<南部ミンダナオ島周辺で活動するイスラム過激派組織との戦闘が激化、軍や警察に死傷者が出て、住民も避難を余儀なくされている>

フィリピンのドゥテルテ大統領は5月23日夜、南部ミンダナオ島周辺地域に「戒厳令」を布告した。同地域で活動するイスラム系過激武装組織との戦闘が激化、軍や警察に死傷者が発生、多数の市民が避難を余儀なくされるなど社会情勢が急速に悪化したのが原因だ。

ミンダナオ島西部南ラナオ州の州都マラウィ市で23日午後、治安部隊による中東のテロ組織「IS(自称イスラム国)」と関係が深いとされるイスラム武装組織「アブサヤフ」の拠点に対する掃討作戦中、「マウテグループ」と称される別の組織が戦闘に参加、激しい銃撃戦となった。この戦闘で警察官2人、軍兵士5人、マウテグループなどの過激派13人が死亡、多数の負傷者がでた。

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周辺地域ではその後も戦闘が収まらず、マウテグループは市役所、病院、大学などを占拠、車両によるバリケードで道路を封鎖、一部建物に放火するなどしており、人口約20万人の地方都市マラウィは混乱の極致にあるとされる。

現地からの報道ではキリスト教司教や教師、一般市民などが「人質」として拘束されている模様で、多数の市民が郊外に避難を始めているという。

こうした緊迫した情勢の報告をドゥテルテ大統領は訪問中のロシアで受け、国軍首脳の進言を受けて戒厳令布告を決断、急きょ日程を前倒してロシアのプーチン大統領との首脳会談(当初の予定は25日)を実施、帰国の途に就いた。戒厳令は布告後48時間以内に大統領が国会に報告することが憲法で義務つけられているためだ。

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首脳会談でドゥテルテ大統領はプーチン大統領に「残念ながら帰国しなければならない戦闘状態が起きた」と伝えたという。プーチン大統領からは事態の早期沈静化への期待が示されたという。

国内過激派問題は就任以来の課題

ドゥテルテ大統領は2016年6月の大統領就任直後から国内治安対策に乗り出し、反政府武装各組織との和平対話路線を打ち出した。その結果、共産党系武装集団「新人民軍」との停戦に漕ぎつけたが、その後条件が整わず決裂するなど試行錯誤を続けてきた。この和平路線にアブサヤフは当初から応じる気配を見せず、外国人拉致、殺害、戦闘、襲撃テロを繰り返し、最大の国内治安問題としてドゥテルテ大統領を悩ませていた。

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今回の戒厳令は布告の5月23日から60日間の期間限定だが、状況次第では期間延長、あるいは地域拡大も十分ありうる。

急きょ帰国後に行った記者会見でドゥテルテ大統領は「イスラム過激組織の脅威がルソン、ビサヤなど他の地域に拡大するのであれば、戒厳令を全土に敷くことを排除しない」と発言しており、戒厳令拡大も視野に入れていることを印象付けた。

大塚智彦(PanAsiaNews)