名作『ブレードランナー』が80年代に実現した「音楽と映像の融合」

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「サイバーパンクSFの草分け的な存在」「カルト映画の傑作」など、公開から35年が経った今もなお賛辞の言葉が贈られる『ブレードランナー』の新作『ブレードランナー 2049』が、いよいよ今年10月に日本で公開されます。『ブレードランナー』の世界観を語る上で欠かせないのが、映像にリンクする音楽。映画としての完成度をグッと上げた音楽の秘密とは?

『ブレードランナー』の音楽を作ったのは、エヴァンゲロス・オディセアス・パパサナシュー。ヴァンゲリスの名前で活動しているギリシャの音楽家です。ヴァンゲリスは、ヒュー・ハドソン監督の『炎のランナー』や高倉健主演の『南極物語』などの音楽を手がけ、特に『炎のランナー』のテーマは誰でも一度は聴いたことがあるでしょう。アナログシンセサイザーを駆使したジャンルにとらわれない壮麗なサウンドは、多くのアーティストに影響を与えています。

この稀代の音楽家によってブレードランナーの世界観は決定づけられたわけですが、驚きなのはすべての曲を彼ひとりで手がけたことです。イギリスのミュージシャンで彼の長年の仕事仲間であるアンドリュー・ホイは、次のように語っています。

〈ハリウッドのメジャー映画では、音楽が最後に付け加えられる。通常、何人ものミュージシャンが関わり、ほんの何日間かで完成させるのだ。(中略)だが、ヴァンゲリスは文字通り自分でなんでもできるアーティストだった。彼は作曲だけでなくアレンジをし、自分自身の音楽をプロデュースして、演奏もする〉

この方法論は、完成までに非常に時間がかかります。タイトなスケジュールが当たり前の世界で、あえてヴァンゲリスをキャスティングしたところに、リドリー・スコット監督の強いこだわりを感じます。ただ、スコットはことあるごとに修正を行って可能性の限りを試したため、最終的に楽曲が全て出来上がったのは公開の3か月だったそうです。

そして、スコットが音楽とビジュアルの融合について真剣に考えていたことがわかるものがあります。それは、製作当初の意図を組み込んだ『ファイナル・カット』『完全版』『最終版』。これらからは、主人公・デッカードのモノローグが取り去られ、音楽がより鮮明に聞こえ、映像にも没入していける……。そう考えると、劇場公開後にサウンドトラックが発売されず、『最終版』発表後に発売されたのも頷けます。作中で描かれた2019年まではもうすぐですが、製作過程においても現代のトレンドを先取りしていたのです。

◆ケトル VOL.36(2017年4月14日発売)