田舎の道を車で走ると、ひょろっと建っていた、小さな小屋。エロ本自販機小屋だ。
幼い頃気になって親に「あれなに?」と聞いて困らせた経験がある人、多いと思う。


日本のエロ本自販機小屋を、ほぼすべて撮影した『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』。
1970年代から登場した自販機の歴史と現状、法的解釈、探し方、業界最大手エロ自販機社長や流通業者のインタビューなど。エロ本自販機を知るなら、この一冊でOKだ。

そもそも平成生まれの人だと、エロ本自販機自体を見たことがないかもしれない。
最大の理由は、インターネットの普及。わざわざ外にいく必要がない。
もう一つは行政による撤去。千葉県、京都府、兵庫県などなど、エロ本自販機がゼロになった県は多い。
ぼくが住んでいる北海道は、かつて国道を走れると連続で見つかるほど、めちゃくちゃいっぱい自販機小屋があった。
今、北海道の自販機数はゼロだ。

著者は、グーグルストリートビューを駆使しながら、全国を自力で全部まわって自販機小屋をチェック。撮影した写真とともに、置かれている状況を一つずつ全て解説している。
80年代は90年代は、僻地の道路沿いに建てられたオートスナック(食べ物自販機)が、長距離ドライバーのオアシスになっていた。その横に建てられたトタン小屋のエロ本自販機は、元気に稼働していたようだ。
90年初頭、アダルト自販機オーナーは「万券がぎっしり」「売れ過ぎちゃってお札が入らなくてエラーになる」ほど売れていたことを語る。

自販機ならではの、書き込まれた呼び込み・警告文句も面白い。
「プロのプライドを賭けて100%満足させます!」
「6番!かなり興奮します!」
「注!マニア向け」
なんだかほのぼのする。中には「ゴムリングを入れてください」という落書きに「わかりました」とオーナーの落書きを返すなど、コミュニケーションまであったりする。

一方、盗難されまくり荒らし放題になりがちで、戦い続けているのもエロ本小屋ならでは文化。
「真夜中でもサンダーの音がしたら110番に通報します、隣の家ヨリ」
「この変態男 警察に通報してます」
「汁もの、生ゴミは入れないでください ※そこらへんにエロい箱すてると住民さんから苦情がきちゃうんでこの中にペケは入れてください」

流通業者は、現在並んでいるのはゾッキ本であると語る。
ゾッキ本とは、本の天や地の部分に赤色のマジックで線をいれて、見切り品として安く大量に仕入れた本のこと。
一般流通の返品分を「中古本」「汚損扱い」として「キロ買い」で引取り。再販制度の網の目をくぐり抜けた、っていうか黒に近いグレー。新品めかして自販機に並べている。
まさに「流通の最果て」だ。

崖の近く、低湿地のような売れない土地、焼却炉など、飲食店が並びづらい地域に建てられやすい自販機小屋。
浜松市のある自販機小屋の隣には「遺品整理」と書かれた看板が立っていた。

コンビニ弁当のゴミが散乱し放題だったり、野糞があったり、天井が抜けていたり。この世の果てのような惨状になっている場所もある。
一方で「こっそり堂」ブランドなど、各地で今でも元気に稼働している自販機もある。グッズ販売が盛んなのだ。なお、あんまりこっそりしてない。

自販機の中にあるのは、ほとんどがDVD付きエロムック。写真中心の分厚い雑誌型エロ本は、そもそも今ほとんどない。
ビデオ、CD-ROM、DVD、インターネット、VR……メディアの進歩の火付け役は、いつもエロだ。
実はタスポより10年も早く、エロ本自販機は免許証による年齢認証システムを導入していたという。
かつて最新だった自販機、今はパーツも作られていない。自販機オーナーは「10年後にはおそらくもう全部ない」と語っていた。

(たまごまご)