石川真魚

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 声優アーティスト・Machicoが、メジャー1stアルバムとなる『SOL』を5月24日にリリースした。デビューから5年目という節目での発売となった本作。Machicoにとって躍進のきっかけとなった『この素晴らしい世界に祝福を!』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマを筆頭に、アニメタイアップ曲も多数収録されている。

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 “とにかく元気いっぱい!”というイメージが強いMachicoだが、このアルバムには多種多様な表情の楽曲がそろっていて、彼女の新たな側面も垣間見えるのではないだろうか。今回、Machicoのほかに『このすば』1期OPテーマ「fantastic dreamer」の作詞・作曲を担当した園田智也、2期OPテーマ「TOMORROW」の作曲を担当した岡野裕次郎の2名を迎えてインタビュー。アルバムの制作秘話のほか、クリエイターから見た“アーティスト・Machico”の魅力についても、たっぷりと語ってもらった。(まにょ)

■「こんなに強い歌声のシンガーはそうそういない」(園田)

ーーデビューから5年目という節目でのメジャー1stアルバムリリースとなりましたが、まずは現在の心境を教えてください。

Machico:デビューしてから5年間、インディーズの時から様々なタイプの曲を歌わせていただいてたので、その経験を十分に活かせる1枚にできたらなという想いを込めました。第一歩のアルバムでありながら、勝負のアルバムでもありますね。

ーーインディーズ盤と比べて、何か変化などはありましたか?

Machico:気持ち的な変化はあんまりなかったですね。ひとつのジャンルに捉われることなく、多種多様な音楽が好きなので、私としてはずっと一貫して多面性を表現したいと思って取り組んできたのですが、その気持ちがもっと強くなったとは思っています。インディーズの時から歌ってきたカバーやオリジナルソングのほかにも、声優としてキャラクターソングも歌わせていただいているので、表現の引き出しが増えたという部分では成長できたかと思います。

園田智也(以下、園田):今回のアルバムは、より音楽的になりましたよね。インディーズの時はどちらかっていうとアニソン寄りだったり、ノリのいいライブ受けするような曲が多かったけど、今回のアルバムで音楽の幅が広がったなっていうのはすごく感じました。

Machico:そうですね。私も、最近の声優さんが歌う曲っぽくはないかもって思いました。

園田:「アニソン」っていうカテゴリーではあんまりないのかも。

岡野裕次郎(以下、岡野):うん。どちらかといえば、アーティスト色が強いですよね。

ーーそんな今回のアルバムですが、全体のコンセプトや、タイトル『SOL』に込めた思いとは?

Machico:これまで、「Machicoちゃんの歌を聴いてたら元気になれるんだ!」って、ファンの方に言っていただけることがとっても多かったんです。だから、そういう方々にもっと元気を与えられるような存在になれたらいいなっていう気持ちを込めて、メジャー1stアルバムはみんなにとって太陽みたいな1枚にしようと思いました。タイトルの『SOL』っていう言葉は“太陽神”という意味なんですけど、“唯一”という意味も含んでいます。ほかにも、“ソウル”と読むことで“soul(魂)”とも重なるし、自分の求めてるイメージとすごく合致しましたね。表向きには「太陽」という意味を込めているんですけど、ふたを開けたらトリプルミーニングなタイトルになりました。

園田:最初、“Song of love”とかの頭文字かと思ったんだよね。でも、ブログを読んだら太陽神って書いてあったからびっくりした。

Machico:確かに、『SOL』って、パッと見ただけではあんまり意味がわからないですよね。だから、どういう意味なのか知りたくなるんじゃないかなとも思ったんです。

ーー岡野さんも園田さんも、Machicoさんとはじめてお仕事をされたのは『このすば』だったんでしょうか?

園田:はい。僕が1期OPの「fantastic dreamer」の時で。

岡野:僕は2期OPの「TOMORROW」ですね。

Machico:本当に、最初はめっちゃ緊張しました……(笑)。「fantastic dreamer」のお話をいただいたのも、実はすごく急なお話だったんですよ。しかもアニメのOPということで、信じられないっていう思いが強くて、ありがたいながらもびっくりしました。

ーー『このすば』は、Machicoさんにとって大きな転機となった作品ですよね。作家陣のおふたりは、Machicoさんの第一印象などはどうでしたか?

