「働きがいのある会社日本一」の企業の秘策

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世界約50カ国、従業員1000人以上の7000社を対象にしたGPTW(Great Place to Work Institute)の「働きがいのある会社ランキング」で2017年に第1位、10年連続ベストカンパニーを受賞している企業がある。

ワークスアプリケーションズ(WAP)だ。96年に創業し、人工知能を搭載した大手企業向けERPパッケージソフト「HUE」(ヒュー)で知られ、アメリカ、中国、インド、シンガポールにも事業を拡大している。

創業者である牧野正幸CEOに1位の秘訣を尋ねると、答えは入り口にあった。

「採用の際に、『うちにはこういうタイプの人が向いています』と明確に伝えているからです。担当者には大前提として『嘘をつくな。ごまかすな』と言っています」

嘘とは何か?

「日本の企業の大半は、リクルーティングのときにリップサービスをします。こんな事業もあんな事業もやってます、と。しかし、入社してみると、やりたいと思っていた仕事は全体の1割で、関心のない部署に配属されることが多い。不満だけど、ブランド力がある大企業だから退職はしたくない。逆に言えば、ブランドの有無ではなく、自分にとってベストな環境があるということが働きがいの評価になっているのではないでしょうか」

社風に合わない人は入社しないため、会社と社員のミスマッチが起きないわけだ。

WAPは、「成長志向の強い人材しか向きません」と強調している。同社で行われていたインターンシップを覗くと、まさに成長志向の登竜門といっていい。



現在、海外も合わせて年間8万人がWAPのインターンシップに応募する。その中から2000〜3000人が選抜される。報奨金や住居が用意されて、20日間のプログラムを受けるのだが、参加していた東京理科大学の大学院生に話を聞くと、「レベルが高く、課題は難しいです。でも、優秀な人たちと出会えるし、この会社に入社しなくても、自分の思考力を高めるという点に関して、一度参加する価値はあります」と言う。「入社パス」を取得できれば、卒業後3年間はいつでも入社ができる。

WAPでは成長を高めるために複数の制度を用いている。なかでも社員のパフォーマンスを向上させたものとして、牧野は「フレックス」制度を挙げる。完全に自己管理型の働き方だ。

「デメリットは、パフォーマンスを強制できないこと。さぼる人はさぼる。そこは仕方がないのでコストとして吸収しています。ただ、全社集会では、『成長する気がなければ、この会社にいる意味はあまりないと思うよ』とは言っています」

著しく成長する若手社員向けには「ライト・パス制度」がある。成長と昇進スピードを合わせるものだ。高い可能性を秘めた若手を早い段階で発掘することができる。また、一度退社した人が復職できる「カムバック・パス制度」がある。

こうした制度が機能しているのは、文化を隅々まで浸透させる「多面評価制度」があるからだろう。上司だけでなく、他部署を含む同僚が人事評価をする制度だ。給与の”見える化”を実践しているGMOインターネットの「360度評価」に似ているが、人事評価がなぜ企業カルチャーをつくることになるのか。

創業2年目に社員数が増えたため、経営陣だけで評価できなくなったことをきっかけに導入したが、牧野はこう話す。

「人間の評価はどうしても主観的になります。多面評価を使うと、各々の主観が一斉に混じりますが、その主観に対してもっとも影響を与えられるのが、会社の文化です。制度がうまくいかなければ、文化が浸透していない証拠。最初のうちは評価に対して、『これは真実だろうか』と、答え合わせをしていました。文化の浸透度合いを測りながら、ある時期から答え合わせをする必要がなくなりました」

この制度なら、自分の能力を人に伝えることが求められ、コミュニケーション能力を磨くことにもつながる。牧野は、「デメリットは上司の影響力が低下し、コントロールしにくくなる点」と言う。この制度は、ヒエラルキーが強く、上司が絶大な組織には適さないのだ。

こうした社員の才能や可能性を引き出す企業文化があるか。ここに成長企業と成熟企業の差を見た思いがした。

ワークスアプリケーションズの働き方

1. 採用の際に大風呂敷を広げないことで、ミスマッチを防ぐ
2. 仕事は自己管理型フレックスで、自律性を求める
3. 多面評価制度によって、企業文化の浸透を図る