夫婦別姓って何? メリット&デメリットを弁護士が解説!

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将来結婚したら夫婦別姓にしたいと思っている女性もいるかもしれません。夫婦別姓とはどのような制度で、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。また、もし夫婦の間に子どもが生まれた場合、子どもの名字はどうなるのでしょうか。弁護士の正木裕美さんに教えていただきました。

■夫婦別姓って何?

日本で夫婦別姓を行っている人たちには、いくつかのパターンがあるようです。そもそも夫婦別姓とはどのような制度なのか、正木さんに詳しく解説してもらいました。

◇夫婦別姓とは

正木:日本では、婚姻届を提出して法律的な結婚をする場合、夫か妻のいずれかの姓を名乗らなければなりません。つまり、夫か妻のどちらかが絶対に名字を変える必要があるのです。これを「夫婦同氏の原則」と呼び、最高裁で2015年に合憲だと判断されています。しかし、現実的には女性が姓を変えるパターンが圧倒的に多く、女性の社会進出に伴い、夫婦が別の姓を名乗る「夫婦別姓」の制度を求める声が増えています。

そのため、入籍後も夫婦が共に結婚前の姓を名乗ることを認める「選択的夫婦別氏制度」(選択的夫婦別姓)を導入してはどうかと検討されてきました(民法では姓・名字のことを「氏」と言うため)。しかし、まだ法律化には至っていないため、現状、夫婦別氏を望む場合は以下のような方法を選択する必要があります。

(1)入籍せずに夫婦生活を送る(内縁・事実婚)
(2)一時的に入籍して姓を変え、子どもの手続きなどが済んだら離婚する
(3)入籍して姓を変えても、日常生活上で旧姓を使用する

この中でも特に利用している夫婦が多いのは(3)のパターンです。

◇戸籍上のルール

正木:入籍すると、姓だけでなく戸籍も一緒になります。戸籍は「姓を同じくする夫婦」と、「姓が同じ未婚の子ども」を単位として編成されるので、選択的夫婦別氏として(1)のパターンを利用している夫婦は別々の戸籍となります。(2)と(3)のパターンは、入籍している間は同じ戸籍となります。

■子どもはどうなる?

夫婦別姓には主に3つのパターンがあるとわかりましたが、夫婦の間に子どもができた場合、子どもはどちらの名字を名乗ることになるのでしょうか。

正木:入籍している場合は、子どもは夫婦の戸籍に入り、夫婦と同じ姓を名乗ります。夫婦が入籍していない場合は、妻が出生届を出すことによって自動的に母の戸籍に入り、母の姓を名乗ることになります。この場合、夫と子どもは生物学的には親子ですが、法律的には夫が認知することで初めて法的に父親と扱われます。どうしても夫の戸籍に子どもを入れたいときは、認知をした上で、家庭裁判所で子の姓を夫の姓に変える「子の氏の変更許可」を受けなければなりません。

■夫婦別姓のメリット&デメリット

夫婦別姓を選択する前に、しっかりとメリットやデメリットについて知っておきたいですよね。正木先生に詳しく解説してもらいました。

◇夫婦別姓のメリット

正木:メリットとデメリットは、夫婦別姓に対して賛成派と反対派のどちらに属するかで変わってきます。一般的に賛成派の理由としては、以下のようなものが挙げられます。

・慣れ親しんだ姓のままでいられる
・姓が変わることによるアイデンティティの喪失を防げる
・不公平感を解消できる
・行政手続きや各種手続きを簡略化できる
・姓が変わらないので個人情報やプライベートが保護される
(姓が変わらないことによって、結婚や離婚の事実が判断できないため)
・仕事への障害や影響が出ない

◇夫婦別姓のデメリット

正木:夫婦別姓に反対派の人の理由としては、以下のようなものがあります。

・子どもの姓の選択が必要になるため混乱を招く
・伝統的家族観が崩壊してしまう
・夫婦や家族の絆や一体感が希薄になる
・夫婦の証明が必要になる
・戸籍制度が利用できない
・子どもの健全な育成に影響が出る可能性がある

■まとめ

外国では夫婦別姓の選択が可能な国が増えてきていますが、日本ではまだ法令化されていないのが現状です(2017年5月時点)。夫婦別姓を希望している夫婦は、自分たちの気持ちを尊重しつつも、将来生まれてくるかもしれない子どものことも考えて、検討してみてください。

(監修:正木裕美)

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