岡野:直接会う前から、彼女のことは動画などを見て知っていたんです。歌声がすごく力強いし、聴いていて気持ちがいいので、自分の曲を歌っていただけるということでとても楽しみにしていました。

園田:「fantastic dreamer」に関しては、じつは曲ができた時点では、まだ誰が歌うか決まっていなかったんですよ。それで、ディレクターさんからMachicoさんのプリプロ音源が送られて初めて歌声を聴いて、「彼女ならいける」と思いました。あれはだいぶ難しい曲だったので。

Machico:めっちゃ難しかったです……。

園田:だよね? そんな難しい曲なんだけど、ミックスなどを施してない、生の歌声で送られてきたんですよ。それを聴いた時に、「彼女だったら歌いこなしてくれるだろう」って安心したんです。だから、最初から信頼していましたね。あと、本人がどう思うかはわかりませんが、特にこの時代にこういう声の歌い手って、いそうでいないんですよ。強い声だけど、いわゆるロック的な強さではないわけで。そうした強い声でちゃんと歌えるシンガーさんって、実は今あんまりいないと思うんです。

Machico:選んでいただいたので期待は裏切れないですし、「Machicoに歌ってもらってよかった」って思われるような作品にしなきゃ! と思って、かなり気合は入ってました。

岡野:楽曲以外のことでいえば、僕と彼女は生まれが一緒で広島出身なんですよ。

Machico:そうなんですよ!

岡野:同郷っていうだけで、最初からすごく親近感がありましたね。

■「普段のイメージとは違う、大人っぽさや暗い部分も見せたい」(Machico)

ーー続いて、今回のアルバムの中から岡野さんと園田さんが担当した楽曲を中心に聞いていきたいと思います。まず、リードトラックのM2「OVER HEAT」は岡野さん作曲ということで。

Machico:これは、『SOL』に込めた思いがギュッと詰まった曲ですね。グイグイ引っ張っていくタイプの曲ではなくて、歌詞やメロディが聴く人の心に寄り添っていて、聴いていて自然と笑顔になれるような曲だなとすごく思います。

岡野:この曲は、「『このすば』3期があるとしたら、どんなOPテーマにしよう?」っていうイメージで作ったんですよ。1期と2期では色の違うOPテーマだったので、3期はまた違うテイストがいいなと思って。かっこよくてノリのいい、ダンスできるような曲で、ちょっと渋さもあるディスコっぽい仕上がりにできればと思って作りました。

Machico:確かに、自然と踊りたくなっちゃいます。

ーーM3「fantastic dreamer」、M6「マケズギライなThank you」は園田さんの作詞作曲で、どちらも明るめのラインナップになっていますよね。

Machico:2曲ともアップテンポな曲ですね。あと、園田さんが作ってくださる曲って、歌っていて楽しくなったり自然とリズムに乗れる曲が多い印象です。しかも、「マケズギライなThank you」は、私の歌いやすい音域で作ってくださってるんですよ!

園田:そう。だからか、レコーディングもすごく早く終わったよね。

ーー「fantastic dreamer」の時は曲が先にあったということで、この曲がMachicoさんをイメージして作ったはじめての曲だったのでしょうか?

園田:おそらくそうですね。「fantastic dreamer」はどちらかというと凝った曲だったので、次はできるだけシンプルにと思って作りました。あとは、「Machicoちゃんのような人にこういうことを歌われると、聴いている人は嬉しいだろう」というイメージで、歌詞も書きました。

ーーそんな元気の出るアップテンポな2曲に続き、M9「ココロメロディー」は打って変わって切ないバラードになっていますよね。

園田:僕、じつは元気な曲を作るのって苦手なんですよ。

Machico:えっ、そうなんですか!?

園田:世間一般から見た僕のイメージとは真逆かもしれないです。というのも、世の中に出るのはどうしても元気で勢いのある曲が多くなるんですよ。でも、本当は根暗な曲を作っている方が得意というか、好きなんでしょうね。だから、「ココロメロディー」を聴いた時は意外だったでしょ?

Machico:はい。いい意味で、すごく寂しさを感じました。「ココロメロディー」は私が詩を書かせていただいていて、私は作詞をする時、いつも曲を聴いてまずはイラストに起こすんです。それで、絵に合うストーリーを繋げて歌詞を作っていくんですが、この曲はやっぱり切ないテーマになりました。自分自身、元気で根アカだとは思うんですけど、根アカなりの暗さも持ってはいるので、こういう暗い曲は聴いていて落ち着きますね。

園田:人間、誰しもが光と影を持っている中で、Machicoちゃんは光の方を全面に出すタイプですよね。でも、だからこそチラッと見える影の部分に心くすぐられるファンも多いと思うんですよ。

