念願のCNCフライスをついに注文……ただし、激安の中華CNCだがな
工作好きなら1度は欲しくなる......といっても過言ではない工作機械にCNCフライスがあります。とはいえ、実際に購入したいと思っても、低価格な個人向けの商品でも10万円以上と手を出しづらいのが現実です。そこで、激安なDIYキットを中国から輸入してみることにしました。

どうせ使わなくなるだろうけど、欲しいものは欲しい!


最初は改造や修理が目的でも、そのうち工作そのものが目的となっている......なんてことはよくあること。そしてこれがもう少し悪化すると工作よりも工具が気になり始め、ホームセンター通いを開始。気がつくとちょっといいドライバーがそろっていたり、使う予定のないガラスカッターや折り曲げ工具が手元にあったりと、廉価な工具が増殖しているという不思議な現象が起こり始めます。

ここまでくれば、電動工具に興味を持つのは時間の問題。電動ドライバーに始まり、ジグソー、丸のこ、サンダー、ディスクグラインダー、溶接機など、次々と欲しい工具が出てくるのは仕方ありません。だって、ホームセンターにあるんですもの。不可抗力です。そんな電動工具を見ていると、更に高度な加工ができる工作機械が気になってくるのは自然な流れといえるでしょう。垂直な穴開けができるボール盤、円柱や筒状のものを加工できる旋盤くらいまで興味が出てくると、フライス盤へと行き着くのはほぼ確実です。


フライス盤は、回転する刃(エンドミル)をX軸、Y軸、Z軸方向へ動かし、切削加工が可能な工作機械です。この制御をコンピューターで自動化し、より複雑な立体物の加工を実現したのが、CNCフライス。製品の説明で「アルミ削り出し」と書かれているものがありますが、CNCフライスがあれば、この削り出しができるようになるわけです。

とはいえ、3Dプリンターですらほとんど使っていないという前科のある私なので、CNCフライスを買ったところで使わないのは目に見えています。でも欲しい。そんなわけで、所有欲を満たすことを第一に安さを重視し、精度や実用性は妥協しまくってたどり着いたのが、CNCフライスのDIYキットを中国から個人輸入することでした。

ターゲットとなるDIYキットの条件を考える


自作のCNCフライスには、既存のフライス盤を改造してCNC化するキットがあります。10年位前はこういったキットが多数あったように思うのですが、いつの間にか下火になっていたようで、今だとパーツ単位で個別に揃えていかなくてはならないようです。自作としては楽しそうなのですが、ベースとなるフライス盤すらない自分としては、時間もお金もかかる方法だけに躊躇してしまいます。そんなわけでもっと簡単な、パーツがすべてセットになったDIYキットを選ぶことにしました。有名なのは、オリジナルマインドさんの「KitMill」シリーズ。「BT100」という製品は13万8000円という低価格ながら、アルミの切削まで可能という非常に魅力的なキットとなっています。



▲CNCフライスのDIYキットといえば、オリジナルマインドさん。10万円を切る「mini-CNC BLACK 1510」は衝撃的でした。今でも低価格なキットである「KitMill」シリーズがあり、まともなCNCフライスが欲しければ迷わず選びたいところ。

本気で使うならこのキット一択くらいの勢いなのですが、低価格とはいえ所有欲を満たすには少々お高い......。とりあえず、全パーツセットという条件だけにしておきます。

条件1:全てのパーツがセットになったDIYキット

切削できる材料には金属も含めたいところですが、これを実現するには強力なモーター、高い剛性の本体が必要になります。しっかりした作りのものは当然高くなりますので、価格を重視して妥協することにしました。材料は樹脂が削れれば十分とし、あわよくばアルミもいけるんじゃないかな、くらいの淡い希望としておきます。

条件2:切削できる材料に金属は含めない

所有することが目的とはいえ、気持ちよく財布の紐を緩めるには何かそれらしい大義名分(言い訳)が欲しいです。なんだか順序がおかしいですが、ここにきて用途を考えてみることにしましょう。

