『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(c)関西テレビ

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 「平等はあらゆる善の根源であり、極度の不平等はあらゆる悪の根源である」。5月23日に放送された『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)の第7話。今回は大山(新木優子)の回とだけあって、彼女の美しいアクションシーンや、表情にあまり変化を出さないものの、かつての仲間を想い苦悩する様に目を奪われた視聴者は少なくないだろう。

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 冒頭の言葉は、同ドラマでテロリスト集団・平成維新軍の犯行声明に書かれており、また平成維新軍のメンバーである坂本(大庭明人/今井悠貴)が口にする言葉だ。この言葉は、フランス革命期の政治家かつ史上初のテロリストと言われる、マクシミリアン・フランソワ・マリ・イジドール・ド・ロベスピエールが言ったとされるもの。なお、この言葉を坂本に教えたのが、平成維新軍の前身と思われる組織“truth troopers”にかつて所属しており、今は特捜班のメンバーである大山だった。

 第7話の中盤で身柄を拘束された坂本が、取り調べをする吉永(田中哲司)に対し「今はもう格差社会に突入してるんです」と訴えかける。「国家に上手く騙されて、みんな気づいてないだけなんです。搾取する側とされる側のシステムが、強固に構築されつつあるんです」と続く。そして、「それを気づかせる存在が必要なんです」と、自身たち平成維新軍の“目的”らしきものを明かしていた。“搾取する側とされる側”。まさに今まで、彼らが標的にしてきた政府要人らは皆“搾取する側”であった。そんな、国家により隠されている事実を世に知らしめるため、標的をシンボルではなく特定の“人”として、危険を冒してまで犯行声明を出したり、わざとマスコミの目の前で殺害したりと、派手なテロ行為を実行し続けてきたのだ。

 いわゆる「この国の主流である普通の家庭」で育ったという坂本。だが、“普通”とされている家庭でさえ、成功を手に入れるには、秀でた何かを持っていない限り「手かせ足かせ」をはめられた状態からのスタートだと語る。坂本は成功への必須条件が“一流大学”へ入ることだと信じて疑わない。一流大学に入るにはお金がかかる。たとえ入試をパスしたとしても、“普通の家庭”ではそのお金を払うことは難しく、教育ローンや奨学金、つまり“借金”をしなければならない。その借金により、アルバイトに勤しむことを強いられると主張し、“普通”の家庭で生まれ育った自分たちには「真剣に夢を追う時間もない」と熱弁した。

 一方で、「高級外国車に乗って大学に通い、遊び回ってるような連中もいる。そんな連中は当たり前のように親のコネを使って、成功者として社会に出ていく」と、生まれた瞬間から裕福である政府要人らの子供たちを挙げ、この国の“不平等”さと“格差”を説明した。要するに今の日本は“不公平と不平等”なのであるのだと。だが、「勉強に時間をかけさえすれば、生まれや境遇に関係なく、一流と呼ばれる大学に入れる」というこの国の入試制度は平成維新軍(坂本自身)の「公平と平等」という信念に基づいているため、優れたものだとも話している。

 坂本は言う、「外側が豪華だったら、自然と内側も変わってくるさ。高級外国車に乗ると、自分が偉くなったと勘違いするみたいにね」、と。そんな“勘違い”した子供たちが“成功者”として世に出て、また彼らの子供たちが“勘違い”をしつつも“成功者”となっていく。そんな悪循環である「世襲を絶って公平と平等をもたらす」ために今回のテロを企てたのだと、後に判明するのだった。

 吉永がふと「もっと穏当なやり方があるんじゃないのか?」と尋ねると、坂本は「大人が増える一方で、若い連中は数でも力でも負ける一方です。そもそも大人も生きてくのに精一杯で、若い連中のことなんて無関心ですよ」と笑いながら答える。「そして、いずれ僕もそんな大人になるかもしれない。だから、そんなつまらない大人になる前に、この不自由な社会に一矢を報いなきゃいけないんです」と自身の使命感を口にした。「この国の未来のために」、何かを劇的に変えておかないといけない、と。

 だが、決して自身の手を汚さない坂本。あくまで坂本は、裏で指示を出すだけなのだ。自身は危険を冒さず、安全な場所に身を置く。これは、平成維新軍が最も憎んでいる“力を持った大人たち”と同じなのではないだろうか。また、今まではターゲットに選ばれていたのは、仕方がないと思える政府要人らがほとんどだったが、今回の標的に関しては、ただ政府要人らの子供であり、かつ警備が緩く溶け込みやすいという理由だけで大学生の子供たちを狙っていた。ターゲットに選ばれた彼らのほとんどは“悪人”ではない。ただ、政府要人の親を持っただけなのである。しかも、数が少なくなっている“若い連中”だ。いくら“世襲を絶つ”と言っても罪がない者を手にかけようとするのは、あまりに不条理だ。この選択もまた“不公平と不平等”なのではないだろうか。

 結局、今回のテロは失敗に終わり、坂本は逮捕される。余談だが、坂本の部屋の本棚には「フランス革命論」や「ニーチェの哲学」などの本が所狭しと並べられていた。坂本が憧れるフランス革命、その指導者のひとりであったロベスピエールや、「革命の大天使」と呼ばれたルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュストらは最終的に処刑されており、坂本もまたこのまま国家によって消される可能性は少なくない。

 だが、坂本は「でも、またすぐに維新軍の活躍を見られるよ。今の時代、誰でもテロリストになれるんだから」と不敵に笑っていた。たとえ坂本が消されたとしても、第3話で登場した藤崎兄弟のように、「この国の英雄」である平成維新軍もまた第2、第3と現れるのだ。さらに坂本は「僕が未成年だってこと忘れないでくださいね」とも言い残していた。もしかすると、消されずに再び這い上がってくるのかもしれない。

 第7話の最後に、平成維新軍を支持するネットの掲示板が映し出されており、その中に「世界には二つの力しかない。剣と精神の力である。そして最後は、精神が必ず剣に打ち勝つ。」というナポレオンの言葉が書き込まれていた。政府要人が“剣”であり、“精神”が平成維新軍を表しているのであろう。しかし、平成維新軍もまたテロという“剣”の力なのではないだろうか。よって、本当の意味で“精神”という言葉は、“覚悟”を持って闘い続ける公安機動捜査隊特捜班を指しているのだと信じたい。(文=戸塚安友奈)