いよいよ”競馬の祭典”がやってきた。週末に行なわれるGI日本ダービー(5月28日/東京・芝2400m)は、ホースマンにとっても、ファンにとっても特別なレースとなる。

 ただ、馬券を買うファンの間では”難解”というムードが漂っている。今年の3歳牡馬戦線は「主役不在」と言われており、GI皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)では牝馬のファンディーナが1番人気に推され、結果は9番人気のアルアインが優勝するという波乱となった。

 加えて、トライアルから強力な”新星”が現れた。GII青葉賞(4月29日/東京・芝2400m)を3連勝で制したアドミラブルだ。皐月賞2着のペルシアンナイトの主戦だったミルコ・デムーロ騎手が、ダービーではこちらを選択したことからも、相当な能力の持ち主であることは確かだろう。もしかすると、1番人気に支持されるかもしれない。

 しかしながら、アドミラブルに皐月賞組との対戦はなく、能力比較が難しいところ。この馬の扱いをどうするのか、それだけでも人によって意見が分かれそうだ。

 いずれにせよ、混迷のダービーであることは間違いない。そういった様相だからこそ、皐月賞同様、再び”荒れる”結末も十分に考えられる。思い切って、穴馬券を狙ってみてもいいのではないだろうか。

 では、波乱の立役者として狙える馬はいるのか。過去のダービーの傾向を踏まえて、穴をあけそうな伏兵馬を探してみたい。

 過去10年の結果を見てみると、基本的には「皐月賞組」が強い。そこから、穴馬券を狙ううえでは、ふたつのパターンが考えられる。

 ひとつ目は、皐月賞で人気になりながら凡走し、人気を落としたダービーで巻き返すパターン。皐月賞はテクニカルな中山競馬場が舞台とあって、若駒の場合、ちょっとしたことでまったく力を出せないケースがある。しかし、そこで得ていた評価は間違っておらず、ダービーできちんと本領を発揮する馬が多くいる。

 例えば、2015年の3着馬サトノクラウン。同馬は、皐月賞では1番人気に推されながら6着に敗れたが、ダービーでしっかりと巻き返した。また、2009年に1、2着となったロジユニヴァースとリーチザクラウン。皐月賞では前者が1番人気、後者が2番人気だったものの、それぞれ14着、13着と大敗を喫した。しかし、ダービーの舞台で名誉挽回を果たした。

 より大きな穴馬券をもたらしたのは、2011年に8番人気で3着と健闘したベルシャザールだ。皐月賞では3番人気の評価を得ながら、11着と大敗。そのため、ダービーでの評価は急落したが、やはり力上位の存在だった。レースは1番人気のオルフェーヴルが勝利したものの、2着にも10番人気のウインバリアシオンが入って、3連単は10万円を超える高配当となった。

 そして今回、同様のパターンで面白そうなのは、カデナである。



ダービーでの巻き返しが期待されるカデナ 昨年のGIII京都2歳S(2016年11月26日/京都・芝2000m)、さらに今年のGII弥生賞(3月5日/中山・芝2000m)を勝った同馬は、皐月賞では3番人気の支持を得た。だが、結果は9着と凡走。これによって、今回はかなり人気を落としそうな気配なのだ。

 ならば、狙わない手はない。重賞2勝の実力は確かで、末脚を生かすスタイルの同馬にとって、直線の長い東京コースで行なわれるダービーこそ、ぴったりの舞台。気楽な立場になることによって、一発を期待できるのではないだろうか。

「皐月賞組」から穴馬券を狙うもうひとつのパターンは、皐月賞で上位に好走したにもかかわらず、ダービーでも人気が上がらない馬に目を向けること。単純に、前走の結果をフロック視された馬がオイシイ配当をもたらしてくれるからだ。

 その最たる例は、2010年に7番人気で勝利したエイシンフラッシュ。同馬は11番人気だった皐月賞で3着と好走し、穴をあけた。しかし、その走りは十分な評価を得られず、ダービーでも伏兵扱いのままだった。その低評価を見事に覆(くつがえ)しての勝利だった。

 今年、このパターンに当てはまりそうな馬は2頭いる。皐月賞3着のダンビュライトと、4着のクリンチャーだ。前者は12番人気、後者は13番人気で健闘したが、ダービーでもその人気が大きく上がることはなさそうだ。

 それでも、ダンビュライトは名手・武豊騎手がそのまま鞍上を務め、比較的オッズは低くなるかもしれない。であれば、より穴馬にふさわしいのは、クリンチャーだ。

 同馬はデビュー戦こそ12着と惨敗したものの、その後は2連勝して皐月賞でも好走した。1月にデビューしたばかりで、まだ底を見せていない、とも言える。3走目のすみれS(2月26日/阪神・芝2200m)では、2着にコンマ7秒差をつけての圧勝劇を披露し、距離延長もプラスに働きそう。大観衆をアッと言わせてもおかしくない。

 ここまで「皐月賞組」を中心に取り上げてきたが、最後に別路線組からの”惑星”候補を探してみたい。

 今年は、青葉賞を快勝したアドミラブルが話題となっているが、過去の歴史を見ると、青葉賞の2着以下にも十分注意したほうがいい。

 例えば、2014年のダービーで12番人気ながら3着と穴をあけたマイネルフロスト。こちらは、青葉賞6着からの参戦だった。その前年、8番人気で3着入線を果たしたアポロソニックも、青葉賞2着から挑んだ1頭だった。本番と同じ舞台を経験しているから、「青葉賞組」からは勝ち馬以外の激走も多い。

 となると、今年の狙い目は青葉賞2着のベストアプローチだ。

 その前走では、レースレコードで駆け抜けたアドミラブルに完敗している。ただしタイムで言えば、ベストアプローチも青葉賞レコードとなる走りを見せており、上がりタイムもアドミラブルとはコンマ1秒差しかなかった。

 ベストアプローチは大崩れがなく、デビュー2戦目には重賞の京都2歳Sで3着、2走前の弥生賞でもコンマ3秒差の4着と、重賞レベルでも常に僅差の戦いを見せている。岩田康誠騎手と藤原英昭調教師という、ダービー制覇の経験があるコンビが大仕事をやってのけるかもしれない。

 競馬界最高峰の舞台となる日本ダービー。好勝負を期待するとともに、馬券的にも最高の結果を出せれば言うことはない。まもなく迎える大一番の、スタートの瞬間が待ち遠しい。

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