とある土曜の深夜、都内で「深夜徘徊合コン」というイベントが行われました。

企画したのは、一般社団法人いっぱんじん連合の宮原直孝さん。これまでに何度も十数名の参加者と夜の街を歩くイベント「深夜徘徊」を開催。今年2月にはNHKの番組で取り上げられるなど、大変注目を集めています。

「夜歩くと、日中とはまた違った会話がはずむこともあります。以前から出会いの場の一つとしても面白いのではないかなと思っていました」と、宮原さん。今回初めて『合コン』という要素を組み込みました。

筆者(アラフォー・男性・独身)もいち参加者として参加してきました!
※プライバシー保護のため一部画像加工しています



微妙な距離を保ちつつ、深夜に集合


今回参加したのは、特定の恋人・パートナーがいない男女各9名。参加者のみに集合場所がメールで通達されます。

当日深夜、受付時間の夜23時45分が近づくにつれ、ちらほらと参加者が集まってきました。なんだか皆さん不安げで、微妙な距離を保ちつつ集合しています(筆者含む)。深夜0時、開会式が始まりました。



宮原さんの優しい進行の元、各自が自己紹介しつつ、今回のルートが発表されました。ゴールは竹芝ふ頭で、ここからの距離は実に10km(!!)。



そして、はぐれないよう先頭&最後尾にスタッフがいる、参加者間の連絡先の交換は自由、など深夜徘徊の諸注意が伝えられます。栄養補給のためのおやつや、ヒミツの封筒(?)なども支給され、いよいよ深夜徘徊合コンのスタートです!



なんかワクワク。大人同士の夜のピクニック


出発直前に宮原さんから心理テストが出され、同じ回答だった人同士で最初は集まって歩きましょうか、との提案が。このような仕掛けは、通常の「深夜徘徊」にはなく今回の合コンならではの要素とのこと。

しかし強制されたり、「さあ、もっと話して!話して!」といったお節介などはなく、各自気ままに夜の街を歩いていきます。東京の街は明かりが多く、暗くて困るということは特にありません。他の方の姿も、思っていたよりも普通に見ることができた感じでした。

時折、普段歩くと見過ごしそうなものや、深夜ならではの別の姿を見せるところなど、宮原さんが街の面白スポットを紹介。「今回は特に縁結びをメインとして、運気アップのパワースポットとムードの良さのバランスから選びました」とのこと。






ここで参加者の声をご紹介します(プライバシーに配慮して、一部脚色を加えた箇所もあります)。



<男性参加者>
元々散歩するのが好きで、過去に「深夜徘徊」に参加された経験もあるとのこと。

「こうやって何人かで歩くのが楽しいんです。ひとりだと、自分で歩く道を選びますが、普段選ばない自分の知らない道を歩くことで、新たな発見があります」

<女性参加者>
前述のNHKの番組で「深夜徘徊」を知り参加。女性ひとりで夜歩くのは不安もありますが、ちゃんとしたイベントの形で複数人ならば安心、というのも参加の動機にあったとのこと。
「夜は、街並みも人も、普段とは違った側面が出てきて好きです」

さらにこんな声も。

「普通の合コンというと、腹の探り合いとかのガツガツした部分があると思うんです。でも、この『深夜徘徊合コン』って、そういう要素は無さそうで。加えて、どういう人が来るんだろう、という興味もありました。自分もその参加者の一人なんですが(笑)」

夜のロングウォークはまだまだ終わらない




合間に数分の休憩こそあれど、基本はひたすら歩きっぱなし。日比谷公園では男女それぞれサイリウムを引いて、同じ色同士がしばらくペアで歩きましょうとのミニ企画があり。自分からはなかなか異性と二人きりになれないタイプの方への配慮もしっかりなされていました。



今回のコースでは合計4つの神社仏閣を回りました。その中のひとつ、東京23区で一番高い標高(25m)の愛宕山(あたごやま)に到着。

宮原さん「じゃあ、これを登りたいと思います」

ええーっ! マジですかっ!!運動不足の筆者は最後尾のスタッフの応援を受け、なんとか踏破。ただ、多くの皆さんは楽しいアトラクションの一環としてするすると登っていきました。



