ある日、突然巨大な宇宙船がが目の前に現れたら、あなたはどうする?逃げる?それとも近づく?
それとも何もしない?

人類と宇宙人を描いた映画は数多くあれど、今回紹介する『メッセージ』は、今までとはちょっとテイストの違う作品。なにがどう違うのか分析してみましょう!

いまだかつて無い、静かなるSF映画

まずはストーリーの紹介から。
突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズは、“彼ら”が人類に“何”を伝えようとしているのかを探っていく。
その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは。

監督: ドゥニ・ヴィルヌーヴ 脚本: エリック・ハイセラー 原作: テッド・チャン 出演: エイミー・アダムス / ジェレミー・レナー / フォレスト・ウィテカー  5月19日より全国ロードショー中 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

突然現れる巨大な宇宙船を目の前に、人類はパニックを起こして逃げ惑います。はい、ここまではよくある設定ですね。強奪や交通事故など、過去のSF映画やゾンビ映画で見てきたシーンが繰り広げられます。

そんな騒動を尻目に、主人公の言語学者のルイーズは冷静沈着。当たり前のように勤め先の大学にも出勤するし、母親の電話にも大丈夫だからと落ち着いた様子。そんな彼女に米軍は、宇宙人とのコンタクトを依頼します。

宇宙船の形が米菓の「ばかうけ」に似ている!とネットで話題になってますが、全長450メートルという巨大さは見ていて圧巻。

SF映画に欠かせないのが宇宙人の存在ですが、『E.T.』のようにフレンドリーなものもいれば、『エイリアン』のような凶暴な奴もいますよね。果たして『メッセージ』の宇宙人は良い奴なのか、悪い奴なのか。

とにもかくにも、彼らとコンタクトをとらないと何も判断できません。ということで、米軍とルイーズ、数学者のイアンは宇宙船に向かいます。

今までのSF映画の場合、宇宙船に立ち向かうのは軍の精鋭たちで、勇気を奮い立たせるような音楽が流れ、戦闘機に乗り込む……というシーンが多かったですよね。

ところがどっこい、『メッセージ』は違います。
聞こえてくるのは、緊張感を煽る旋律と、ルイーズの息づかい。宇宙船の中も至ってシンプルで、白と黒の世界。
今までの宇宙船ってLED並みにキラキラ輝いていましたが、その眩しさはこの映画にはありません。

この静けさと色の少なさがかえって、見ている側のドキドキハラハラ感を高めるんですね。静寂は映画を盛り上げるエッセンス。ど派手な宇宙映画を期待している人には、ちょっと肩すかしかもしれませんが、静寂を打ち出した『メッセージ』はSFの新たな境地を見せてくれたのではないでしょうか。

当たり前のように使っているけど、言語って、一体何だ?

ボードに「HUMAN」と書いて、自分たちが人類だと伝えるルイーズ。

さっそく、ルイーズは宇宙人になぜ地球に来たのかを訪ねるため、会話を始めます。

と、簡単に書いてますが、これって実は大変なことなんですよね。例えば、外国の人と会話をするとき、互いの言語を知らないと不便ですよね。なかなかコミュニケーションが図れませんよね。でも身振り手振りで、何となく会話ができるのは、同じ人間であって感情を理解しあえるから。

さて、相手が宇宙人だったらどうでしょう? 
何から初めていいかさっぱりわからないですよね。そこをルイーズは丁寧にひとつずつ、重要な単語を伝えて理解を求めていきます。幼稚園の先生みたいなやり方で大丈夫なのかよ!と突っ込みを入れたくなりますが、単語がわからなければ、会話すらできませんからね。当然のことですね。

水墨画のような宇宙人の文字。

そういえば、『未知との遭遇』では宇宙人との対話に使ったのは、音でしたね。あの「たらららら〜ん♪」の音色で会話をしたシーンは感動しましたが、『メッセージ』での会話はあくまでも言語。

宇宙人の言語の解読に挑むルイーズ。

劇中で「使う言語によって世界の見え方が違う」というニュアンスのセリフも出てきますが、世界中に現れた宇宙船は全部で12。その国によって宇宙人との対話のやり方が違うため、宇宙人は同じ言語を使っていても、聴き取る側によって意味のとらえ方が違ってきます。
この映画を見ていて感じるのは、宇宙人よりも人類同士のほうが、コミュニケーションが取りにくい生き物なのかも……ということ。

言語は、この映画の見所のひとつでもあります。

時間の流れについて、ちょっと考えてみたくなる

ルイーズの愛娘が作品の重要な鍵を握る。

ルイーズは娘を亡くしています。
愛娘は劇中に何度も登場するのですが、回想シーンに秘められたものこそが、この映画の大きなテーマとなります。

時間の流れは誰にも変えられませんが、過去・現在・未来という概念はどこからくるのでしょうか?そんな不思議な感覚を与えてくれるのが、『メッセージ』の魅力です。

ルイーズ(エイミー・アダムス)と、数学者イアン(ジェレミー・レナー)。

地球は自転を繰り返し、時を刻んでいますが、宇宙にいる宇宙飛行士たちの時間は、地球の時間とは流れが違います。

SF映画を見ると、時間の流れって何を基準にしているんだろう?と感じる人もいるはず。その疑問に近づきたい人は、この映画からヒントがもらえるかもしれません。

いつもよりも違う視点で言語や時間について考えてみる。そのきっかけをくれるのが『メッセージ』。

仕事や遊びを楽しむのもいいけれど、たまには答えのない問いについて思いを巡らせてみるのもよいですね。見終わったら、絶対誰かと語りたくなる!そんな映画なので、ぜひ劇場で見て下さいね。