東京のネイルサロンでAFPの取材に応じるノンノンさん(2017年2月21日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】リリアン(仮名)さんが自身の幼い娘と最後に会ったのは10年前──。アフリカの祖国で身の危険を感じ、愛する家族と別れて、着の身着のまま日本へとやって来た彼女は、新しい生活への希望を胸に抱いていた。

 リリアンさんは現在、将来性のない仕事でどうにか生計を立てながら暮らしている。知っている日本語はテレビ番組で聞きかじったものばかりだ。彼女のような環境にある人への日本政府の支援はそう多くない。無償で提供される日本語教室は限られており、福祉住宅もなかなか見つけることができない。差別もある。

 それでも、日本で難民認定を受けた数少ない一人である彼女は運が良い方だと見なされている。日本では難民認定申請者の99%以上が却下されている現状がある。

 ここでは勉強のための資金援助はなく、銀行でローンを組んだり福祉住宅を借りたりするにも手助けはしてくれない。簡単なことではないとリリアンさんはAFPの取材に語った。「私たちは自分だけが頼り。一人で闘うしかない」

 欧米では近年、反移民感情が高まっているが、日本では、祖国の独裁政治や内戦から逃れ、安住の地を求めてやって来た人が、法的・社会的な壁に阻まれ、長きにわたり苦境に立たされ続けている。

 富裕国である日本では2016年、法務省入国管理局により8193人の難民認定申請が処理された。そのうち難民として認定されたのは前年より1人多い28人のみだった。

 この状況について日本政府は、難民認定者が少ないのは、申請しているのが主にアジア地域の出身者で、経済的な理由のみで日本への入国を希望しているためだとしている。

「わが国においてはシリア、アフガニスタン、イラクのような大量の難民が発生する地域からの申請が少ない」と、法務省入国管理局の広報担当者、菱田泰弘(Yasuhiro Hishida)氏は説明する。

 リリアンさんは、国連(UN)の支援を受けて日本にたどり着いた。そして、祖国に戻れば部族紛争によって命が危険にさらされるとの理由から、到着直後に難民認定申請を行った。難民として認められるまでには2年かかったが、その間、カトリック教会や慈善団体からの援助を受けて暮らした。

■「難民認定には何の意味もない…」

 だが難民認定者になってから受けられる恩恵はそう多くはなかった。10代になった娘と再会できるめどはいまだに立っておらず、家族訪問を希望する娘の申請もことごとく却下されている。

 リリアンさんにとって、日本での教育と安定した生活機会を得るのは簡単なことではない。外国人が日本で暮らすのは難しく、言葉が大きな壁になると彼女は話す。日本語を話すにはあらゆる努力を必要とするが、無償で提供される日本語教室の存在については何も知らないという。「時々、難民認定には何の意味もないと思ってしまうことがある」と、ため息交じりに語った。

 一方、ミャンマーから日本に身を寄せているノンノンさん(47)にとって、難民認定は少なくとも日本への帰属意識を与えてくれるだろう。「ノンノン」は子ども時代のニックネームなのだという。

 ノンノンさんは25年前、軍部による迫害を逃れて母国を後にしたが、法的には今も不安定な立場に置かれている。人道的な配慮から在留資格を認められ、日本での居留、就労は可能となったが、これらの資格は通常一定期間の在留のみを認めるもので、その都度の更新を必要とする。この更新手続きは申請者に不安を強いるものだ。

「自分の国を出て大使館とも関わりはない。日本でも難民と認められておらず、無国籍のような状態」とノンノンさんは現状を説明する。

 彼女は、ミャンマー出身で同じく難民認定申請を行っている男性と日本で結婚し、1男1女に恵まれた。しかし、子どもたち2人の国籍はミャンマーからも日本からも認められておらず、実質的には無国籍者となっている。

 難民支援団体は、この日本の制度について厳し過ぎると指摘する。

 ミャンマーの少数民族カチン族出身のある女性を支援している弁護士の渡邉彰悟(Shogo Watanabe)氏は、帰国すればカチン族の武装勢力と対立する政府軍の兵士らによって性的暴行を受ける恐れがあると述べ、「軍によるレイプの危険性がある、というだけでも十分に難民の要件にはなると思うが、入管(法務省入国管理局)は実際に軍からその個人がターゲットになっていると証明できるのか、などと聞いてくる」と難民申請の難しさの一端を明かした。

■3割の外国人が日本で差別を経験

 難民に対する政府の方針をめぐっては、人口が減少するなか、需要が高まりつつある難民の受け入れを無視していると批判する声もある。

「日本は島国で長らく外国人に門戸を閉ざしてきたが、(少子高齢化が進んだ近年までは)人口が多くそれで困らなかった」と、法務省出身で移民の受け入れを提唱している坂中英徳(Hidenori Sakanaka)移民政策研究所長は言う。

 日本の現在の人口は1億2700万人だが、2060年までに8700万人に落ち込むとの予測もある。

 坂中氏は、日本の難民受け入れが成功するためには「まず移民国家宣言をして、(人道的な見地からの難民受け入れも含め)移民をもっと受け入れるべき」と話し、移民が増えればより多文化社会となり、難民受け入れも成功しやすいと主張する。

 法務省は今年3月、国内に住む外国人を対象にした差別に関する初の実態調査の結果を発表した。それによると、回答者4252人の30%が差別的な言葉を投げかけられたことがあると答えている。また就職を断られたのは自分が日本人ではないことが理由だと思うと回答したのは2788人中の25%に上った。

 リリアンさんは、自らの肌の色が周りと違うことに触れながら、日本で生活する上での難しさを語った。電車に乗っていると席を立ち離れていく人もいる。また得意な英語を生かそうと語学を教える仕事を探していた際には、「アフリカ人」と分かった途端に断られたこともあるという。しかしその一方で、欧州の庇護希望者らが不安視するような危険な目には遭ったことはないと明らかにした。

 ミャンマーを離れ、日本で暮らすノンノンさんは、現在、ネイルサロンで働いている。以前の職場では、同じ仕事をしても、日本人の従業員より少ない賃金だったこともあるという。このような状況について彼女は、日本以外の国に逃れていったその他親族が暮らす環境とはまるで違うと話す。

「米国やオーストラリアの親戚は向こうで難民申請を受け、国籍も取得した。ちゃんと仕事をして、家も買える。行きたい国にだって行ける。(彼らは)人間らしく生きられる。(私も)人間らしく普通に生きたい」
【翻訳編集】AFPBB News