負傷退場した小川航基【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

序盤にエース小川負傷。立ち込める暗雲

 4日に行われたU-20W杯グループステージ第2戦で、日本はウルグアイに0-2で敗れた。南米王者に力の差を見せつけられたとはいえ、チームとしても課題の多く残る試合。エース小川航基の負傷もあり、日本は今大会最大の正念場に立たされている。(取材・文:元川悦子【水原】)

----------

 21日の初戦・南アフリカ戦に2-1で逆転勝ちし、2017年U-20W杯(韓国)グループステージ突破へ大きく前進した印象の強かった日本。24日の第2戦・ウルグアイ戦(水原)も入りは悪くなかった。

 スタメンに抜擢された市丸瑞希(G大阪)、原輝綺(新潟)のボランチコンビはユベントス入りが決まっているロドリゴ・ベンタンク―ル(20番)ら中盤を確実にマークし、右サイドバックの藤谷壮(神戸)も持ち前のスピードで対面のアグスティン・カノッピオ(19番)に応戦。組織的守備からボールを奪って前半9分には小川航基(磐田)がクロスに飛び込み、10分には岩崎悠人(京都)にシュートが飛び出すなど、攻撃の方にも勢いが生まれつつあった。

 そんな日本に予期せぬアクシデントが発生する。前半16分にエース小川が相手に踏まれて着地に失敗。ひざを負傷し、そのまま担架で運ばれて退場してしまったのだ。緊急事態に直面した内山篤監督が切ったカードは小川と同タイプの長身FW田川亨介(鳥栖)ではなく、15歳の久保建英(FC東京U-18)。「相手1ボランチ(フェデリコ・バルベルデ=16番)の横が空いていた」と話す指揮官はそのスペースを有効活用できる頭脳を持った若武者に勝負を託した。

 しかし「相手のリーチもそうなんですけど、一歩が速いんで、そっちの方が苦しかった。ファーストタッチがうまくいかなかった」と久保が言うように、さすがの彼も思うようにボールを操れない。岩崎との2トップも経験値が少ないせいか、なかなか連動する形が作れない。

 市丸が中を強引にこじ開けようと縦パスを狙い、右MFの堂安律(G大阪)が気を利かせて真ん中に入りながら起点を作ろうと試みるも、肝心なところでは相手に締められる。「前半はボールを回させられている感覚があった」と堂安も話したが、日本は巧妙かつ老獪な相手のペースに引きずり込まれていった。

痛恨の2失点。後半のいい流れも生かせず

 そこに追い打ちをかけたのが、前半38分のウルグアイの先制点だ。相手ボランチ・バルベルデ(16番)のロングパスに反応した右サイドバックのロドリゲス(4番)に舩木翔(C大阪)が一発で裏を取られてしまい、中山雄太(柏)のスライディングも不発。最終的にニコラス・スキアパカッセ(9番)に中央を割られてゴールを許してしまった。

「翔と雄太くんが2人で行って取り切れればよかったけど、自分ももうちょっとボールサイドに寄ってカバーのポジションを取っておけば、シュートブロックもより近くにいけて体に当てることができたのかなと思います」と冨安健洋(福岡)悔しがったが、前半の失点というのは非常に痛かった。

「このままでは終われない」と久保を筆頭に奮起し、後半に巻き返しを図った日本。その思惑通り、リズムが劇的に改善され、後半開始10分には相手ミスパスを高い位置で奪って市丸が決定的シュート。これを相手GKが弾いたところに久保が飛び込みヘッド。どちらも普通の相手だったら決まっている決定機だったが、ウルグアイ相手では枠を外れてしまう。

 続く13分の久保の反転シュートの場面もGKに弾かれ、詰めた堂安のヘッドも決まらなかった。「どれだけボールを回しても最後に決めなければ意味がない」と背番号7も悔しさをむき出しにしたが、その決定力の差が優勝候補との違いというしかなかった。

 日本は最後まで決め手を欠き、逆に後半アディショナルタイムにワンチャンスから左サイドバック・マティアス・オリヴェイラ(5番)に追加点を許し、0-2の手痛い敗戦を喫することになった。0-1のままなら2試合合計得失点差はプラスマイナスゼロだったが、この1失点によってダメージが広がった。27日のグループステージ最終戦・イタリア戦に引き分けたとしても2位浮上は叶わず、3位に回った場合も他チームとの比較でこの得失点差が足かせになりかねない。日本が窮地に追い込まれたのは紛れもない事実なのだ。

