PFCペロエのMF加藤恒平【写真:Getty Images】

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絶好調レイソルを支える守護神

 6月7日の親善試合シリア戦、そして6月13日のW杯アジア最終予選イラク戦に向けた日本代表メンバーが発表された。25人のリストはこれまでのものからかなりの変化が見られ、4人の選手が初召集となっている。2年ぶり代表復帰の選手も含め、彼ら「新戦力」はハリルジャパンに何をもたらすのだろうか。(文:河治良幸)

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GK:中村航輔(柏レイソル)

 ハリルホジッチ監督は「若い選手を合宿に呼ぶ。ここ最近、素晴らしいクオリティーを見せてくれている。柏は2位につけているが、彼のプレーによるところも大きい」と招集理由を説明した。柏は12試合を終えた時点で2位につけるが、11という失点数以上に存在感が極まっており、チームを救うセーブも多い。

 リオ五輪のメンバーでもあった中村は昨年10月に行われたGK合宿に呼ばれ、その時はルグシッチGKコーチに基本的な動きから指導を受けた。特にDFラインの裏に抜け出す相手に対し、前にチャレンジして行くように指導されていた。「彼はまだ若く、伸びしろが大きいので」とGKコーチは語っており、今季の中村のパフォーマンスは当時からのさらなる成長を物語っている。

 そのGK合宿において「現代フットボールはまず190cmないといいキーパーとは言えない。強豪クラブも強豪国もそうなっています」とハリルホジッチ監督は語っていたが、現状の日本サッカーはそのサイズの選手自体が少ない。

 中村は体格の不利を補ってあまりある機動力とステップワークの正確性があり、バックパスを左右の足で受け、ただ蹴るだけでなく味方に通すキックも蹴れる。中村の成長と同時に、指揮官が西川周作と林彰洋について「彼らのパフォーマンスには満足していない」という評価であり、それならば若く成長力のある中村を優先したということもあるだろう。

今季からガンバでプレー。万能型のDF

DF:三浦弦太(ガンバ大阪)

 スピードと空中戦の強さを併せ持ち、指揮官がイラク戦のコンセプトにあげる“ボールを奪う”という能力に優れている。ラインを強気に高く上げ、そこからクサビの受け手などに鋭くチェックできる選手だ。

 昨年は清水エスパルスのJ1昇格に大きく貢献したが、移籍したガンバ大阪でさらに成長を見せ、持ち味を発揮している。守備的なSBも可能で、特に相手のサイドアタッカーをマンマーク気味に封じる能力が高い。

「森重(真人)もずっとA代表で先発を張っていた、丸山(祐市)もいたが、ちょっと私は満足できなかった。ここ2ヶ月、この若い選手(三浦)が特にフィジカル面でいいプレーを見せている。デュエルの空中戦、地上戦も強いし、後ろからの組み立ても賢さを見せる。この若い選手を信頼したい。少し植田(直通)を抜いているかなと思う。植田は怪我もあるので」

 今季における三浦のJリーグのパフォーマンスは存在感と安定感があり、十分に招集に値するものだが、実際に試合で使えるかどうかは合宿で判断されるだろう。

 現時点でシリア戦とイラク戦における吉田麻也の相棒は昌子源か槙野智章の競争と見られるが、世代別の代表など、あらゆる所属チームでムードメーカーの役割を果たしてきたキャラクターはハリル好みで、欧州組が過半数のA代表でもオフザピッチではすんなり入れるはず。あとは連携を含むプレーの適応とアピール次第だ。

28歳での初選出。豊富な運動量が武器のサイドプレーヤー

DF:宇賀神友弥(浦和レッズ)

 28歳で初選出というのは浦和レッズのレギュラーに定着してきた実績からすると意外だが、「長い間ずっと追跡していた選手(宇賀神)だ。彼の監督(ミハイロ・ペトロヴィッチ)とも話をした」とハリルホジッチ監督は語る。実際に予選の予備登録メンバーにも常に入っており、良いパフォーマンスを続けている時期に招集することは想定されていたはずだ。

