“困り顔”で人気上昇中、工藤阿須賀の魅力とは? 『ちょっと今から仕事やめてくる』の演技を考察

写真拡大

 高身長にさわやかな笑顔で人気急上昇中の俳優・工藤阿須賀。2012年にドラマ『理想の息子』(日本テレビ系)でデビューすると、コツコツとドラマ、映画への出演を重ね、俳優としてのキャリアを積んできた。そのルックスから、役柄も実直な好青年が多かった工藤だが、最近は進路に悩む“困った顔”が女性ファンを中心に大きな話題となっている。

(参考:『ちょっと今から仕事やめてくる』写真

 工藤は、2016年に公開された映画『夏美のホタル』で、カメラマンを目指しているものの、自身の能力に迷いを感じ、夢を諦めようとする学生を演じた。その際、メガホンをとった廣木隆一監督に対して「映画というもののスタートラインに立たせてもらった」と語っていた。

 当時工藤は「現場で求められることに対して柔軟に対応できなかった。悔しさが残る」と振り返っており、多くの反省点が見つかったことを収穫にあげていた。中でも「自分が心に思った感情と、スクリーンに映った自身の表情が違う」ということを課題にあげ、気持の向き合い方を、より深く突き詰めていきたいと語っていた。

 その後、連続ドラマ『家売るオンナ』(日本テレビ系)では、北川景子演じる冷徹で厳しい上司・三軒家のもと、営業成績が上がらない青年・庭野を演じた。これまで工藤が演じてきた役柄とは違い、気弱でダメな部分も多く、状況によってしっかりと心情を表現できる顔、特に“困った顔”は、「可愛い」と女性の間では好評だった。さらに、連続ドラマ『就活家族〜きっと、うまくいく〜』(テレビ朝日系)では、就職活動に苦戦する三流大学生・富川光を演じたが、ここでも自身の進路や、次々と降りかかる家族の問題に“苦悩する顔”が印象的だった。

 またどちらの作品も、物語序盤と後半にかけて、人物の成長が描かれており、同一人物ながら顔つきの変化などもうまく表現されていた。まさに、自身が課題としてあげていた“役柄への向き合い方”=“役への理解”をしっかりとつかんだのかなという印象を受けた。

 最新作映画『ちょっと今から仕事やめてくる』でも、ブラック企業に就職してしまい、悩み抜く青年・青山を好演している。青山は、これまで工藤が演じたきたどのキャラクターよりも“困った”状況に追い込まれる役柄で、吉田鋼太郎演じる上司から厳しく追い込まれるさまは半端ない。“困った”を通り越し、目が虚ろな“悲壮感”いっぱいの表情は、みている人が「救いたい」と思ってしまうほど感情移入させる。

 ここまでの悲壮感は、これまでの工藤のイメージにはないものだったが、自身は「身体一つで、青山としてどれだけその場にいられるか」をテーマに掲げ、役に取り組んだという。そこには、しっかりと時間をかけてリハーサルを行う成島出監督の演出方法も助けとなっていたようだ。

 そして、厳しい状況である青山に多くの人が感情移入できるからこそ、福士蒼汰演じるヤマモトの“救いの手”が、物語に優しさとさわやかな風を吹き込む。一見すると、息が詰まるような苦しい展開なのだが、鑑賞後感はとてもよい。それは工藤や福士の持つ、爽快感漂うポテンシャルが効いていることは言うまでもない。

 人に好印象を与えるルックスやイメージは、俳優にとって絶対的なメリットになるかどうかということは一概には言えないが、うまく付加価値を加えていけば、大きな武器になることは間違いない。ここ最近の工藤の役柄をみていると、ややくすぶっているダメキャラを、陰にも陽にもチューニングして表現しているように感じられる。くすぶったところからの成長、そして光輝く(自身の持つポテンシャルにたどり着く)……という展開は、王道ながら多くのカタルシスが得られる。

 悲壮感たっぷりのキャラクターが、どこまで変化していくか。『ちょっと今から仕事やめてくる』でみせる工藤の表情に注目だ。

(磯部正和)