対象となった各住環境(左から伝統的開発地、郊外開発地、密閉型、クラスター型、画像は当該論文より)

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住んでいる地域の環境が、住民の健康状態や身体活動量に大きく影響している――米アリゾナ大学の研究者らの調査で改めてわかった。

研究には建築家や公共政策の専門家も参加。米国でよく見られる居住環境を4タイプに分類した。
(1)商業施設と宅地が混在した米国の一般的な町「伝統的開発地」
(2)都市部から離れた地域に作られた宅地「郊外開発地」
(3)犯罪などから住環境を守るため宅地全体を壁で覆った「密閉型」
(4)広場のようなエリアを中心に複数の家が集まった「クラスター型」
とした。

そのうえで、アリゾナ州内でこの分類に当てはまる環境に住んでいる健康な成人486人を無作為に抽出し、アンケート調査や聞き取り調査で現在の歩行能力や日常的な身体活動量、精神的健康状態、疾患の有無を調査。居住環境との関係を分析している。

その結果、伝統的開発地の居住者は歩行能力が他の環境に比べて有意に高く、身体活動量も多い傾向にあった。郊外開発地の居住者は精神的健康状態が最も良好で、福祉などを含めた近隣環境に満足している人も多くなっている。

富裕層などが多く、犯罪などからも隔離され安全な環境であるはずの密閉型の居住者は「安全である」と感じておらず、住人同士のコミュニケーションも乏しく、自身の健康状態に対する不満も多かった。その反対にクラスター型の居住者は住人同士のコミュニケーションが最も活発で、「自分たちは安全な環境にいる」と感じ、身体活動量や歩行能力も伝統的開発地に次いで高い傾向にあったという。

研究者らは幸福感や身体活動量、健康状態に各環境で共通して影響を与える要素として緑地、特に樹木の数が重要であるとし「健康的な都市設計を考えるうえで、歩行や身体活動を促すような導線と共に植生を考慮することも必要」とコメントしている。

発表は2017年3月13日、環境健康科学・公衆衛生分野の専門誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」オンライン版に掲載された。

参考文献
Neighborhood Design, Physical Activity, and Wellbeing: Applying the Walkability Model.
DOI: 10.3390/ijerph14010076 PMID: 28098785

医師・専門家が監修「Aging Style」