英マンチェスターで、コンサート会場爆発事件の犠牲者を追悼する集会で「アイ・ラブ・MCR(マンチェスター)」というメッセージを掲げる参加者(2017年5月23日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】英中部マンチェスター(Manchester)のコンサート会場で起きた自爆攻撃で、現場付近で物乞いをしていたホームレスの男性が瀕死(ひんし)状態の女性を抱きかかえてみとっていたことが分かり、英雄として称賛を集めている。

 10代の少女から圧倒的な支持を受ける米歌手アリアナ・グランデ(Ariana Grande)のコンサートが行われていた「マンチェスター・アリーナ(Manchester Arena)」で22日、サルマン・アベディ(Salman Abedi)容疑者が爆発物を起爆させた際、クリス・パーカー(Chris Parker)さん(33)は会場の入り口付近で物乞いをしていた。

 何人もが命を落とし、逃げ惑う人々でパニックが起きる中、パーカーさんは犠牲者を助けようと現場に駆けつけた。

「爆発音が聞こえたかと思うと、白い光が走り、煙も見えました。その後、泣き叫ぶ声が聞こえてきたんです」。パーカーさんは英通信社プレス・アソシエーション(Press Association)に、涙ぐみながら当時の様子を振り返った。

「私は(爆発の衝撃で)床にたたきつけられ、それから起き上がりました。逃げ出そうとは思いませんでした。助けなければ。そう直感して駆け出していたんです」

 会場の床には、至る所に人が倒れていたという。

■ホームレスにも「思いやる心ある」

「小さな女の子もいました……両足を失っていた子が。売り物のTシャツでくるんでやって『ママとパパはどこ?』と尋ねると、その子はこう言うんです。『パパは仕事。ママはあっち』と」

 パーカーさんは、少女の母親は亡くなってしまったのだと思ったと語っている。

 マンチェスターで路上生活を送ってほぼ1年になるパーカーさんは、収容人数2万1000人のマンチェスター・アリーナから来場者が帰るときに小銭を恵んでもらうため、よくこの会場に足を運んできた。

 パーカーさんは現場で1人の女性の最期をみとったという。「私の腕の中で息を引き取りました。60代の女性で、家族と一緒に来ていたと話していました」

 現場で被害者に手を貸したホームレスの人は、パーカーさんだけではない。

 会場近くで路上生活を送るスティーブン・ジョーンズ(Stephen Jones)さん(35)も、同じように「本能的に」助けに行った。

 元れんが職人のジョーンズさんは英ITVの取材に「ホームレスだからといって、私に人を思いやる心がないわけではありません」と語っている。

「マンチェスターには善良な人たちがたくさんいて、困っている私たちにも手を差し伸べてくれます。だから私たちもお返しをしないといけないんです」

 報道を受けて、クラウドファンディングのウェブサイトにパーカーさんやジョーンズさんのための募金ページが開設された。それぞれ1万ポンド(約145万円)を超える寄付金が寄せられている。

 パーカーさんの募金ページを立ち上げたマイケル・ジョンズ(Michael Johns)さんは、「私たちの社会の中で最も弱い立場にありながら、無私無欲の精神と勇気を示してくれた人間の一人」を助けるために何かせずにはいられなかったと説明している。
【翻訳編集】AFPBB News