人間の皮膚細胞を培養して生物学的ニューラルネットワークを作り出し、「脳」となってアナログモジュラーシンセサイザをリアルタイムで制御するという、デジタルでもアナログでもない"バイオロジカル"なサイバネティックシンセサイザー「cellF(セルフ)」が作り出されました。cellFとジャズドラマーが即興演奏を行うムービーもYouTubeにアップロードされています。

This cybernetic synth contains a brain grown from the inventor's cells - CDM Create Digital Music

http://cdm.link/2017/05/cybernetic-synth-contains-brain-grown-inventors-cells/

cellFの開発者であるGuy Ben-Aryさんは、自らの腕から採取した皮膚細胞を西オーストラリア大学のSymbioticAの実験室で培養し、iPS細胞技術を用いて皮膚細胞を幹細胞へと変換させました。幹細胞が分化を始めると神経幹細胞となり、多電極アレイ上で動作するニューラルネットワークへ完全に分化します。分化したニューラルネットワークはBen-Aryさんの「外部脳」の役割を果たし、シンセサイザーのプロセッサとして機能します。

このように細胞内のロジックを介して学習・応答を行う生物学的回路とアナログ回路を組み合わせた構造について、Ben-Aryさんは「ウェットアナログ回路」と名付けています。人間の脳は数十億個以上のニューロンで形成される洗練されたインタラクティブな複雑構造であるのに対して、アナログ回路に配線されたシャーレの中のニューロンネットワークは非常に簡素なものですが、音楽を演奏するには十分すぎるほどの膨大なデータを生成するとのこと。



cellFの仕組みの解説や、2016年10月に東京で行われたジャズドラマーとのライブについては、以下のムービーから見ることが可能です。

※途中で皮膚組織を採取した手首の損傷部位が映っているシーンがあるので、苦手な人は閲覧に注意してください。

cellF - Video Documentation - YouTube

世界初のニューラルシンセサイザー「cellF」





Ben-Aryさんの腕から採取した皮膚細胞を培養し……



シャーレの中に生まれた「ロックスター」をcellFにセットして演奏が始まります。



実験的打楽器奏者のダレン・ムーアさんがたたくリズムに合わせて、cellFがノイジーなメロディを奏でています。



ムーアさんの楽器類はすべてcellFに配線されており、楽器の音が電気刺激としてニューロンに供給されるようになっています。ニューロンは電気刺激に応じてシンセサイザーを制御するため、即興でポストヒューマンな音楽が演奏できたというわけです。