複合型温泉施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」の男女露天風呂から基準値を上回るレジオネラ属菌が検出され、温泉エリアを営業休止しています。同施設は、秩父の新名所として期待されていただけに、今回の事態は「管理の不行き届き」としか言いようがありません。メルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす〜飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で元大手旅行雑誌編集長の飯塚さんは、「まともな清掃をしていなかったのでは」との厳しい見方を示しています。

またレジオネラ菌騒動。 根本的な対応を!

またか、という感じさえもしちゃうのだが、西武秩父駅前温泉『祭の湯』で、基準値を越えるレジオネラ属菌が検出されたとして、同施設は現在営業を休止している。 オープンは今年4月24日だったかと思う。 検出された浴槽は男女の露天風呂の大半の浴槽で、わずか1週間あまりでの「事件」にあきれてモノがいえない、というところである。

●秩父の温泉施設 「祭の湯」で基準超のレジオネラ属菌検出

●西武秩父駅前温泉レジオネラ菌検出 男女の露天風呂…温泉営業休止

●「西武秩父駅前温泉 祭の湯」レジオネラ属菌の検出による温泉施設の営業休止について

冒頭のコラムにも書いたが、僕は先週の17日に、札所めぐりの最後にこの湯を初めて訪ねたわけだが、確かに、あんまりにも人が多過ぎだな、とは思った。

ただ、露天風呂の浴槽のうち、菌が検出されたのは源泉を加熱したものではなくて、いわゆる沸かし湯の浴槽の方である。 僕は幸い菌の出なかった源泉岩風呂にしか浸かっていなかったので、今のところ何ら健康被害はない。

菌がどのくらいの量、検出されたかなどはまだニュースにはなっていないが、加温源泉浴槽からはレジオネラ属菌が出ず、沸かし湯(つまりは循環ろ過)の浴槽だけ出た、ということと、男女ともに出た、ということを考えると、原因は循環ろ過装置の管理面での問題であろうと推測される。

まあ、たぶん、だが、まともな清掃をしていなかったのだろう。

しかし、埼玉新聞の記事には「消毒を強化して安全が確認できるまで、温泉エリアの営業は休止するという」とある。

ここで問題なのは「消毒を強化して」という文言である。

これまで本メルマガで何度も書いてきているが、おおよそレジオネラ属菌問題の対応として結局「消毒強化」しか思いつかんのか、お前ら、という気がしてならない。

何よりも重要なのは消毒よりも「清掃管理」なのだ。

だいたい、消毒強化というけれど、このようなきちんとした会社が経営する施設で国の指針である「1L中、0.2ないし0.4mg」の塩素濃度を守ってなかった、というのは考えにくい。 要するに、残留塩素濃度を増やして消毒を強化しても、きっと根本的な解決にならないはずだ。

ちなみにここの湯の泉質は、pH7.5の等張性弱アルカリ性で、含よう素ーナトリウムー塩化物冷鉱泉、源泉温度は22度。 溶存物質合計は、9050mgである。 よう化物イオンの含有量は22.2mgとかなり多い。

僕は化学者でないので詳しいことは不明だが、調べてみると、よう化物には「酸化防止剤」的な作用があるとされている。

ちなみに、一般の温泉の消毒によく使用されている塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)は強力な酸化剤で、そう考えると、よう化物イオンを多く含む湯では、塩素消毒が効きにくいということも考えられる。

それを、馬鹿の一つ覚えのように「消毒を強化して」という安易な対応でどうにかしようというのは、あまりにも勉強が足りない気がする。

果たしてこの施設を運営していた会社の担当者の中に、本当に温泉について深く勉強して、循環のリスクとメリット、かけ流しのメリットとリスクを熟知していた人がいるのか、怪しい気もする。 これまで何度も書いている「自分の温泉に愛情がない」状態とはこういうことである。

もっとも、国の指針では消毒には塩素剤を推奨する旨が書いてあるわけで、そのあたりからもう一度考え直さないといけないと僕は思う。

消毒の方法は塩素剤だけではなく、ほかにもいろいろあるのである。

それに、消毒というのは衛生管理面では二の次の話で、衛生管理上もっとも優先すべきなのは、やはりしっかりとした清掃なのである。

とはいえ、この祭りの湯、駅に直結というすばらしい立地を考えると、僕のように札所めぐりでかいた汗を流して帰りたい人には非常に便利である。

単に塩素の量を増やしまくるというのではなく、徹底的な清掃を含めた正しい対策を経て、なんとか営業再開して欲しいものだと思う。

image by: 「祭の湯」公式HP

 

『『温泉失格』著者がホンネを明かす〜飯塚玲児の“一湯”両断!』

著者/飯塚玲児(記事一覧/メルマガ)

温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!

出典元:まぐまぐニュース!