中国初の国産空母(写真:Imaginechina/アフロ)

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 中国外務省の華春瑩副報道局長は22日、中国当局が日本人計6人を「違法な活動」の疑いで拘束していることを明らかにした。これに先立ち、日本の報道各社は、山東省と海南省には大規模な軍事基地があり、6人には軍事機密詐取のスパイ容疑がかけられていると伝えている。

 ただ、菅義偉官房長官も同日、この6人が両省で3月に拘束されたことを確認しているとしたものの、スパイ容疑についてはコメントしていない。が、中国では習近平指導部が12年11月に発足後、「海外の反中国勢力」の流入を警戒し、取り締まりや監視を強めており、14年11月にはスパイ行為を具体的に定義した「反スパイ法」が施行されるなど、とりわけ軍事機密の詐取などのスパイ行為には厳しく対処する姿勢を示していたなかで、邦人6人が拘束されたことになる。

●軍事機密漏洩に強い危機感

 実は昨年12月上旬、今回の事件を暗示する伏線があった。日本の大手通信社である共同通信社は、中国総局が入手した建造中の初の国産空母の写真を加盟社に配信したが、中国人民解放軍総政治部の傘下にある「中国国防報」が12月28日付1面で、国産空母は「関係者以外が不法に撮影することは禁じられている」としたうえで、「軍事機密であり、国家の安否や政権の安定、戦争の勝敗にも関係する」などと指摘し、共同通信社を強く批判する記事を掲載していたのだ。

 その後、基地が集中する地域では監視体制が強化されており、今回の日本人の身柄拘束につながったことも十分考えられる。
 
 この共同通信の写真は記事とともに配信され、全国の地方紙などで掲載された。全国紙としては、産経新聞ホームページ内の「産経フォト」の「自衛隊・ミリタリー」セクションでも公表されている。記事では「初の国産空母の船体と艦橋がほぼ完成し、船体の作業用足場の大半が取り外されている」と伝えている。写真を見ると、船体はほぼ完成し塗装段階に入り、艦橋部分は無数の足場に囲まれているものの、その形は鮮明で建造作業が最終局面に差し掛かっていることが一目瞭然だ。写真は高精度のデジタル画像で、配信された5枚の写真のなかにドック全体が写っているものもあり、遠方から望遠レンズで撮影したことがわかる。

 これについて、中国国防報は1面の右側上部の位置という2番目に重要なニュースの扱いで、「国産空母の高精度写真流出に憂慮」との見出しを掲げた署名入り記事を掲載。共同通信の記事では、写真は「共同通信が入手した」と断っているが、国防報は「撮影者は同社の人員」として、同社関係者であると断定。「軍事機密がいったん漏れれば国家の安全と軍隊建設に重大な損失をきたす」などとして、「再び類似の事件が起こることを防がなければならない」と警告を発している。

 軍傘下の機関紙が1面で軍事機密漏洩を明らかにし、これほど危機意識を煽るのは異例中の異例だけに、軍が外国人への軍事機密漏洩に強い危機感を示しており、今回の6人の身柄拘束につながったと考えても不思議ではないだろう。

●日本大使館も注意喚起

 報道では今年3月、中国の山東省煙台と海南省三亜でそれぞれ3人が拘束された。6人のうち4人は地質調査会社「日本地下探査」(千葉県船橋市)の社員。中国の温泉開発会社の依頼により、3月下旬から両省で専用の測定機器を使用した地質調査を行っていたという。

 煙台には大きな港があり、海軍の軍艦も停泊していることで知られる。また、三亜は中国初の空母「遼寧」が初の南シナ海航海のあと停泊しており、海軍の基地があることは、やはりよく知られている。
 
 日本地下探査は記者会見で、6人が「専用機器を持っていたので怪しいというイメージを持たれたのかもしれない」と話しており、中国の公安要員が彼らをチェックしていた際、カメラなどで沿岸の風景を撮影するなどの行為を行い、それがスパイ行為と受け取られた可能性も否定できないだろう。

 中国では14年に「反スパイ法」が施行されたが、北京市国家安全局は今年4月、「反スパイ法」に基づき最大50万元(約800万円)の報奨金が支払われる通報奨励規則を施行。同法はスパイ行為を「外国のスパイ組織」への参加や指示を受けての活動などと定義しているが、「スパイ組織」の定義は曖昧だ。

 これを受けて日本大使館は今月、在留邦人に対し「軍事施設の撮影や無許可での測量、地質調査などで身柄を拘束されることがあり得る」と注意喚起のメールを送付していた、と産経新聞は報じている。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)