携帯電話を使用する北朝鮮の人々(資料写真)

北朝鮮の人民保安省(警察)と国家保衛省(秘密警察)は最近、中国製のスマートフォンを使った違法通話の大々的な取り締まりに乗り出した。ところが、あまりにも通話量が多く取り締まりが追いつかない状況だという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、保安省と保衛省は国内で出回る中国製のスマホの取り締まりを進めている。その理由は、国際電話をかけることができるからだ。

LINEで突破も

北朝鮮製のスマホは、国内通話しかできない仕組みとなっている。そのため、国外に電話をかけるには、中国キャリアのSIMカードを入れた中国製のスマホを別に用意する必要があった。

ところが、最近出回っている中国製のスマホは、SIMカードさえ入れ替えれば国内だけでなく海外との通話も可能だ。情報筋は詳細を語っていないが、どのSIMカードでも使用可能なSIMロックフリーのスマホが北朝鮮国内に出回り始めたものと思われる。また、SIMロックを外す業者の存在も考えられる。

ただし、北朝鮮で海外キャリアのスマホを使っての国際ローミングはできないため、通話ができるのは、中国の基地局の電波が届く地域に限られることは、今までと変わりない。

このような人々を北朝鮮では「チョナジェンイ」と呼ぶ。「チョナ」は日本語で「電話」を意味する。「ジェンイ」は様々に翻訳可能だが、この場合は「〜屋」といった意味である。

チョナジェンイは、本来は携帯電話のレンタル業と送金ブローカーを兼ねた人を指す言葉だったが、スマホを持つ人が増えた今では、韓国や中国と通話する人そのものを指すようになった。

当局は、国際通話の量があまりにも多すぎて、すべてを監視できなくなっている。

別の情報筋によると、当局の電波探知器の有効範囲の外での韓国との通話量が増加していることを受けて、保安署(警察署)は警戒拠点を設置し、取り締まりに乗り出した。しかし、チョナジェンイの多くが、保安署や保衛部にコネを持っているため、実際に摘発されることはあまりないという。

また、中国製のスマホに、カカオトークやLINEなどのメッセンジャーアプリをインストールすれば、電波探知器にひっかることなく通話やチャットができるようになっている。

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3000元(約4万9000円)もする中国製のスマホは、北朝鮮国内ではかなりの高級品だが、多少高価でも、韓国にいる家族に連絡して送金してもらえば、すぐにもとが取れる。また、スマホを韓国から送ってもらう人もいる。中国キャリアのSIMカードは人気が高く、品薄状態だという。

当局が取り締まりを進める背景には、スマホを経由した海外情報の国内への流入、国内情報の海外への流出以外にも、テロ事件への不安感があるようだ。

情報筋によると、当局は、金日成主席、金正日総書記の銅像の周辺で携帯電話の使用を一切禁じるという通告を発した。銅像が爆破されることを警戒してのものだ。

万が一銅像が爆破される事件が発生した場合、銅像のそばで携帯電話を使っていれば、たとえ無関係であっても容疑者と見なされる可能性が高い。そのため当局は住民らに対し、銅像から300メートル以内のエリアではくれぐれも携帯電話を使用しないように念押ししているという。