同じ職場や、友達同士など、同性ふたりで参加されたという人たちも何組かいらっしゃいました。「昼間の喧騒を離れて、一歩引いていい感じのムード」「こういう機会って、普段絶対ない」などの感想が聞かれました。

また、静かに過ごす人たちも。会話も楽しいけれど自分を見つめ直したり、町中でいろんな発見をしたり、過ごし方はそれぞれです。

個人的な感想ですが、日中の会話に比べて、深夜の会話は心の内面の話などがつい出てきて、少し話題が違ってくるようにも感じました。また、合コンというと暗黙のルールで会話を盛り上げなくてはいけないという部分がありますが、『深夜徘徊合コン』の場合、静かにトークしたり、沈黙してしまったりしても、それもまた自然なことのように感じました。

人見知りで黙り込んでしまいがちだけど、実は人と接したい場面もある。そんな方に向いているのかもしれません。

各自思い思いに喋ったり、考えたり、周囲を観察したり、残りの道を歩いていきます(なお筆者は遅れまいと歩くのに精いっぱい……)。





いよいよゴール、そして……




そして時刻は午前4時。竹芝ふ頭に到着。ここがゴールです。軽く閉会式が行われ、解散となりました。

特にカップル発表とかはないんですね。じゃあ、皆さんのこの後の行動はどうなるんだ!? ワクワク! ……と思いきや、意外にも対応はさまざま。

・「じゃ、これで。お疲れ様でした」と、あっさり帰る
・黒から灰色へと変わっていく空をぼんやりと眺める
・帰ろうとせず、ずっと語っている

LINE交換する若い男女もいましたが、人それぞれなのでした。

もちろん「出会い」の要素もあります。出発時に渡された、ヒミツの封筒の中身はカード。強制ではないけど、もし連絡しそびれて話したい人同士がいたら取り次ぎますよ、とのこと。

筆者は「同じ時間を共に過ごした仲間たちなのになあ」と一抹の寂しさも感じましたが、別の参加者のかたは「こうやって三々五々な感じが、さっぱりしてていいなあと」とのこと。



では宮原さんにもお話を伺ってみましょう。

―― 今回の「深夜徘徊合コン」、いかがでしたか?

楽しかったです。従来の『深夜徘徊』とは違い、参加者同士が会話される率が高かったのがとても印象的でした。ただ、悩んでいる点もあります。合コンの要素を、ライトなほうがいいのか、マッチングなどガチな部分を強めにするのか、まだ決めかねています

―― 合間にいくつかイベントもありましたが、より仕掛けを増やす感じでしょうか?

それもありますが、例えばお見合い番組のような「告白タイム」を予告無しで導入するのは、やりすぎかなとも思っています。そういう流れを求めていない人も多いでしょうし。ですので、次回はまた少し変わるかもしれません。ただ全く違うことをするということはなく、皆さんがよかったと思えるような改善をしていきたいと思います」

―― 最後に、この「深夜徘徊合コン」におけるゴールなどあれば教えて頂けませんか?

すごく夢の話になりますが……。 もしこのイベントをキッカケにカップルが誕生して、 さらに数年後結婚するとなったら、 結婚式の二次会に参加させて頂きたいですね(笑) 嬉しくて、彼らの友達以上に感動して泣くと思います。 そんなことを夢見て今後も続けていきたいです。

披露宴ではなく二次会というのが、「深夜徘徊」らしい奥ゆかしさがあって素敵です。ありがとうございました!



帰り道、朝の光を浴びて日常に戻りつつ、ふと参加者の女性の言葉を思い出しました。

「こうやって深夜にお会いしたからこその、会話だったりコミュニケーションだったりだと思うんです。同じ人と、もし日中普通に会ってたとしても、きっと全然違っていたんでしょうね」

(高柳優/イベニア)
(画像提供/一般社団法人いっぱんじん連合)