Machico:みなさんから見て私は、「笑顔で元気をもらえる」みたいなイメージだと思うんです。でも、作詞をする時は、自分の本音や暗い部分がすごく出てくるんですね。もちろん、いただく曲が明るい曲の場合はそれに合せて明るい詩を書きますけど、それ以外の曲調にも詩をつけられるように、日頃から言葉を書き留めています。私、意外とポエマーなんですよ(笑)。だから、これまでは曲を先にいただいていてそれに歌詞をつけることがほとんどだったんですけど、いつか自分の詩から曲を作ってみたいという気持ちはあります。そうしたら、もっとリアルなノリの曲ができるかなって思います。

岡野:確かに、Machicoさんの切ない歌詞や歌声を聴くとドキッとさせられますよね。だから、僕も「OVER HEAT」の時には、あえて明るくなりすぎないよう、センチメンタルに聴こえる部分も入れるように作りました。明るいながらも涙が出るようなメロディラインで、Machicoさんの大人っぽい部分も出せるように意識したんです。

ーーちなみに、岡野さんは「TOMORROW」を作る際、「fantastic dreamer」を意識することはありましたか?

岡野:もともと、「1期のOPテーマとは違う曲調で、バンドサウンドでスピード感のある楽曲をお願いします」という要望があったんです。なので、似たような曲にならないようにと意識はしました。僕は以前バンドをやっていたので、「バンドサウンドで」と言われて燃えましたね。いわゆるキラキラしたアニソンよりも、勢いのある曲の方が好きだったし。だから、「TOMORROW」は、自分が楽器を始めたての時にコピーしたくなる曲っていうのをイメージして作りました。

Machico:私もバンドサウンドが好きだったので、「TOMORROW」はメロディラインもすぐに覚えてしまいました。『このすば』1期は作品自体の評判もOPの評判もとてもよかったので、2期OPはもっといいものにしたいとていう思いがありました。でも、それがプレッシャーになって死に物狂いでやったっていうわけでもなくて、新しくいいものができるのを楽しみながら挑戦していた感じですね。マイナスな意味でのプレッシャーは全然なくって、レコーディングにも楽しく挑みました。

ーーこの曲は、演奏陣もとても豪華ですよね。

Machico:本番のレコーディングの日は、楽器の録音が終わった状態で歌わせていただけたんです。こんなことを言うのはおこがましいかもしれませんが、豪華な演奏に置いていかれないように自分が引っ張っていくぞっていうぐらいの心持ちでした。完成した音源にはその思いが反映されていて、素晴らしい方々が私の歌を聴きながら演奏してくださったのかと思うとシビれましたね。いつか、生バンドで「TOMORROW」を歌いたいなとも思います。

ーーお話を聞いていて、1期の「fantastic dreamer」の時と比べたら、「TOMORROW」では心に余裕ができたのかなという印象があります。

Machico:そうですね。アニメ自体の世界観も1期を通してわかってきた状態で「TOMORROW」を歌わせていただいたので、そういう面ではすごく余裕を持ちながら、より作品と向き合えたかなと思います。

ーー今回のアルバムでは、大人っぽい雰囲気のM7「摩天楼グッバイ」など、新しいチャレンジもありましたね。

Machico:はい、「摩天楼グッバイ」は今までにないタイプの曲だと思います。これまでは、低いトーンだとロック系の曲が多かったので、こういう90年代J-POPのような曲で大人っぽく歌うっていうのは、私にとっても新しかったですね。きっとファンの方々もびっくりするような曲になったと思います。歌詞も大人っぽい恋の設定なので、レコーディングの時もそれを意識して、あまり出しゃばらないように一歩引いて歌いました。

ーー今後、こういう大人っぽい曲も増えてきそうですか?

Machico:もっとアダルトな雰囲気の、年相応の女性らしさも出していけたらなと、夢見てます。歌を通してそういう大人っぽい自分も出せそうな気がするんです。なので、歌でそういう部分をアピールできたらいいなって思ってます。それから、明るい曲はもちろん好きですけど、ちょっとダークサイドな曲も歌ってみたいなと思います。いろんなものが好きだからこそ、多面性を見てほしいですし、ひとつのジャンルに捉われずに歌い手として成長していきたいと思っています。

■「Machicoは、作家にとってありがたい存在」(園田)

ーーせっかくなので、岡野さんと園田さんにもお互いの印象をおうかがいできればと思うのですが。

岡野:「fantastic dreamer」は、ポップでストリングスも効いていながらもバンドサウンドなので、僕の中でもどヒットな曲でしたね。さっきも「凝ってる曲」とおっしゃってましたけど、僕はそういうのがあまり得意じゃないので、すごく憧れているというか。こんなキメできるんだとか、テクニカルな部分に惹かれます。自分も作れるものなら作ってみたいな。