まず思いついたのが、機器の改造用途。過去にPC-98やTOWNSやセガサターンなどにPCパーツを突っ込んだり、液晶キットを組み立ててケースを作ったりといったことをしてきましたが、こういった工作に使う可能性です。今まではすべて手作業で加工しましたが、何度CNCフライスがあれば楽だろうと思ったことか......。また、インターフェースは延長して元の機器に合わせるということをやってましたが、この変換基板を切削で作れれば、シンプルでキレイにまとめられたハズです。今後こういった改造モノをやるかわかりませんが、「過去に欲しかった=将来使う予定がある」というのは非常に説得力がある理由ではないでしょうか。PCのケースに使おうと思って、分解したまま放置してるX68000もありますしね。

条件3:用途はケースの改造、基板の切削加工

こういった用途を考えた時に悩むのが、どのサイズまで加工するのかという事。もちろん、大きければ大きいほど加工できるものは増えますが、置き場所も必要になりますし、金額も高くなりがちです。改造では接続部品などを切削することがメインと考えれば、高さを無視して100×100mmくらいの範囲で加工できれば十分でしょう。PC関係だと、背面のIOパネルあたりが自作できるとうれしいのでサイズを調べてみると、6.25×1.75インチということがわかりました。1インチが25.4mmなので、158.75×44.45mm。長辺160mm以上あるといい感じですね。

もうひとつの用途である基板加工を考えてみましょう。元となる生基板のサイズを調べてみると200×300mmという大きなものだけでなく、100×100mmとか100×150mmなど小さめにカットされているものもありました。そんな大規模な回路を作ることはないので、100×150mmが加工できればよさそうです。

全部ひっくるめれば、長辺で160mm以上の加工ができれば問題なさそうですね。



▲「ATX Specification Version 2.2」より引用。インチ表記見るたびに思いますが、国際単位系使えよ。

条件4:加工範囲は長辺160mm以上

ところで、CNCフライスと似たようなものにレーザー加工機があります。基本的な動作は同じで、切削する代わりにレーザーで焼き切るという点だけが異なります。そのためか、多くのCNCフライスのDIYキットにはレーザーモジュールがオプションで用意されていることが多いです。レーザーモジュールは下は500mWから、上は5500mWくらいまであるのですが、出力が高いほどお値段も跳ね上がります。木の板に焼き付けるくらいなら500mWでもいいかと思うのですが、できれば数ミリのMDFとかをカットできると便利そうですよね。

そんなわけで、どのくらいの出力があればどんなものが切れるのかを探してみたところ、500mWで木などへ刻印、1000mWくらいでフェルトや厚紙のカット、2500mWで1〜2mmのMDFのカット、といった感じでした。工作で使うならもっと厚手の板をカットしたいところですが、その場合は高出力なCO2レーザー(40Wとかある)になり、CNCフライスのオプションにあるようなレーザーモジュールでは対応出来ない範囲。とはいえ、レーザー加工できるかどうかで使える範囲が大きく変わりそうなので、オプションでレーザーモジュールを追加することにしました。



▲一番低い出力のレーザーモジュールは500mWで、金額は30ドルちょっとくらい。2500mWだと70〜80ドルくらいで売っています。オプションで選んでも、だいたい差額はそのくらい。「2500メガワット」になってる機械翻訳にクスッときますね。

条件5:2500mW以上のレーザーモジュールを追加

そして最後に最も重要な条件。そう、予算です。失敗しても胃が痛くなる程度で諦められる範囲にしようということで、倒産した某旅行会社に支払って返ってこない旅費と同じ5万円までとしました。



▲関係ないですが、11月に債権者集会があるそうです。行きませんけど。

条件6:5万円以内

条件を決めていても機種選定で悩む


具体的な条件が揃ってきましたので、機種選定へと移りましょう。金額面から国内で扱われているDIYキットが対象から外れたため、悩むことなくAliexpressで探すことにします。

