本のオンライン販売に始まったAmazonは、日用雑貨から食品などあらゆるものに配達する商品の幅を広げ、さらにはAWSでクラウドビジネスに乗り出したり、Kindleで電子機器の製造に乗り出したり、実店舗をオープンさせたりと、業種を広げ続けてきました。Amazonが乗り込む業界では過酷な「生存競争」が繰り広げられるわけですが、飽くなき成長を求めるAmazonは次の成長産業として「ファッション」に狙いを定め、準備を着々と進めています。

Amazon dominates every market it touches - now it’s coming for fashion - The Verge

https://www.theverge.com/2017/5/24/15685250/amazon-fashion-conquer-dwyane-wade-store

Slice Intelligenceの主席アナリストのケン・カッサー氏は、「Amazonは最も巨大なアパレル販売業者のひとつで、アメリカ国内で3000億ドル(約33兆円)あるアパレル市場に大きな影響を与えている」と述べており、Amaozonのアパレル事業の成長を認めています。アパレル用品の利益率は、Amazonが取り扱う商品の中でも高いことから、アパレル販売の収益アップによって、Amazon株は1株あたり25セント分の利益を底上げすると見積もってます。

利益率の低い業態のオンライン通販がメイン事業のAmazonですが、ジェフ・ベゾスCEOは、新しい市場に乗り出す場合に「長期戦」になることを恐れないことで知られています。入念に下調べをした上で、いざ戦いを挑むと、失敗や苦難に負けることなくジリジリと業界リーダーを追い詰めて、消耗戦の果てに市場を奪うという粘り強い戦略を採ることをいといません。

ファッションに対するAmazonのこれまでの動きをたどると、「少なくともレディスウェアのe-tailer Shopbopを買収した2006年以降、Amazonはファッション業界に夢中だ」とThe Vergeは評価しています。2012年にファッション展示会のCostume Institute exhibitionを開催し、2015年にはNew York Fashion Week: Men'sを立ち上げ、インドでAmazon India Fashion Weekを、東京でAmazon Fashion Week Tokyoを支援するなど、ファッション業界に対する着実な取り組みが見られます。



しかし、現時点でのAmazonの立ち位置は、「アパレル」業界では成功を収めているが、「ファッション」業界ではまだまだ弱小の存在です。シャツや靴下などの日用衣料を販売するアパレルと、ドレスや靴、バッグなど比較的高級な商品を扱うファッションとはまったく別物であり、ファッションの世界ではAmazonは実績がないに等しい新参者、というわけです。小売業のアナリストやファッション業界の重鎮たちは、Amazonが「ファッションアイテムを売るための最適な場所」になれるかどうかについて懐疑的です。その理由は、Amazonにファッショナブルな要素がないからだとのこと。Amazonが良い成績を収めるアパレルと、Amazonが得意ではないファッションとの間にある大きな違いは、「感情」や「感性」であり、実用的な目的のアパレルとは違い、ファッションでは主観的な自己表現という目的があるというわけです。



Amazonにとって比較的、利益率の高いアパレルですが、ファッション関連商品の利益率の高さはアパレルの比ではありません。そのため、仮にAmazonがファッション商品の販売でも成功を収めるとすれば、莫大な利益をもたらすのは明らかであり、Amazonが狙いを定めたファッション業界攻略に慎重に動いていても不思議ではありません。

「ファッション業界で成功を収めるためには、顧客との間に『感情的なつながり』を確立することが不可欠だ」とカッサー氏は述べています。この感情的なつながりは、一朝一夕にして確立されるものではなく、そこでAmazonは、ファッション展示会をサポートするなど地道な活動を続けてきたと考えられます。

2017年5月にAmazonはNBAのシカゴ・ブルズのドウェイン・ウェイド選手とのコラボレーションを発表。ファッションリーダーとしても人気のウェイド選手は、自身のブランドを冠する商品を多数持っていますが、Amazon Fashion内に「ウェイドショップ」を持つことになりました。ここから分かるとおり、Amazonは地道に顧客との「感情的なつながり」作りに励んでいます。

Bringing my style game to @amazonfashion with my own online store where you can shop my collections from @wayofwade @stancesocks @missionathlete and @thetiebar. #WadeXAmazonFashion #LinkinBio dwyanewadeさん(@dwyanewade)がシェアした投稿 - 2017 5月 17 11:36午前 PDT




Amazonは2017年初にプライベートレーベルのアパレルブランドを7つ立ち上げており、男性用のアクセサリー、女性用のドレス・ハンドバッグを販売しています。さらに2017年4月には独自のランジェリーラインを追加しています。そして、Alexaにファッション指南をしてもらえるカメラ付きEcho「Echo Look」を発売するなど、確実にファッション向けの取り組みを進めています。

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ATカーニーのリテール部門コンサルタントのマニク・アリヤパディ氏は、Amazonがファッション分野で強大な存在になるために必要なポイントを3つ挙げており、そのうちの2つは「デザインや創造性に優れた才能のある人材をそろえ、自由に実験的な取り組みをさせること」「実店舗を持つこと」。実店舗は「ブランドの遊び場」としてクリエイティブな人材に役立つそうです。

カッサー氏をはじめとして、「Amazonがファッション業界では成功することは非常に難しい」と考える専門家は多いようですが、これまで疑問や批判を跳ね返すかのように新ジャンルで成功してきたAmazonが、大きな利益の見込めるファッション分野で成功できるのか、引き続き注目に値しそうです。