社長は従業員の給料を決めるな!会社を好転させる評価制度とは

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自分が会社から正当に評価されているのか、というのは労働者にとって最も気になる問題だ。

もし、貢献度や成し遂げたことの割に給料が低いと感じたら、当然働くモチベーションは下がり、自分をもっと高く評価してくれる会社に転職してしまうだろう。

この種の人材流出は会社にとって脅威だ。言いかえれば、成果を残した人材が納得する評価を受けられる人事評価制度は会社の業績を左右するといえる。

『人事評価制度だけで利益が3割上がる!』(きこ書房刊)は労使ともに納得感を持ち、従業員の生産性を高め、業績の向上に結びつける人事評価制度が解説されている。

この評価制度はどのようなもので、どのように運用されてゆくべきものか。著者の高橋恭介さんにお話を聞いた。今回はその後編をお届けする。

■社内の「既得権」が社員のモチベーションを奪う

――高橋さんの提唱する評価制度は、結果だけでなくプロセスも含めて評価するというものですが、その評価において「成果をあげた人」の昇給源のひとつは、「成果が出なかった人」の減給分です。この構図があまりはっきりしすぎると、社内の人間関係がぎくしゃくしそうですが、この点についてはいかがですか?

高橋:特に年功序列式の会社がそうですが、今多くの会社で起きていることは、結果が出ていない人が必要以上の好待遇を与えられているということで、これは一種の既得権ともいえるものです。

その裏で、成果を出しているのに本来もらえるべき待遇をもらえていない人もいる。そういう人は泣く泣く我慢をしているか、嫌気が差して辞めているというのが現実です。

私が提唱している評価制度は、この歪んだ状態を正して、評価されるべき人がきちんと評価されるという普通の状態にしようというもので、それに対して「NO」という従業員がいるのなら、それはもうエゴでしかないでしょう。「それならほかの会社で働いてみたらどうですか」という話でしかありません。

――高橋さんは、人事評価制度の構築・運用のプロとして、さまざまな企業に自身の評価制度を広めています。そこでお聞きしたいのですが、ある企業が高橋さんの評価制度の採用を渋ったり難色を示す場合、どんな理由が多いのでしょうか?

高橋:経営者が自分で従業員の給与を決めたい意向を持っているケースと、こちらは仕方がないのですが経営が赤字のケースですね。

従業員一人ひとりの数値目標を設定したり、プロセスも評価に組み込んだりしても、トータルで赤字だと、評価を給料に反映させたくても「ない袖は振れない」ということになってしまいます。

この場合は、個々人の目標管理と、評価と報酬の連動を切り離して考えざるをえません。

――業種という観点ですと、どんな業種でも運用可能なのでしょうか。

高橋:どんな業種でも大丈夫ですが、飲食業のようにお客さんを相手にしていたり、在庫管理システムや予約管理システムなど、管理者が複数のクラウドを使っているような業種だと、導入後してもなかなか続かないという意味で難しさはありますね。

ただ、それでも導入して運用を続けている会社は業績が伸びているということはお伝えしたいです。

――高橋さんの評価制度において、各人への評価の公正さを保つためにやるべきことがありましたら教えていただければと思います。

高橋:何があっても経営者が自分で評価を決めずに、まずは評価制度に基づいて出てきた給与額を守ることです。

最初のうちは、経営者自身の評価と、評価制度で算出された評価の間にズレがあるはずです。でも、そこで査定を調整したりせずに、評価制度の方の精度を高める方向に注力していただきたいです。

個々人に課される目標が正しいか、評点を算出している評価者の評価方法が正しいか、といったポイントについて、経営者自身が見て自社の評価制度を改良しながら運用していくことが必要になります。

――自分の会社の従業員の給料は自分で決めたいと考える経営者は多いのでしょうか。

高橋:多いです。決めたいかどうかは別として、決めざるを得ないと考えている経営者も含めると99%そうじゃないですか。

なぜ従業員の給料を自分で決めたい、あるいは決めざるを得ないと考えるかと聞くと、ほとんどの経営者は「自社の管理職にその力量がない」とか「全体を見られるのは自分しかいない」といったことを言います。

それはそれで正しいのでしょうが、その現状を改善する唯一の手段が、社長が給料を決めずに、給与を決める仕組みを作って、それを継続して運用していくということなんです。

――最後になりますが、本書をもっとも読むべき経営層の方々にメッセージをお願いします。

高橋:勘違いしていただきたくないのですが、私の提唱している評価制度は単なる「結果主義」に基づくものでも、インセンティブや賞与を決めるためのものでもなく、一人ひとりの従業員をプロセスも含めて個別管理をして、それぞれの生産性を向上させるものです。

その意味では、「査定」よりも「人材育成」や「企業防衛」に主眼を置いたものであり、会社の規模は関係なくすべての経営者にとって大切なものでもあります。ぜひ自社をよりよくして、発展させていくために採り入れてみていただきたいですね。
(新刊JP編集部)

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