来日中のヒュー・ジャックマン&ジェームズ・マンゴールド監督

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 俳優のヒュー・ジャックマンとジェームズ・マンゴールド監督が24日、有楽町で行われた映画『LOGAN/ローガン』来日記者会見に出席し、アメコミ映画の常識を突き破る過激な世界観でR指定を受けた同作について、そのメリットを語った。

 これまで17年にわたってヒューが演じてきた孤高のヒーロー、ウルヴァリンの最後の戦いを描いた本作。シリーズ初のR指定作品ながら、全米でメガヒットを記録した。そんな同作がR指定になった理由についてマンゴールド監督は「もちろん多くのウルヴァリンファンが、(バイオレンスなどの)制限がかかっていないものを観たいと望んでいたことがあった。だから最初からR指定で撮りたいと製作サイドには伝えました」と明かす。「でも、実は暴力描写だけでなく、R指定にすることによって大人向けのドラマを撮りたいという思いがあったんです。R指定にすることでそういった暴力描写や言葉遣いといったしがらみから自由になり、自分のアイデアを思い通りに描き出すことができた」と満足げな表情。

 その一例として、「例えば本作の冒頭では、ローガン(ヒュー)とチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)が話し合うシーンが7分ほど続くんです」と切り出したゴールドマン監督は、「でも、これが子ども向け映画になったら、このシーンは1分半くらいに縮められてしまう。子どもたちには、中年と老年の男が身体の衰えについて話し合うシーンなんてとても我慢できないだろうから。自分にとって、とにかく大切だったのは、成熟した作品を作ることでした」と説明する。

 さらに「今までいろんな地域をまわってきましたが、これだけ大人向けのテーマを扱いながらも、本作が物議をかもした場所はありませんでした」とコメントしたゴールドマン監督。その理由として「それはきっとヒューたちの演技に魂がこもっていて、ハートにあふれているからじゃないだろうか。わたしも子を持つ親なので分かりますが、とても暴力的な作品であっても、愛や献身といったことを肯定するような作品だったら観てもいいと思うんです。今は子ども向けの作品であっても、殺りくや物欲主義、他の文化を侵略するような作品にあふれている。本作はそういった作品よりもハートにあふれている」と誇らしげだった。

 過去の『X-MEN』シリーズにおいて、人間から迫害されるミュータントは、アメリカにおけるマイノリティーのメタファーであるという見方がされてきた。そういった同作の現代性について質問されたマンゴールド監督は、「わたしたちが心がけるのは、社会性ということ。(アメリカとメキシコの国境近辺の)壁のシーンで、子どもたちが“USA! USA!”と叫ぶシーンがありますが、あれは撮影の当日に付け加えたものなんです」と社会情勢に目くばせしたと解説。

 「とある作品が今の世相を反映させたり、問いかけたりすると、大胆であるとか、チャレンジングであると言われがちですが、社会的なことは反映されるべきだと思う」と続けるマンゴールド監督は、「悲しいことに、今は空虚な作品が多い。でも、わたしがこれだけ一つの作品を作るために努力を重ねているのに、キャンディーのようにあっという間に溶けて消えてしまうような作品にはしたくなかった」とキッパリ。

 それを聞いていたヒューは「今、思い出したんだけど」と口を開き、「実は、ちょうど大統領選の前から、脚本に壁のことが入っていたんです。だからトランプ大統領が初めて壁のことを言った時、誰かが脚本をリークしたのかという気にさせられた。SFとして書いたことであっても、マンゴールド監督がいかに政治的なことを考えて、世の中を見渡しているか、という証拠だと思う」と称賛する一幕もあった。(取材・文:壬生智裕)

映画『LOGAN/ローガン』は6月1日より全国公開