レバノンの首都ベイルートの警察署前で、トランスセクシュアルの女性4人の釈放と「自然の摂理に反する」性交渉を禁じる刑法534条の撤廃を求めるLGBT活動家(2016年5月15日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

写真拡大

【AFP=時事】レバノンの首都ベイルート(Beirut)で先週、同性愛者やトランスジェンダーが大勢の聴衆を前に、自身の経験を語った。レア(Lea)さんは男性よりも女性が好きだと臆することなく宣言し、ジョセフ(Joseph)さんは治安部隊に拘束されたときのおぞましい出来事を明かした。

 15日夜にベイルートで行われたこのイベントは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)に対する差別を非難する、1週間にわたるイベント「ベイルート・プライド(Beirut Pride)」の一環。

 17日の「国際反ホモフォビア・反トランスフォビアの日(IDAHOT)」に合わせて企画されたもので、レバノンを含むアラブ世界でこのイベントが開かれたのは初めて。IDAHOTは同性愛やトランスジェンダーに対する偏見や嫌悪(ホモフォビア、トランスフォビア)の根絶を目指す日。

 レアさんが「男は好きじゃない。私は女、おっぱいが好き」と語ると、集まった約250人の聴衆の間で笑いが起きた。

 同性愛で死刑を科せられる国もあるアラブ地域の中では、レバノンは性的多様性に寛容な国とされている。それでも、レバノンの警察はゲイバーなどLGBTに好意的な場所を定期的に手入れしている。活動家らは、「不自然な」性的関係に最大1年の自由刑を科すこともある刑法の改正を求めている。

 また、レバノンの警察官が男性が同性愛者かどうかを判定するために「肛門検査」を実施しているという報道もあり、マスコミやソーシャルメディアからは怒りの声が上がっている。

 15日のイベントでは、この肛門検査も話題にあがった。レバノン医師会(Lebanese Order of Physicians)は2012年、医師が肛門検査を行うことを禁じている。

 同性愛者の男性、ジョセフさんは、3年前に情報機関員に数人の仲間と共に身柄を拘束されたときのことを語った。メンバーらは肛門検査をちらつかせながら、目隠しされたジョセフさんらを6時間にわたって尋問したという。

■得られぬ理解、家族との別れ

 多宗派国家のレバノンではいまだ大多数の家庭が保守的で、両親にカミングアウトすることも難しい。

 マフムード(Mahmoud)さんは、自分が同性愛者であることを父親に告げたときのことを語った。父親は、マフムードさんの家では男は男だと言い、モスクにもっと頻繁に通うことをすすめたり、医師に診てもらうことを強要したりした。

 マフムードさんは家族の希望に沿おうと1年近く努力したものの、「地獄のような日々だった」と振り返った。最後には父親に、「そのままでいたいなら家を出ろ」と言われ、家を出る決心をしたのだという。

 若い女性の同性愛者、ギーダ(Ghida)さんは、信心深い母親に事実を告げたときのことを明かした。母親は、娘に地獄に落ちてほしくないと言って泣いたという。「母は心からそう信じているようで、心が張り裂けそうになった」とギーダさんは話した。

 レバノンのイスラム教、キリスト教の宗教当局も同性愛問題をめぐり、大きく揺れている。聖職者からの「最後通告」を受け、LGBTの権利推進に関するセミナーが中止されたこともあるという。

 だが、「ベイルート・プライド」の主催者は前向きだ。「ベイルート・プライド」の生みの親ハディ・ダミアン(Hadi Damien)氏は「当局はわれわれの取り組みに反対していない。これは大きい」と語っている。
【翻訳編集】AFPBB News