生放送でもボールの軌跡をCG合成できるため、より多面的にスポーツ中継が楽しめる

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 NHK放送技術研究所(技研)は、研究成果を発表する「技研公開2017」を、5月25日から28日までの4日間、東京都世田谷区砧のNHK放送研究所で開催する。23日に、一般公開に先立ってメディア向けの見学会を開いた。71回目を迎える今回のテーマは「2020年へ、その先へ、広がる放送技術」。30あまりのブースに8K放送や立体映像技術、色再現に優れた有機EL発光体など、最新の研究成果を集めた。

 見学会の冒頭で挨拶した黒田徹 所長は今回の見所について、AI、IoT、8K、立体テレビなどを挙げて説明。さらに「AIに関しては、機械学習やディープラーニングなどの研究は古くから続けてきた。これまで字幕や音声認識、画像認識などに応用してきたが、その成果を示した。また、立体テレビに関しては、研究の目標として2030年頃に何らかの形で導入できればと考えている。またVR・ARについては画像が粗いとの声が多い。そこで、一つの提案として、8Kの画質で楽しめるVR体験コーナーをつくった」などと解説した。

 AIに関しては、「AIを活用したスマートプロダクション」と題し、機械学習など新たな技術を放送の分野にどう応用するかを示した。例えば、現在人力で行っているSNSの書き込みの分析もAIを活用する。膨大な書き込みを整理し、何が起きているか、何が起きそうかを類推。これを取材の材料として提供し、番組制作を支援する。また音声や字幕のガイドの自動化なども精度を高め、場面に応じた出力を可能にしている。IoT技術では、スマートフォンとテレビを連携させるHybridcast Connectを活用し、番組とIoT機器などを連動させる仕組みも展示している。テレビに合わせてロボットが動くなどの例も展示した。

 スポーツ分野では、東京五輪・パラリンピックを控え「三次元被写体追跡スポーツグラフィックシステム」を展示。バレーボールのセットを使ってシステムを説明している。リアルタイムでボールの位置を推定し、CGのボールを画面に合成して、どこから打ったかやボールの軌跡、速度などの表示ができるシステムだ。2020年の放送での利用を目指し開発している。

 16年8月から試験放送が始まったスーパーハイビジョン(8K)。規格はできあがり、いよいよ本格的な番組制作が始まる。8Kの利点を最大に引き出すフルスペック信号を扱える放送機材が必要になる。技研では解像度が8Kで、フレームレートが120Hz、高いダイナミックレンジ(HDR)を備え、より自然に近い色彩を実現する広色域などの特徴を備えた制作機器群を試作した。そのほか、8K関連機材では、野外の撮影などで活躍する持ち運び型の8Kカムコーダーも展示。SDカード4枚刺しで1時間以上の8K映像が記録できる。機能検証用の試作機はとても持ち運べる大きさではないが、20年をめどに、一般的な持ち運び型テレビカメラの大きさに収める予定だ。

 8Kの次に来ると言われている立体テレビ。技研公開では毎回関連展示を行っているが、今回は「インテグラル立体テレビの要素技術」と題して、多くのカメラで立体映像を撮影し奥行きを計算、この情報を元によりリアルな立体映像を創り出す様子を展示している。

 現状ではまだまだ「何となく立体に見える」程度だが、より完成度を高め将来的には、何もない空間にリアルな立体映像が流れる、SFの世界が現実になりそうだ。「NHK技研公開2017」は入場無料。誰でも近未来の放送の世界が楽しめる。(BCN・道越一郎)