何も考えずに「CNC DIY」と検索してみると、目的のDIYキットが数多くヒットします。どれも似たようなものに見えるのですが、大きく2つの種類があることがわかりました。ひとつは、コントローラーにArduinoを使い、小さめのスピンドルモーターを採用して、ACアダプターで動作するものです。金属には対応せず、加工サイズは長辺300mm以下、価格も50ドル位の送料込みで300ドルを切るという低価格なものです。もうひとつは、パワフルなスピンドルモーターを採用し、金属加工に対応、300W以上の大きな電源ユニットと一体化したコントローラーを使った製品です。加工サイズが300mm以上のものがあり、テーブルだけとかコントローラーのみとか、パーツ単位で売られていることが多く感じました。本体が重たいため送料が高めで、500ドル以上というものが多かったです。



▲「CNC DIY」で検索すると、沢山のキットが出てきます。どれも似てるのですが、よく見ると結構違いがあります。

旋盤加工に近いこともできそうな4軸の製品にも惹かれたりしたのですが、今回はケースと基板の加工がメインなのと、何より所有欲を満たすのが優先なので、ACアダプターで動作する300ドル以下の手頃なものから選ぶことにします。予算的にはこのあたりが適切ですしね。(条件1、2、3、6をクリア)

加工サイズで分類してみると、多少前後はありますが、小さいものから130×90mm、160×100mm、240×180mm、300×180mmの4種類あるようです。サイズ条件で見れば130×90mmのモデルは即却下になるはずなんですが......「EleksMill」というのがすごくかわいくて最後まで悩んでしまいました。



▲EleksMakerの「EleksMill CNC 1309」。コンパクトで機能美にあふれる感じがたまりません。

製品ページを見てもらうとわかるのですが、樹脂製とはいえしっかりとしてるフレーム、手動ハンドル、コントローラーの保護、ステッピングモーターが側面に飛び出さないデザイン、支えには必ず金属パーツを使用、移動に便利な取っ手を装備するなど、安くするために手を抜いてそうな部分が見当たりません。そのぶんお値段はちょっと高めですが、2500mWレーザーモジュールとセットで310ドル以下で売ってるショップもあります。

ですが、さすがに130×90mmは小さすぎです。小さいからこそ欲しいってのはありますが......。ということで、後ろ髪を思いっきり引かれながらも諦めることにしました。

となると残るのは3サイズですが、今度は本体サイズから比較してみましょう。都合よく3つのサイズを並べた写真を掲載しているショップがありましたので、そちらを参考にしてみます。



▲横幅は左から、260mm、340mm、400mmとのこと。フレーム以外が共通なので、加工サイズ+100mmってところですね。

製品名が加工サイズというのがわかりやすいです。「1610」は一番コンパクトですが、加工サイズが条件ギリギリという点が気になります。また、他の2サイズと比べ奥行きが小さいというのもデメリット。そしてこのサイズで妥協できるなら、EleksMillでもいいじゃねーかという脳内意見が頭をもたげてきます。この未練を断ち切るためにも、あえて「1610」は却下としました。

「3018」は最も大きく、ほぼA4サイズの加工ができるのが強みですが、ちょっと大きすぎるのではないかという不安がよぎります。といっても60mmの差ですし、大は小を兼ねるともいいますし、こっちでいいかと一旦は決めました。しかし、「2418」との価格差がだいたい10〜15ドル程あって、不要なサイズに余計なお金を払うのかと考えたらその気が失せてしまいました。ということで、中途半端ですが「2418」を選んだわけです。(条件4をクリア)

ここまで決まってしまえば、あとは条件5となるレーザーモジュールを追加するだけなので、送料も含めて安めとなっていつつ、注文実績の多いショップを探していくだけです。そして絞り込もうと検索していて気がついたのですが、似たようなサイズの似たようなDIYキットなのに、微妙に違うのが3種類くらいあります。仮にA、B、Cとしましょう。

