「やすらぎの郷」妖刀村正と遺言トーク「日本ってどうしてそんなになんでも複雑なの?」

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帯ドラマ劇場「やすらぎの郷」(テレビ朝日 月〜金 ひる12時30分  再放送BS 朝日 朝7時40分〜)
第6週 39回 5月25日(木)放送より。 
脚本:倉本聰 演出:阿部雄一


秀さん問題、一件落着


お見事!
電気系統の故障と秀さん失踪の勘違いは「あまりに突飛で説得性に欠け」という話を、じつに美しくまとめあげてしまった。
事件と、天井から出てきた大村柳次郎の遺言と遺品の名刀(妖刀)村正とを巧妙につなげたのだ。

納得いかないとぶつくさ言う、お嬢(浅丘ルリ子)と冴子(加賀まりこ)に、姫(八千草薫)がいけしゃあしゃあと説得する。
秀さんが、女たちの押しかけ介護(高齢化社会では「押しかけ女房」ではなく「押しかけ介護」という概念が生まれそうだ)から逃げて、天井に隠れたことにしたら、探しに来たスタッフが気づかないことも辻褄が合った。
みんなの知らない屋根裏にはたくさん電線があって、秀さんはそれに触って感電してしまった。
死ななかったのは「そこは秀さんの不死身なところでしょう」と言うことで、秀さんがギックリ腰で動けなかったという不名誉な話も公にしないで済み、かつ、秀さん伝説をさらにアップデートした。
こうして、誰も傷つけずに事態は解決したのだ。
これぞ、ウェルメイド・ドラマ(三谷幸喜や古沢良太の作風で知られる、伏線を張り巡らせて最後にきれいにまとめる構成の作品)!
この手のものはノンストップで1時間や2時間で見せるものに向いていると思い込んでいたが、15分という短い時間で区切ることで、最後まで作家の意図にも気づかせずに、話がどこに転がるかわからないように見えるとは、なんて巧妙なのか。

「Ωの法則ってご存知?
それじゃあフレミングの法則は?」
「お嬢、誰にむかってあなた聞いてるの。そんなことわたしが知ってるわけないでしょう」

こういう台詞を、無邪気に語る八千草薫。どうしてこんなに憎めないのか。

ミステリーの次は、シニア大好き、戦国時代の歴史の話


天井から出てきた、妖刀村正の解説が丁寧にされる。
関ヶ原の戦い、大阪夏の陣にも関わりがあった村正。
たくさんの血を吸ってきた刀が、現代でも妖刀の力を発揮してしまったのか・・・。

とまあ、戦国、刀剣と流行りのワードをつなぎに使って、話は、遺産相続の問題へ。

将棋をさしながら繰り広げられる、菊村(石坂浩二)、大納言(山本圭)、マロ(ミッキー・カーチス)の遺言トークが皮肉も効いていて愉快だ。

「そんな難しいこと誰に習ったの?」
「大学で教わるの?」
「大学出てない人はどうするの?」
「日本国民としての義務なの?」
「日本ってどうしてそんなになんでも複雑なの?」

マロの台詞は一般市民の叫びである。

マロには、ひとり、外にこさえた娘がいる。でも認知はしてないらしい。
簡単に書いた遺言書には、娘に譲るとしたが、それが正式に認められるためには、公証人が必要だ。
正式に認められないと、財産は、法的に相続権が認められているきょうだいのものになってしまう。
きょうだいとは何かあるらしく、「あいつらに一銭もやらねえよ」とマロ。
でも、オチは、マロの財産がどれくらいあるかということで・・・・

「知っておくべき社会通念が欠け落ちていることに私は気づいた」という菊村のモノローグも、視聴者の代弁だ。
それにしても、なんでそんなに大納言は、相続について詳しいのか。
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