「BIOMEGA」や「シドニアの騎士」で知られ、現在は月刊少年シリウスで「人形の国」を連載中の弐瓶勉の作品をアニメ映画化した「BLAME!(ブラム!)」が現在劇場公開中です。その映像は「コードギアス 反逆のルルーシュ」や「ID-0」で知られる谷口悟朗監督に「映像ファンなら、リアルタイムでおさえておくべき作品」と絶賛されており、ミニシアターランキング(小規模公開作品の観客動員ランキング)では公開週に第1位に輝いています。

「BLAME!(ブラム)」公式サイト

http://www.blame.jp/

「BLAME!」はこれまでに何度かショートムービーが作られています。いずれも長編アニメの制作へ向けた布石だったのですが、残念ながらそこまで至ることはできませんでした。そんな中、2014年に同じ弐瓶勉作品の「シドニアの騎士」がテレビアニメ化され、第2期「シドニアの騎士 第九惑星戦役」の第8話で劇中映画として「BLAME! 端末遺構都市」が作られました。この流れで、原作の発表から20年越しとなる2017年にとうとうアニメ映画化が達成されました。

ポスターに書かれた「映像化不可能と言われ、幾度となくその道を絶たれた伝説のSFコミック、全世界待望の劇場アニメ化!」というフレーズは、上述のような事情を受けたものです。



作品の舞台はテクノロジーが発達した未来ですが、けっして明るいものではなく、人類が「セーフガード」と呼ばれる存在から「違法居住者」として駆除・抹殺される「暗黒の未来」。もはや人類が制御できなくなった巨大機械「建設者」が無秩序に階層都市を拡張し続けている世界を、主人公の霧亥(キリイ)は独り旅しています。

劇場版の制作を担当したのは瀬下寛之監督とポリゴン・ピクチュアズという、「亜人」や「シドニアの騎士」を生みだしたタッグ。脚本は「シドニアの騎士」「シドニアの騎士 第九惑星戦役」でシリーズ構成を担当したほか「パーフェクトブルー」「千年女優」などの脚本でも知られる村井さだゆき。そして、原作者である弐瓶勉も総監修として制作最初期から作品作りに携わっており、建築物や新規キャラクターのデザインも手がけています。

劇場版のお話は原作を知らない人、SFがあまり得意ではない人のことも考えて、瀬下監督が「原作から、元々内包されている普遍的な人間ドラマを浮き彫りに」とパンフレットで語ったように、霧亥が旅の中で立ち寄ることになった電基漁師の村での1エピソードを描くものとなっています。

以下、場面写真と共にストーリーを少しだけ追いかけていきます。映画を見るつもりがあって、ストーリーを事前に知りたくないという人はここから下は映画を見た後に「こんなカット、確かにあった」と確認しながら読んでください。

少女「づる」をリーダーとして巨大通路を進む電基漁師の子どもたち。



ヘルメット内部には様々な情報が表示されています。



階層と階層の隙間のような広大なスペース。



そんな彼らに、駆除系セーフガードが襲いかかります。



この窮地を救ってくれたのが霧亥でした。霧亥が構える「重力子放射線射出装置」は……



電基漁師の使う武器とは比べものにならない、圧倒的な力で駆除系セーフガードをまとめて排除。



「ネット端末遺伝子」を持つ人間を求めてはるか下の階層から旅をしてきたという霧亥を、づるたちは村へ迎えることに。



村には「ネット端末遺伝子」を持つ人間はいないものの、電基漁師の頭領「おやっさん」から単語に聞き覚えがあるという情報を得て、「誰も行ってはならない」と伝えられてきた、村の下の「くされ祠」へ。

警戒するおやっさんたち。



一方、不気味な立体映像が表示されますが意に介さない霧亥。



がれきの下から「シボ」と名乗る科学者を見つけ出します。



シボから、「自動工場」に行けば求める「ネット端末遺伝子」を擬似的に再現するための手段があると聞き、自動工場へ向かうことを決める霧亥。折しも、電基漁師たちの村は食糧難に襲われており、自動工場なら食料もなんとかなるということで、おやっさんたちも霧亥に同行することに。