Aは先程サイズ比較にも登場してもらったもので、左右1本ずつの支柱をL字金具、補強材で固定しているものです。一見弱そうに見えますが、底面のフレームには横棒が入って剛性が高められていたりしますし、低価格化しつつも最低ラインは確保してある感があります。



▲支柱に大きめな補強材が入ってるので、支柱が1本でもそこそこ丈夫そうに見えます。こちらのショップで構造を確認。

Bは支えが左右2本ずつの支柱に強化されている上、ガイドとなるシャフトが3本と多く、ブレに強そうなのが魅力です。さらに手動ハンドルや、スピンドルモーターに保護回路らしきものまで装備されているのもポイントでしょう。しかし、何故かコントロール基板が下部にあって、切り屑で汚れてしまう心配が。また、底面外周のフレームは4本だけで横棒が入ってないので、テーブル側の剛性に少し不安があります。これ以外にも、シャフトの固定が樹脂板での圧迫ってどうなのよとか、モーターの回転数が低いとか、気になる点がイロイロと見えてきてしまいました。



▲支柱部分の作りはいいのですが、底面のフレームが4本だけっていうのがちょっと不安。こちらのショップで構造を確認。

Cは加工サイズが200×200mmとちょっと小さめのものなのですが、モーターとレーザーモジュールを両方同時に装着できるというのがメリットです(A、Bはモーターとの交換)。ただし、支柱は左右1本だけ。底面のフレームには補強の横棒がなく、強度面で不安が残ります。とくにレーザーモジュールを装着すると重心が変わってブレやすくなりそうで、AやBと比べると見劣りしてしまいます。



▲L字金具だけでも十分な剛性がある気もしますが、補強が少ないのは他と比べると見劣りする部分ではあります。こちらのショップで構造を確認。

なんだかんだいいつつも、きっとどれもそこそこの強度があって問題も少ないのだと思います。結局どれを選ぶのかは個人の趣味の範囲でしょう。ということで、主観だけで選びます。

Cは加工サイズが小さいということもあって却下。AかBで悩んだ結果、Bの方が作りが良さそうだと感じつつもAを選びました。理由は、Aのほうが10ドルくらい安かったから。それほど変わりそうにないなら、安いものを選ぼうと考えました。

レーザーモジュールは思い切って5500mWへアップ


ということで注文したのは「2418」で、利用したのはDIYキットで100以上の注文実績があった「IROUTER Store」というショップ。割引率が高いうえ、材料を固定するプレート、材料を削るカッター、刃の付け替えが簡単なER11がセットになっていたのが決め手です。送料が50ドル以上かかりますが、本体だけなら合計で200ドルを切る安さで予算を大幅に下回ってることもあり、レーザーモジュールは2500mWではなく奮発して5500mWを選ぶことにしました。60ドル以上高くなりますが、5500mWでどこまでカットできるか試したいですしね。



▲ここまでだいぶケチってきてたのに、最後にドーンと奮発して5500mWを選ぶあたり、お金の使い方に問題がありそうな気がします。

このセットで注文当時321.23ドル。300ドル以上だとクーポン割引でさらに7ドル安くなり、最終的な支払金額は314.23ドルでした。後日カードの利用明細を見たら日本円換算後で3万5687円だったので、なかなかの安さかと。

ということで、注文したのが5月17日。注文から数日で発送、そこから大体2〜3週間くらいかかるので、到着は6月の頭〜中頃かなと予想していたのですが、この原稿が完成する前の5月23日にイキナリ手元に届いてしまいました。注文から1週間足らずという、Aliexpressで購入したとは思えないほどのスピードです。これより5日も前に注文した別の品物は、まだ中国から出てもいないのに......。



▲突然届いた荷物に困惑しつつも嬉しさは隠せないわけで。中身をチラリと見ると、パーツの山が。組み立てる時間が欲しい!

ということで、立て込んでいてすぐに作り始められないのが悲しいですが、時間を見つけつつ少しずつ組み立てていきたいと思います。当然トラブルが予想されますので、そのあたりもレポートできればと思います。