米ドラマ『フレンズ』で人気を博した俳優のデヴィッド・シュワイマーらによる「セクハラ撲滅」プロジェクトについては、先日お伝えしたとおり。

その後、デヴィッド・シュワイマーと、元々の作品を作ったイスラエル系アメリカ人の女性ディレクターであるシーガル・アヴィン、クリエイティブ・ディレクターのマスダック・ラッシの3氏にコスモポリタン アメリカ版がインタビュー。彼らがこの動画製作に賭けた思いや、ハリウッドにおけるセクハラ事情、いつか娘と話したいことなどについて詳しく聞いてきました。

【3氏が手がけた動画プロジェクト、「#ThatsHarassment(それ、ハラスメントです)」】

――これらの話はどこまで実話に基づいているのですか?

シーガル・アヴィン:最初に書いた脚本は私自身の実話に基づいています。『俳優編』の動画です(注:この動画は、クリステラ・アロンゾ演じる衣装係に対して、ノア・エメリッヒ演じる俳優が性器を出して誘い、性的な嫌がらせをするという内容)。これは18年前に若い脚本家だった私が、当時有名だったあるスターに会いに行ったときのことです。彼の家で座って、コーヒーを飲みながら作品について話していました。私がお手洗いに立ち、戻ってくると、部屋にはコーヒーがあって、一見さっきまでと同じ風景が広がっていました。あるものが彼のズボンから出ていたことを除いては。あの場面の「見てごらん、誰か君に挨拶しに来たよ」という台詞は、あの時の彼の言葉そのままです。奇妙な出来事だとわかってはいたのですが、それが非常に侮辱的なことであり、自分が性的な嫌がらせを受けたのだと理解するのに、数年かかりました。ショックだったのは、脚本を書くために机に向かうと、つい昨日の出来事のように彼の言葉を思い出したことです。

デヴィッド・シュワイマー:僕は母からセクハラの話を聞いて育ちました。僕の家族は全員セクハラに遭っています。ありがたいことに、6歳の娘を除いてね。僕の母がロー・スクール(法科大学院)に通っていた頃は、400人のうちの4人しか女性がいなかったそうです。彼女は70年代から90年代にかけて、カリフォルニアで若き女性弁護士として働いていました。ハラスメントの話は尽きません。でも、母に動画のリンクを送ると、初めてこう言ったんです。「お医者さんにセクハラを受けた話、したことあったかしら?」って(注:『医者編』では、シンシア・ニクソン演じる患者が、マイケル・ケリー演じる医者にセクハラを受ける)。僕はただ驚いて、「ううん」って感じで。姉も若い頃に医者にセクハラを受けたことがあったと言うんですが、それも初めて知りました。

これらの動画を製作する過程で、繰り返し自分をこの時代に生きる女性の立場に置くようにしました。いつも物のように見られて、ありとあらゆる方面で"格下"として扱われることに慣らされていて、男性よりも劣っていて、見かけが大事だと言われ続けているとしたら、多くの女性がハラスメントを受けてもそれを認識できないのは十分理解できます。男性が自動的に与えられるような尊重を受けたことがないのですから。

――他にどんなことをこのプロジェクトから学びましたか?

マスダック・ラッシ:男性の1人としては、こんな感じでした。「若い頃、自分もこの一線を越えたこと、なかったかな?」ってね。本当に微妙なことですから。何人かの男性の同僚に見せたんですが、最初はコメディだと思った人もいたんです。「おお、これ面白いね」って感じでね。特にズボンから(ペニスを)出した瞬間とか。でも、突然、その中の1人がこう言い出しました、「いや、これはコメディなんかじゃない」って。で、彼らの心の中に起こる変化を見ることができました。もしこの動画を男性たちに見せて、彼らに考えさせることができれば、きっと自分の息子達にも"微妙なグレーゾーン"について教えるだろうし、そうなれば、僕らも大事なことに貢献できたなと思います。