久保と岩崎、新コンビの可能性

 加えて、エース小川はイタリア戦も欠場濃厚。これまで小川というFWの軸に岩崎、久保のいずれかを最前線で組ませ、堂安、三好康児(川崎F)ら2列目のアタッカー陣を組み合わせてきた日本だけに、小川不在の状況下で点を取るのは非常に困難な命題になってくるのだ。

 この日も小川の負傷退場後、日本攻撃陣の歯車が大きく狂った。三好が「前線のターゲットがいなくなってしまったので、少しロングボールやクロスの量が少なくなるかなと思った。小川がいた時はクロスからのチャンスはあったので、もっとそこからいければと考えていたけど…」と高さがなくなった難しさを吐露する一方、市丸も「小川が抜けた分、高さがなくなって、サイドからのクロスが難しいと思ったんで、中を強引にこじ開けようとしたけど、それも難しかった」と手詰まり感を口にするしかなかった。

 後半になってからは堂安・岩崎・久保が絡んで少なからずチャンスを作れるようにはなったが、チームとしてのコンビネーションが完全に出たとは言い切れない部分もあった。「小川くんがいなくなって『自分がやってやる』って思いがみんな強くなってしまった。そこでグループとして何かやろうという雰囲気になればまた違ったけど」と岩崎も個人プレーに走りがちになった攻撃陣の問題点を指摘した。

 次のイタリア戦では同じ失敗は許されない。最前線で再びコンビを組むであろう岩崎と久保にはより密な連携が求められてくる。

「久保くんが入るとボールが出てくるシーンが多くなるので、その分、オフ・ザ・ボールの動きに集中できる感じはある。そこをもっと合わせていきたい」と岩崎が言うように、久保がボールを持った瞬間に彼や堂安らアタッカー陣が鋭い動き出しでゴールに突き進むような攻めを繰り出せれば、イタリア相手にも得点を奪える可能性が高まる。

決勝Tへ。イタリア戦は乗り越えるべきハードル

 ウルグアイ以上に強固な守備組織を誇る欧州の強豪にはひと工夫もふた工夫も凝らさなければ、1点をもぎ取ることはできない。そこをしっかりと頭に入れながら、日本はできる限り人数をかけていくべきだ。ウルグアイ戦のように1人ひとりがバラバラになってしまったら、それこそ相手の思うツボ。そうならないように、岩崎には攻撃のリーダーとして今一度、意思統一を図ってもらいたい。

 ウルグアイ戦では不発だったリスタートの精度を高めることも肝要だろう。小川と板倉滉(川崎F)をケガで欠く今、高さではどうしても相手を下回る。だからこそ、久保や堂安が蹴るセットプレーの精度がより重要になる。

 2010年南アフリカW杯のグループステージ第3戦・デンマーク戦でも、日本は1勝1敗・勝ち点3のところから本田圭佑(ミラン)と遠藤保仁(G大阪)が立て続けに直接フリーキック2発を蹴り込んでグループ1位通過を決めている。

 今回の日本と当時の日本は、状況が酷似している。久保と堂安が同じように直接フリーキックを決めることができれば、チーム全体が楽になる。彼らにはそれだけの能力があるだろう。

 いずれにせよ、カテナチオ(イタリア語で「門」の意味。転じてサッカーでは「堅守」を象徴する)を伝統とするイタリア守備陣を打開してゴールを奪うのは容易なことではない。高いハードルを超えて初めて日本は16強に進むことができる。

「小川がいなくなったのも含めてサッカー。そのハプニングに対して後手後手に回り、焦ってしまったら、今後も成功するのは難しい」と市丸も自戒を込めて話していたが、今大会最大の苦境を自分たちの力で乗り越えることが、未来への扉を開く絶対条件と言える。

 複数の決定機を作り出したウルグアイ戦後半を前向きに捉えつつ、岩崎・堂安・久保の3人がどこまでいい連携を見せられるか。そこを突き詰めて、最後の大一番に向かってほしいものだ。

(取材・文:元川悦子【水原】)

text by 元川悦子