米ホワイトハウス前で、昨年の大統領選期間中のトランプ陣営とロシアの関係について独立調査を求める抗議デモの参加者が掲げた「トランプは嘘つき」と書かれたプラカード(2017年5月10日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】5月中旬、米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が司法妨害を行ったとして非難される重大な事態が起き、米政界は大きな政治的混乱に見舞われた。

 ホワイトハウス(White House)はダメージ・コントロールに奔走し、批評家らは勢い立ち、野党・民主党の一部は第45代大統領の「弾劾」の可能性をちらつかせ始めた。とはいえ、弾劾手続きの開始はまだ仮想段階だ。

 トランプ大統領に向けられている疑いは、米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー(James Comey)前長官に対し、昨年の米大統領選期間中のトランプ陣営とロシアとの通謀疑惑に関する自らの側近の捜査を中止するよう要求し、後にコミー氏を解任したという司法妨害だ。

 これまでに弾劾によってその座を追われた米国の大統領はいない。過去に2人の大統領が下院で弾劾されたが、上院で無罪放免となった。1868年のアンドリュー・ジョンソン(Andrew Johnson)元大統領と、1998年のビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領だ。リチャード・ニクソン(Richard Nixon)元大統領はウォーターゲート(Watergate)事件での弾劾を回避し、1974年に辞任した。

 米国の現職大統領を権力の座から追放する手段として滅多に用いられることのない弾劾は、以下の手続きで行われる。

■弾劾の手続き

 弾劾の手続きは2段階からなる。合衆国憲法が規定する「反逆罪、収賄罪、他の重大な罪または軽罪」に値する罪を大統領が犯したと議員らが考えるとき、弾劾を発議できる。

 最初の投票は下院で行われ、単純過半数が必要とされる。下院で弾劾が支持された場合、上院での弾劾審議に移り、定員100人の3分の2以上の多数の賛成で弾劾が決定される。この段階まで達した場合、大統領は罷免され、上訴の手段はない。上院の投票で有罪を免れれば、大統領は無罪となり職に留まる。

 現在、弾劾手続きは開始されていないし、開始されないかもしれない。

 民主党幹部らは、弾劾を求めるにはまだ時期尚早で、まず根拠となる事実関係を立証しなければならないと述べている。下院情報特別委員会の民主党筆頭理事、アダム・シフ(Adam Schiff)議員は「選挙を他の方法で無効にするための試みだと捉えてはならない」と語った。

 何人かの議員からは、司法妨害は弾劾に値する犯罪だという指摘が上がっている。ニクソン大統領はウォーターゲート事件で失墜し、クリントン大統領は下院での弾劾にまで至った。

 司法妨害があったことを示唆する最新の疑惑は、トランプ氏が2月にコミーFBI前長官に対し、マイケル・フリン(Michael Flynn)前大統領補佐官(国家安全保障担当)に対する捜査から手を引くよう要求したという報道だ。コミー氏は、トランプ氏がこれを要求したとされる面会時にメモを取っていたとされている。

 共和党内部でこれまでトランプ氏に批判的な姿勢を示してきたジャスティン・アマッシュ(Justin Amash)下院議員は、コミー氏のメモが本物だとすれば弾劾の根拠となるだろうと同意した。同氏は初めて弾劾の可能性について公に語った共和党議員だ。「だが、わが国では、誰もが公平な審判を受ける」と同氏は述べている。

 下院の議員らは、コミー氏が公聴会での証言で彼から見た一連の出来事について語るのを今や遅しと待っている。
【翻訳編集】AFPBB News