 豊富な運動量を武器とする宇賀神。浦和では[3-4-2-1]の左ウィングバックだが、もともとは左SBでプレーしている。所属チームでは逆サイドの選手が攻撃的なことが多く、3バックの槙野なども果敢に攻め上がるため、求められる上下動と守備のタスクはむしろ普通のSB以上だ。しかも、今季の浦和は高い位置からプレスをかける意識をチームとして強めており、代表監督の要求に合致する部分もある。

 左足のクロスはスペシャルではないが十分にアシストを狙えるレベルで、ここ最近はゴール前に走り込んでのシュートも目立つ。パフォーマンスには波があったが、ここのところは高い水準で安定しており、公式戦の前に親善試合を挟む今回は1つの好機だ。

 ただ、これまで何人かの選手がテストされて、なかなか指揮官の満足するレベルに達していないことで回ってきたチャンスでもある。ここから定着していくには、かなりの覚悟をもってアピールしていく必要があるだろう。

最大のサプライズ。ブルガリアからの秘密兵器

MF:加藤恒平(PFCペロエ/ブルガリア)

「皆さんあまり知らないであろう加藤という選手を呼ぶ。ほぼ1年かけて追跡している。ブルガリアのベロエというところでやった試合を4試合ほど現地で見ている。ビデオでも何試合か見ている。もう一度言うが、4回ほど現地に行って、ダイレクトに見ている」

 ハリルホジッチ監督がこう語った通り大きなサプライズであり、“5人の新戦力”を招集した今回の選考でもエポックメーキングとも言うべきものだ。実際に多くのスポーツ番組で驚きを持って報じられており、彼のここまでのキャリアやエピソードを今回はじめて知ったファンは多いだろう。

「よい選手、資格のある選手がいれば誰だって呼べるということだ」と強調する指揮官としてはある意味で全ての選手に対するメッセージも加藤の選出に込められているかもしれないが、もちろん戦力としての期待もある。

 中盤でボールを奪う能力に関してはイラク戦で特に求められるもので、その役割を担う今野泰幸が怪我から回復途上にあるため、主に守備的なタスクを担えるボランチを多めに選んだ事情もある。

 ハリルホジッチ監督は加藤の非凡なパスセンスにも言及しており、前目のポジションでのプレーにも可能性を見出している様だ。おそらくトップ下というよりは4?3?3を採用した場合のインサイドハーフで、ボールを奪ったところからの展開、あるいは前にボールを運んでチャンスの起点になるプレーなどがメインになる。

 ただ、今回は親善試合のシリア戦があり、欧州組の合宿からスタートするため多くの練習時間を取れる。そこで彼の資質を見極め、今後の招集や起用法を見極める機会になりそうだ。

バルサから2ゴール。リーガで奮闘するアタッカー

FW:乾貴士(エイバル/スペイン)

 A代表では2015年3月のウズベキスタン戦から2年2ヶ月ぶり、実質的な新戦力と言える。今季はスペインのエイバルで多くの試合に出場しており、持ち前のドリブルや飛び出しに加えて、献身的なディフェンスも目を引く。得点に関してはコンスタントではなかったものの、最終節にカンプノウで2得点を決めるなどはまった時の決定力は特筆に値する。

「宇佐美(貴史)との競争だったが、ここ最近素晴らしいパフォーマンスを見せてくれているのでロジカルだと思う。バルセロナ戦の得点も素晴らしかった。ただ少し良くない時期もあった」

 乾の能力については今さら言うまでもないが、彼に求められるのは、クラブ以上に得点やアシストなどゴールに直結するプレーでチームを勝利に導くこと。周囲とのコンビネーションはもちろん重要だが、チャンスに攻め切る能力をしっかりと発揮できれば、左サイドの主力を担う原口元気とも十分に勝負できる。パワーは原口より劣るものの、乾には抜群のボールコントロールと1対1で抜き切る能力がある。

 イラク戦のピッチはかなり劣悪になると予想されるが、スペインでも良好とは言えないピッチ状態で能力を発揮しており、持ち前のテクニックにタフさを加えた乾を指揮官にアピールして、チームに新たなオプションと刺激を与える存在になりうる。

(文:河治良幸)

text by 河治良幸