探索の果てに、自動工場へたどり着いた一行。



しかし、彼らの目的を妨害するかのように駆除系セーフガードが立ちはだかってきます。



セーフガードの中で上位の存在であり、高い戦闘能力を持つ「サナカン」も出てくる中で、霧亥やシボは、その目的を果たすことができるのか。



公開されている予告編でも、その世界の広がりと、過酷な戦いの一端が感じられるはずです。第1弾には霧亥がづる達を助けるシーンや駆除系セーフガードが群がってくるシーンが含まれています。

劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告 BLAME! The Movie Trailer - YouTube

第2弾では霧亥と電基漁師たちとの交流、さらにシボやサナカンが登場。

劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告 BLAME! The Movie Trailer - YouTube

ちなみに、冒頭に挙げた谷口悟朗監督のほかにも数多くのコメントが寄せられています。以下に一部のコメントを抜粋しましたが、ここで触れられているように、シボやサナカンがとても魅力的なのも特徴です。

映画監督・メカニックデザイナー 荒牧伸志さん:

エッジで難解な「BLAME!」がこんなにエンターテインメントな映画になるとは!

オリジナルのコミックスの空気、手触りもしっかりと漂っている。

シボ、素敵すぎる。

作家 冲方丁さん:

3DCGアニメの進化を感じる。この映画によって生まれた新たな弐瓶ポリゴン路線は今後の可能性に満ちていて、どこまで行くか想像がつかない。

CGの最大の特徴はデータの蓄積だ。成長する怪物を見ている気分になる。

作家 小川一水さん:

宇宙戦艦主砲級のとんでもないピストルを身に着けた主人公・霧亥の、どっしりした立ち居振る舞いもさることながら、一般人間である電基漁師たちの、生き抜く苦闘に惹きつけられる映画だった。

いやそれよりもシボさんの!スレンダートール金属レディ、シボ姉の鉄のかかとが鉄の地を打つ、コトンコトンという足音が耳に響いたなあ。

アニメーション監督 新海誠さん:

105分間、巨大な都市をさまよい続けてとても息苦しくて(良い意味で!)、

劇場を出た後は解放感がものすごかったです笑。

素晴らしい劇場体験をさせていただき、大いに刺激を受けました。

脚本家 瀬古浩司さん:

クールだけど泥臭く、シリアスだけど滑稽、フィロソフィックだけど俗っぽい、そして最後に胸が熱くなる

上映中、銀幕に映し出された霧亥のカッコよさに痺れ、シボの可愛らしさににこにこしながら、

ずっとこう思っていました。『そうそう、映画ってこうじゃなくっちゃ』と

アニメ―ション監督 谷口悟朗さん:

閉塞感があるアニメ界。そこに対する突破口の一つが今回の作品なのだと感じた。手法はセルルックCGである。セルルックというものは三次元的かつ二次元的空間を生み出す。しかし、大事なことは技術そのものではなく、それで何をやるのか、という話にかわりはない。今回の弐瓶さんの挑戦、瀬下監督の挑戦、プロデューサーの挑戦。そして、各スタッフの挑戦。それらが時代に対する叫びとして面白く、興味深い。

今、日本のアニメは次のステージに入ろうとしている。CGだから……ということではない。それは、あくまで手段の一つにすぎない。抽象化や記号化を通して表現する、ということに手描きもCGもない。大事なことは、今の時代に『BLAME!』が作られ公開される意味なんだろう。作品は時代とともにある、という側面は無視できない。映像ファンなら、リアルタイムでおさえておくべき作品の一つである。

作家 野まどさん:

その恐ろしい名でイメ検すれば恐怖画像がディスプレイいっぱいに並ぶ戦慄の上位セーフガード・サナカンが、

劇場版を基底現実に構築する際に用いられた多数の構成素材の高度な反応によって

なんか凄い美少女として転送された事実を是非劇場でご確認ください。

映画「BLAME!」の公開は2週間限定で、2017年5月20日(土)上映開始の劇場では6月2日(金)終了。一部の映画館では音響にこだわった「東亜重音」の7.1ch上映や爆音上映が行われています。また、6月3日以降に上映が始まる映画館もあります。もともとは霧亥がお気に入りだったという原作者の弐瓶さんが、映画を見てからはシボになったというその魅力がどれほどのものなのか、ぜひ劇場で実際に確認してみて下さい。

イオンシネマ幕張新都心だと弐瓶さん、瀬下監督らのサイン入りポスターが掲出されています。



©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局