阿部のミスパスから、済州に痛恨の先制点を与えてしまった。写真:徳原隆元

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[ACL決勝トーナメント1回戦1stレグ]
済州ユナイテッド 2-0 浦和レッズ
5月24日/韓国・済州
 
 済州戦の浦和は阿部をアンカーに置く3-5-2の布陣で臨んだ。ペトロヴィッチ監督が「最も攻撃で魅力的。そのバランスを保つことが難しい」というシステムだ。相手のシステムに対抗し、局面で数的優位を作れることもあり、指揮官は普段の3-4-2-1をあえて変えてきた。
 
 そこに、勝負の綾があったと言えた。いつもは普段通りに戦うべきだと強調する指揮官が、この日は“理想の一着”を選んだ。しかし、最も警戒すべき相手の武器であるカウンターをことごとく食らってしまった。
 
 しかも開始7分、阿部の縦パスが相手に奪われ、そこから先制点を決められた。相手が掴んだ最初の決定機だった。
 
 浦和は済州のカウンターを警戒し、できるだけサイドから攻める戦いを模索していた。サイドで数的優位を作りながら、主導権を握る。また、ピッチ中央よりもサイドであれば、ボールを奪われてもカウンターのリスクを軽減し、威力を半減できる。そういったメリットを考えての3-5-2の採用だった。
 
 しかし--先制点は、アンカーの阿部の縦パスをインターセプトされ、カウンターに持ち込まれたものだった。完全に済州の数的優位。前に人数をかけていた浦和は戻り切れない。
 
 浦和の左サイドに展開され、韓国代表に初めて選出されたファン・イルスのクロスからマルセロのヘディングシュートを決められてしまう。済州のカウンターの餌食になってしまったのだ。
 
 阿部はその失点シーンについて、次のように振り返っていた。
 
「右サイドのモリ(森脇)が(パスを出すように)呼んでいたなか、(相手がサイドに引き出され)ちょうど真ん中が空いたので、そこに通そうとした」
 
 サイドからの攻撃を徹底するなか、ようやく“空いた”中央のスペースに、阿部はパスを放った。ところが、それはむしろ、済州が獲物を仕留めるために仕掛けていた「罠」とも言えた。浦和の誰もが唇を噛み締めたが、「狙っている形に持ち込まれてしまった」。
 
 この早い時間帯の失点が響いた。その後は浦和がボールを支配したものの、素早いリトリートでゴール前を固める済州の壁をなかなか攻略できなかった。そして案の定、一段と攻め込んだ試合終了間際に、再びカウンターから2点目を奪われてしまった。
 
 阿部も悔やんだ。
 
「相手が前に来ることでパスは出せたが、『出させられている』感じはあった。毎回自分たちのペースで、試合をできるわけではない。我慢して、逆に相手にパスを回させることも、必要になってくる。そこから大事に自分たちのペースに戻していくという発想もあっていい」
 
 阿部がアンカーとして攻撃も守備も支え、まさにチームの「要」となっていた布陣は、そこにかなり重く、多くの負担が掛かってしまっていた。もちろん、阿部ならばこなせるタスクと言えたが……。

 結果論になるが、普段通りの3-4-2-1で臨んでいれば、結果は違っていたかもしれないと言えた展開だった。実際、後半からは柏木がボランチに下がってビルドアップに加わり、何度か決定的なチャンスを作り出した。
 
 もちろん、そのように相手に応じて対策を立てるようになったのは、今季のペトロヴィッチ監督の変化であり、挑戦でもあり、そのスタンスは支持したい。ただ、3-4-2-1と3-5-2は、似て非なる、まるで異なる特徴を持つ布陣であることも、この日、より明確になった。3-5-2のほうが前に人数をかけて攻撃的かもしれないが、その分、守備の決まりごとを徹底しなければ(ボールを持ったアンカーへの2シャドーのフォローなど)、成り立たないようだ。
 
 5月31日に埼玉スタジアムで第2戦を迎える(19時30分開始)。浦和は厳しい状況に追い込まれた。とはいえ、ホームで先制点を奪えれば、流れはその瞬間にガラリと変わる。
 
 一方、済州の質の高いカウンターに警戒しなければならない。そういった駆け引きを含め、浦和が9年ぶりのベスト8進出に向けて挑む。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)