以前、本連載コラムでも書いたが、筆者は昨年9月7日、サンフランシスコで開催されたアップルの新製品発表会に招待された。

その際に『iPhone 7』と『iPhone 7 Plus』『Apple Watch Series 2』などと同時に、完全ワイヤレスオーディオデバイスとして発表されたのが『AirPods』だ。その独特な形状やユーザーフレンドリーな操作性からも、会場で大きな注目を集めていた。当初の発売予定からすると若干デビューは遅れたものの、『AirPods』は昨年末にリリースされ、いまでは実際にその機能性の高さを体感することができる。

南井正弘の「RUNNER’S DIGIHIGH」Vol.5



現在所有するスニーカーは約1000足! 世界中のマラソンレースに出場する南井正弘が、ランナー目線で綴るデジタルの”グッとくる話”

昨年9月に発売された『iPhone 7』と『iPhone 7 Plus』から3.5丱ぅ筌曠鵐献礇奪が廃止され、Lightningコネクタのみ対応となり、従来の3.5丱ぅ筌曠鵐廛薀阿離ーディオデバイスも使用できるようにと、Lightning変換アダプターが付属するようになった。また、Lightningコネクタを使用したヘッドホンである『EarPods』も同梱されている。しかしながら、イヤホンのためにライトニング用端子を使用すると「充電しながら音楽を聴くことができない」といった問題を指摘するユーザーの声も少なくはない。そして、実際にこの『AirPods』を使用してみると、そのような不便がたしかに解消できることを実感できた。逆にいえば、『iPhone 7』および『iPhone 7 Plus』を最大限に活用するには、『AirPods』の存在は不可欠と言えるかもしれない。



Apple

AirPods (実勢価格:1万8144円)

左右独立型のワイヤレスヘッドホン。イヤーピースの部分に2つの照度センサ、ノイズキャンセル用のマイクの穴が空けられている。軸の部分は太くなり、アンテナとバッテリを包み込む。かつてのモデルではケーブルが伸びていた部分の断面には、充電用の電極リングとズームマイクを備える。

ユーザーフレンドリーな操作感と、装着感の良さが魅力



ワイヤレスのオーディオディバイスということだけであれば、これまでもBluetooth接続のイヤホンは十分ポピュラーであったが、この『AirPods』は最初に簡単な操作でiPhoneとの接続設定を行なえば、次回からは充電器でもある専用ケースから取り出して耳に掛けた瞬間に接続が完了する、というユーザーフレンドリーな点が素晴らしい。反対に、耳から外すと一時停止するという機能も備わっている。

従来のBluetooth接続のイヤホンでは、使用するたびに接続設定を行なうことが煩わしかったり、機械オンチの人や高齢者にとっては、接続すること自体が容易ではなかった。そんなこともあって、取扱いが簡単な『AirPods』は幅広いユーザーから受け入れられることだろう。

それ以外にも、筆者が持っているBluetooth接続のイヤホンやヘッドフォンでは、YouTubeなどで動画を視聴する際に映像と音声のタイムラグが気になる製品もあったが、この『AirPods』はズレがほとんどなく、全く気にならないレベル。音質もクセのない感じで個人的には好みであり、1万8144円という価格を考えると納得だ。ライターという職業柄、私はiPhoneのボイスメモアプリをインタビュー取材などに活用し、その内容を原稿に起こす作業を頻繁に行なう。そうした作業の際にも何度か使用したが、『AirPods』は装着感が良いため、長時間使用しても耳が痛くなるようなことはなかった。さらに『AirPods』をダブルタップしてSiriを起動させ、音量の調節や通話を簡単に行うこともできる。





ランニングに『AirPods』を使ってみると……?



さて、前置きが長くなったが、肝心のランニング時に使用するオーディオデバイスとしての実力はどうだろうか?

従来の構造のイヤホンやヘッドフォンでは、腕振りの際にコードが邪魔になるという声も聞かれたが、Bluetoothを活用したワイヤレスヘッドホンである『AirPods』なら、その心配はない。しかしながら『AirPods』の形状はiPhoneに同梱されているイヤホンである『EarPods』とそっくりで、落下防止のワイヤーやイヤーフック、シリコンラバーのインナーイヤーパーツなどは付いていない。そのため、走行中の落下が心配だった。

実際に走り始めるとフィット感はよく、1辧6分程度のペースで走ったり、試しに公園の芝生で飛び跳ねたりしても落ちることはなかった。だが、ランが3劼曚匹魴于瓩靴憧世鬚くと、耳の穴から滑り落ちそうな感覚があり、紛失する心配も感じたので、その時点で公道におけるテストは終了することにした。

ウォーキングはともかく、ある程度以上のスピードのランニングで使用するには、落下の心配があることを考えると実用は難しいと思ったが、将来的にサードパーティ製でもいいので、落下防止のワイヤーやイヤーフックなどがリリースされたら、ランニング時に使用するのもいいかもしれない。以前にも述べたが自動車(特に電気自動車やハイブリッド車)やバイクの接近を感知しにくくなるので、個人的には音楽を聴きながらの公道でのランニングは薦めない。が、公園など自動車との接触の心配のない場所で音楽を聴きながら走行することには賛成なので、そんな時に前述のサードパーティ製グッズがリリースされるか、『AirPods』自体によりフィット性に優れたスポーツタイプが登場することになったら、ランナーにとっても必携のアイテムとなるだろう。

何度も言うが、耳に掛けた瞬間に接続が完了するという、『AirPods』の簡単かつ近未来的な操作性は、本当に魅力的である。

 

文/南井正弘

※『デジモノステーション』2017年3月号より抜粋

みないまさひろ/フリーライター、ランニングポータルサイト『Runners Pulse』編集長。某スポーツシューズブランドでプロダクト担当を10年務める。かつて、伝説的クイズ番組『カルトQ』(フジテレビ)のスニーカー部門チャンピオンにも輝く。ほぼ毎日のランを欠かさないファンランナー。