こんな上司だったら辞めるしかないかも……
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 「長時間労働」「パワハラ」「自殺」などの社会問題を題材にした北川恵海の同名小説を福士蒼汰&工藤阿須加主演で映画化した『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)の成島出監督が、本作のキーパーソンである憎まれ役のパワハラ部長・山上の裏設定を明かした。

 本作は、ブラック企業で過剰なノルマやパワハラに苦しむ若手社員・青山(工藤)が、幼なじみを名乗る謎の青年・ヤマモト(福士)に導かれ、突破口を見いだすべく奮闘する物語。明日を生き抜くことに必死で周りが見えなくなり、ラク(=死)になることばかり考えるようになる青山の悲痛な姿は、弱肉競争の現代を生きる社会人にとって身近な存在。パワハラ上司の部長・山上を演じるベテラン、吉田鋼太郎の名演も相まって、青山が職場で山上に罵倒され、土下座させられ、日に日に追い詰められていく様子は圧巻のリアリティーだ。

 思わず「こんな上司は絶対嫌だ!」と顔を背けたくなる戦慄のシーンだが、成島監督いわく山上部長には映画オリジナルの意外な裏設定があった。「吉田さんともお話させていただいたのですが、(映画では)山上は自衛隊出身という設定。高校を卒業して大学に行けなかったので自衛隊に入って、いろんな免許をとって、紆余曲折して結婚を機にサラリーマンになった。自衛官というのはすごく礼儀正しく、彼が部下だったころにはかわいがられたんだと思います。自分も愛のムチで育ってきているから部下にもついきつい言葉をかけてしまう」。

 実は、本編ではカットされているが当初山上のバックグラウンドを示すものとして、キャバクラ嬢から電話がかかってくるシーンがあったそうで、カットに至った経緯については「昔は社員旅行で背中を流し合ったり、しょっちゅう飲みに行ったりコミュニケーションの場があったのに、今は残業、残業で飲みに誘われても『まだ行けないんです』となり、その結果個人主義になってしまう。だから、山上もキャバクラのお姉ちゃんのところに通うようになったという設定だったんだけど、その色が強くなりすぎるのでカットしました」としている。

 青山に感情移入して映画を観ていると、とてもそうは思えないのだが「山上もまた被害者」というのが監督の持論。「感情移入できるキャラクターではないと思うけれどああいう人、普通にいましたからね。柿を盗んだら『こらー!』と説教してくる近所の雷オヤジのような。若者にやってはいけないことをたしなめる、いわば『男はつらいよ』の寅さんのような存在。山上も本来はそういうポジションだったのに、時代の変化に乗り切れずああなってしまった」。

 山上はおそらく多くの人の反感をかうであろうキャラクターだが、そんな緻密な裏設定をふまえてみると映画の見方が一層広がってくるはずだ。(取材・文:編集部 石井百合子)