アヴィン:本当に多くの男性や友人たちがこれを見て、この一線を越えるのは容易だと言っていました。(最初に動画シリーズが公開された)イスラエルの男性の多くが、これを見た晩、それまでの自分を振り返ってこう自問したそうです。「自分もこういうことをしたことがあるけど、いつだったかな? あれをしたのはいつだっただろう?」って。

シュワイマー:このプロジェクトに参加してくれた俳優の1人がリハーサルの後に僕を呼びました。彼はこう言ったんです。テレビ番組に出演する時に、時々スタッフの女性をハグすることがあるけど、そういうことはするべきじゃないかもしれない、と。男性スタッフにはそんなことをしたことはないし、そこには(無意識の)力関係が働いていたのだと気づいたそうなんです。女性達には選択の余地がない。彼のハグを受け入れるしかないと。彼はものすごく繊細で現代的な思考を持つ、いいヤツです。彼にとってそのことを認識できたのはとても興味深いことだったと思うし、僕にとってもそうでした。

――皆さんのお嬢さんが大きくなったら、セクハラについてどんなことを話したいですか?

アヴィン:はっきりと口に出すこと、ですね。私には娘が2人いますが、それがこの動画から女性達に受け取って欲しいメッセージです。つまり、話すこと、何が起こっているのかを知ること。自分が何を望んでいて、何を望んでいないか、よく理解し、恐れることなく口にすることです。

シュワイマー:そもそも今回の目的は、人々を励まし、彼らがハラスメントの被害者や目撃者、あるいはそれに気づいている人であれば、口を開く勇気を持ってもらうことなんです。現実に、こうしたことが職場という、プロフェッショナルな場で起こっています。つまり、権力関係が絡んでいるということです。問題は、復讐を恐れて目撃した人々が前に出ない、または口に出さないことなんです。でも、こんなのはおかしいと同意してくれる人が増えれば増えるほど、(被害者や目撃者は)発言しやすくなります。自分の背後に味方の軍隊を控えているようなものなのです。

――ハリウッドの環境についてお聞きしたいと思います。舞台の上にいて、セクハラの瞬間に遭遇したときは、どういうお気持ちですか?

シュワイマー:今頭に浮かぶのは、『カメラマン編』ですね(注:この動画では、関係者が大勢見守る中、ボビー・カナヴェイル演じるカメラマンが、アナ・ヴァン・パッテン演じる新人モデルに、カメラの前でのマスターベーションを強要する)。これはエンターテイメント産業に携わる者なら誰でも何らかの形で関係があります。僕がこの動画を気に入っているのは、部屋の中に大勢の証人がいて、誰もが共犯だということが描かれているからなんです。これは音楽にしろ、テレビ、映画、広告、ファッションにしろ、僕らの業界について最も問題にすべきことです。僕たちはこの業界の風土について本当に見直さなくてはいけないと思います。これは例えば、ビル・コスビー(2015年に性的暴行疑惑で逮捕された米有名コメディアン)が起こした事件とも通じます。あれはレベルが違いますが、元は同じ発想です。非常に多くの人々が、何が起こっているかを知りながら、黙っていたのです。

ラッシ:そう、(『カメラマン編』の)最後の部分はとても力強いシーンでした。カメラを左右に振ると、ごく普通にプロの人々の姿が見えてきて、中には昼食を食べている人もいます。このカメラマンやディレクターを責めることは簡単ですが、ここには実に40人もの人々がいるのです。

シュワイマー:ところで、モデルの若い女性だけがここでハラスメントを受けているわけではありません。あの部屋にいて居心地の悪い気持ちにさせられ、そこで起こっていることに従うしかないと思わされている人々は、皆ハラスメントを受けているのです。もしあなたが若いアシスタントか何かだとして、モデルの女性が自分の体を触るように言われ、カメラマンが「ペニスが固くなった」と話すのを聞かされているとしたら、あなたもまたセクハラの被害者なのです。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation:mayuko akimoto

COSMOPOLITAN US