクラスを目にして、何かに似ていると思った。そう、「アイアンマン」だ。映画にもなった、アメコミのキャラクターである。

「アイアンマン」といえば、トライアスロンの一番きつい種目の呼び名でもある。3.8km泳いで、180km自転車を漕いで、最後に42.195km走る。それを休憩なしのぶっ続けでやろうというのだから、正気の沙汰とは思えない。

出場しようと誘ってくる友人がいなかったことに感謝したい。もっとも、誘われても答えは「ノー」だ。それを周りがわかっているから声が掛からなかったのかもしれない。そうであれば幸いである。

ただし、その3種競技というフォーマットを、クルマのテストに当てはめたら面白いものになるのではないか。ハイパーEセグメントの新顔であるE63 S 4MATIC+を、ライバルたちと、それぞれの得意分野で勝負させるのだ。

どの分野に、どのクルマを充てようか

先代E63はわれわれ好みの、アウトバーンを暴れ回るような類のセダンだった。今回もエンジンはV8ツイン・ターボだが、ダウンサイジングはさらに進み、また全車4WDとなった。先代にも4MATICは設定されていたが、英国に投入されるのは今回が初めてだ。

そして、われわれのテスト方法も初めての試みだ。いつもの4台で競って順位付けをするグループテストではなく、E63とそれぞれのライバルが、ジャンルを限定して対決する方式を導入してみたのである。

レクサスGS Fは、多くの点でAMGと比較しやすいが、このクルマ最大の美点は自然吸気であること、そしてそれが、4000rpmを超えたところで発する見事なサウンドだろう。E63のターボユニットと、この5.0ℓV8 NAによる「のど自慢」が最初の競技だ。

次に、4WDを得たE63の加速力が、スーパーカー並みのダッシュを見せるアウディRS7スポーツバックに伍するものなのか、いうなれば短距離走で勝負する。

最後はBMW M6グランクーペ・コンペティションパックとの比較テストだ。このMモデルは、金属スプリングに油圧パワーステアリング、後輪駆動で、今年2月のグループテストではポルシェ・パナメーラ・ターボをギリギリまで追い詰めたハンドリング純粋主義者である。

その点、E63 Sの仕立ては純粋主義とは言い難い。4WDであるばかりでなく、サスペンションは調整可能なエア・スプリングを装着する。

ただし、ドリフトできる後輪駆動モードを備えていることは見逃せない。600psオーバーで、0-100km/h加速は3.4秒、なによりドライバーズカー造りにかけては滅多にしくじることのないアファルターバッハ産の最新モデルである。なかなか興味深い対決となるに違いない。

サウンド勝負:vs レクサスGS F

騒音計を手に後から見た477psのGS Fは、左右2本ずつのテールパイプを斜めに配置している。教会に置かれた300年もののパイプオルガンを思わせる、とまで言ったら誉めすぎか。

理論上、サウンド面のクオリティは、ノンターボのレクサスにアドバンテージがあるはず。ターボは音量にも音質にも影響を与えるからだが、AMGのそれは少なくともボリュームを絞るほうには作用していないようだ。

しかも、今回のテスト車には£1,000(14万円)のオプションであるパフォーマンス・エグゾーストが装着されており、さらに音量は高まっているはずだ。

レクサスを走らせていると、4000rpmを境にして、上品なクルーザーが叫び声を上げるやんちゃ小僧へと化けるような、音の変化が劇的だ。変身と言ってもいい。

現状のパフォーマンス・サルーンの規格に照らせば、絶対的な速さでは見劣りするが、エンジンを思い切り回すと、運転席で聞こえるサウンドによって速いように錯覚させられる。

しかし、今回の計測はロードテストで実施する車内ではなく、車外で行う。それも、テールパイプのそばではなく、10歩ほど離れた位置だ。エンジン回転は5500rpmをキープする。街を歩いていて、行き過ぎるクルマのエグゾースト・ノートを耳にする状況を再現するのだ。

レクサスの音は、幻だったのか

すると、キャビンで聞くほどレクサスのサウンドは印象的ではない。しわがれ気味だが、AMGの低音が利いた唸りに比べれば、ややハイピッチで線が細い。

 

結局、GS Fの運転中に味わっていたのは、人工音を添加してスピーカーから発せられる合成音だったのだ。

E63 Sならば排気中の燃え残った燃料が熱せられた金属によって着火し、破裂音を響かせるが、GS Fはクランクシャフトが唸りを上げ、それからアイドリングに戻れば穏やかな音を立てるばかりだ。

レクサスの方がより洗練された音に聞こえるだろうか? そうは思わないだろう。

よそよそしく、自分の存在を周囲に示したくない時にはより気恥ずかしい思いをせずに済む。しかしドライバーの耳には、ほとんどの場合、それがより静かなクルマだとは思えないのだ。

騒音計は、GS Fで87.2dB、E63 Sで88.9dBを示した。わずかな差だが、AMGはより音響的な存在感で勝っている。バン!パチパチ……ポン!

その爆発音に、騒音計の針は跳ね上がり、100dBを超える。発砲音と同等だ。勝者はどちらか。AMGに軍配を上げたい。

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