投資信託が不振に陥った理由

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 投資信託協会の発表によると4月の株式投信の純資産総額は、前月比2,208億円増の86兆1,591億円。3カ月連続で過去最高を更新した。しかしその背景は日銀の金融緩和策とし継続しているETF(上場投信)の運用益の伸び。その押上げ額は2,888億円に上っている。

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 実は投信はいま、不振に陥っている。2016年度は14年ぶりに「解約額+償還額」が「購入額」を上回る「資金流出」となった。最大の要因は人気商品だったはずの『毎月分配型』投信にかかった急ブレーキである。4月に日本証券アナリスト協会が主催したセミナーで、金融庁の森信親長官は色をなしてこう言ったと伝えられている。

 「消費者の真の利益を顧みない生産者の論理が横行している。そんなビジネスを続けることに、社会的価値があるのか」

 森長官が口にした消費者とは「投信投資家」であり、生産者とは「証券会社」であることは明白。金融庁は個人の資産形成の証券商品の要として「投信」を位置付けている。但し金融庁の言う投信とは、複利効果が生かせる投信である。つまり株や債券に投資をして得た利益を再投資に回して資産を増やしていく方法である。説得力を持つ。何故なら利回り5%の運用を前提に考えると、資産を倍にするには20年かかるが複利なら15年で可能だからだ。

 しかし、10年度前後から売れ筋商品となった「毎月分配型」投信は、運用益の一定率を投資家に分配金として投資家に支払う。複利効果とは一線を画す。日本経済新聞社のQUICK資産運用研究所の調べでは10年度に新規に設定された投信の購入額の3分の2以上を毎月分配型が占めたという。森長官の怒りもわかるが、それなら金融庁側にも「筋」を通し自粛を促せなかった責任が問われよう。

 そして一方、証券会社サイドの非も大きい。「AI」だ「IoT」だといった新たなテーマが浮上してくる毎に新たな(スポット型)投信を乱発していった。しかも投資家の「拭いきれない」デフレ心理を逆手にとるように「毎月分配」方式を多発した。しかし周知のとおり世界的な低金利に加え、日銀のゼロ金利政策導入で超低金利時代は日増しに深刻化。利回り追求自体が困難な状態に陥っていった。毎月分配の資金を元々投資家の資金である元本から捻り出すという事態も現に出現した。さすがの証券会社も昨年以降は、毎月分配型投信の設定・販売から手を引く方向に大転換した。それでも前記の様に「資金流出」に沈んだ。

 こうした流れを契機に、プロが運用に当たる安全商品が謳い文句だった「投信」に「見直し論」が浮上している。主に「より厳選された商品化を検討すべき」とする論である。一理ある。とにかくいま上場企業数約4,000社に対し、公募投信の数は1・5倍の約6,000本に達している。