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●相続と贈与の違いって?

相続や贈与と聞くと、「自分には関係ない話だ」と思ってしまう人が多いようです。最近では、相続税が増税することでより多くの人が相続税の対象になり、また相続や贈与の制度が新しくなって注目を集めているのです。何も知らないままでいると、いざ自分事になったときに、慌ててしまうかもしれません。そこで今回は、贈与税対策として活用できる制度についてまとめてみました。

○贈与って何?

そもそも、贈与とはどのようなことを指すのでしょうか。「相続」とセットで使われることの多い贈与ですが、両者の違いは何でしょうか。相続と贈与はどちらも、自分の財産を別の人に無償であげることを指します。ただし、相続の場合、被相続人(あげる人)が亡くなることにより、相続人(もらう人)へ自動的に財産が移ります。ここでは、被相続人や相続人の意思に関係なく相続が発生するため、相続人が相続をしたくない場合は、相続放棄をする必要があります。

贈与とは、基本的に贈与者(あげる人)が生きているうちに、受贈者(もらう人)へ財産をあげる意思表示をします。受贈者も財産をもらう意思を示すと、贈与が成立となります。贈与で財産をもらった人は、その金額が基礎控除額110万円を超えた場合、翌年の2月1日から3月15日までに申告して贈与税を支払う義務が生じます。ただし、特定の制度を活用することで、贈与税を節税することができます。

○暦年贈与と相続時精算課税制度とは?

暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの間に贈与された金額を算出する課税方法です。年間で基礎控除110万円以下であれば非課税、超えていれば課税されることになります。毎年110万円以下であれば贈与税はかからないため、正しい方法で贈与を行えば、大きなメリットを受けることができます。

ただし、暦年贈与には注意も必要です。例えば、はじめから大きな金額を分割して贈与すると決めている場合です。仮に1,000万円を年間100万円ずつ、10年かけて贈与すると、「定期贈与」とみなされ、贈与税がかかります。定期贈与としないためには、毎年贈与の金額を決める「連年贈与」にすることが大切です。

なお、贈与税には、暦年贈与の他にもう一つ課税方法があり、これを「相続時精算課税制度」と言います。相続時精算課税制度は、一定の直系親族間に認められた贈与方法です。2,500万円までは贈与税を課税せず、2,500万円を超える部分に20%の贈与税がかかります。相続時精算課税制度を選択した場合は、贈与時に贈与税を支払います。そして、相続時には、贈与財産を足して相続税を計算し、この相続税と既に支払っている贈与税の差額分を納めます。

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●住宅費・教育費の贈与は?

○住宅取得等資金の贈与

贈与に関しては、「住宅取得等資金贈与の特例」という制度もあります。これは、父母や祖父母など直系尊属からの贈与によって居住用の住宅を取得した場合、一定の要件を満たすときは、決められた限度額まで贈与税が非課税になるという制度です。この特例を受けるためには、下記の要件を満たす必要があります。

・贈与を受けたときに贈与者の直系卑属であること

・贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること

・贈与を受けた年の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること

・贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅を取得し居住すること(あるいは、居住することが確実と見込まれること)

いくらまでの贈与なら非課税になるのかは、贈与によって取得する住宅が省エネ・免震性など一定の基準を満たすかどうかや、何%の消費税が適用されるかによって変わります。

契約日(住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日)が平成27年12月31日までの場合、非課税枠の限度額は1,500万円ですが、平成28年1月から平成31年3月までは、消費税増税前の駆け込み需要が予想されるため1,200万円に引き下げられます。平成31年4月から平成32年3月までは、限度額は3,000万円まで引き上げられます。

ちなみに、10%への消費税増税は平成31年10月に予定されていますが、限度額3,000万円が適用されるのは平成31年4月以降となっています。これは、住宅引き渡しが平成31年10月以降であっても、契約日が平成31年3月31日以前であれば、消費税8%で住宅を取得できることを指しています。

○教育資金の一括贈与制度

子や孫へ教育費を贈与する場合、1,500万円までなら非課税となる「教育資金の一括贈与制度」。主に孫への贈与として、人気の制度です。これは、贈与された子や孫は、30歳になるまでに教育費として使いきれば、贈与税がかからない仕組みです。暦年贈与の場合、贈与者が高齢になるなどして毎年贈与し続けていくことに限界を感じる人もいますが、この方法で教育資金として一括贈与すれば、元気なうちに贈与することができます。

ただし、教育資金として使用した領収書を保管し、金融機関に提出する手間や、教育資金に該当するものと、該当しないものをあらかじめ把握しておく必要などがあります。また、一括贈与したものの、教育費として使いきれず贈与税がかかってしまいそうなケースもあるため、都度贈与することとどちらがベターか比較検討することをおすすめします。

同じ金額を贈与してもらう場合でも、制度をどのように活用するかによって、税金がかかるのか非課税にできるのか、大きく変わることがあります。多くの場合、贈与とは大切な人に財産を渡す行為のはず。賢く節税して贈与ができるよう、正しく仕組みを理解しておきたいものですね。

筆者プロフィール:武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。