園田:いやいや、絶対できますよ(笑)。僕も、「TOMORROW」は正直やられたって思いました。楽曲の募集があった際に、実は僕も何曲かエントリーさせていただいてたんですよ。それで、最終的に選ばれた「TOMORROW」を聴いて、「こっちだったか!」ってなって。あと、サビの後半のMachicoちゃんの歌がすごく気持ちいいですよね。俺、あの部分がすごく好きだし、PVを見ながら思わず「ウェイ!」って手をあげちゃいます。

岡野:っていうか、あそこはよく歌えましたよね(笑)。なかなか出る高さじゃないので。

園田:あれ、どれくらい?

岡野:Fぐらいですね。

園田:えっ、そんなに出るの? すごいね。普通の人がカラオケで歌うとツラいでしょ。

Machico:さすがにFは高かったですね……。

岡野:基本的には、女性のトップはCですからね。

Machico:なのに、Bメロはめっちゃ低いんですよ! だから余計に難しかったんです。

園田:なるほど、レンジがすごく広いのか。

岡野:すごい下からグーンと上がってきますからね。本当に、無責任に作らせていただきました(笑)。でも、Machicoさんが歌うっていうことがわかっていたから、きっと大丈夫だろうと信じて作ったんです。とはいえ、最初のプリプロの時はドキドキしていたんですけど、見事歌っていただけたので「全然いけるじゃん!」とびっくりしました。

ーー普段ほかのアーティストさんに楽曲提供する際よりも、チャレンジングに作ったということでしょうか?

岡野:そうですね。かなりチャレンジしました。

園田:Machicoちゃんが歌い手だと、可能性が見えるっていうことですよね。

Machico:私、期待のプレッシャーは大好きなので、そう言っていただけるとすごく嬉しいです。「できるの?」って言われたら、「やります!」ってなるタイプなんですよ。だから、そういう風に期待していただけるのはありがたいです。

ーータイアップとそうでない楽曲提供などで制作プロセスに違いはあったりしますか?

園田:作る側からすれば、タイアップだと絡む人間が増える分、プロセスがひとつ多いんですよ。各所からOKが出ないと前に進むことができないので。

ーーでは、心構えとしてはそれほど変わらない?

園田:うーん……もちろん変わるところもあるんですけど、結局は自分の芯をブラさないで作品やアーティストに寄り添わせるといった形になるので。

岡野:1曲を作るエネルギーで言えば、それほど変わらないんですよね。なので、気持ちとか心構えはある程度同じです。ただ、アニメのOPとかだと尺が決まっていて、だいたい1分30秒の中に楽曲のおいしい部分を全部入れないといけません。ワンコーラスがちょうどよく1分30秒になるという奇跡はほぼないので、そこは考えて作っています。

園田:確かに、タイアップだと、そういった物理的な制約を意識することの方が大きいですね。

岡野:なので、そういう意味ではキャラソンやアーティスト提供の方が、楽曲構成も自由にできるし、やりやすいといえばやりやすいですかね。

ーーMachicoさんはアーティストとして歌う以外に声優としてキャラソンも担当されていますが、そのあたりはどのように歌い分けてますか?

Machico:私はもともと歌手に夢見ていたということもあって、アーティストとして歌う時には、特に難しさや迷いはないですね。声優としてキャラソンを歌う時は、自分の技術を全面に出すことはしないです。キャラクターとして臨んでいるので、“Machicoらしさ”っていうのを出したくないと思ってます。結果的に「Machicoちゃんらしいよね」って言われたとしても、自分は技としての“Machico”に逃げたくないんです。キャラクターの立場でいろんなものを歌えるよう、いつも一本線を引いているつもりです。

ーー作家のおふたりから見て、声優アーティスト業界の中でMachicoさんはどのような立ち位置なのでしょうか?

園田:やっぱり、声優さんっていうのはシンガーさんではないわけですよ。なので、作曲する時には音域やリズム、曲調に制限が出がちなんです。でも、Machicoちゃんの場合はそういう制限をあまり考えずに、フルで考えた作品を渡せるのでとてもありがたいです。

岡野:本当にそうだと思います。あとは、僕は“アーティスト・Machico”としかまだ一緒にお仕事をさせていただいてないこともあって、すごく素直に「アーティストだな」っていうイメージを持っています。

園田:僕もそうですね。キャラソンを歌っているところも一回見てみたい。

Machico:今後、おふたりともぜひ声優方面でもお仕事をできたらいいなと思います!(まにょ)