マレーシアには1980年代以降、多くの北朝鮮労働者が滞在していたが、金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件をめぐる両国の関係悪化を受け、ほとんどが帰国させられた。

最後まで残っていた35人も今月までに出国し、マレーシア国内の北朝鮮労働者は完全にいなくなったことが明らかになった。

34人死傷の大惨事

これは、マレーシア連邦政府のマシル・クジャット内務次官が、英字紙ボルネオ・ポストの取材に答えて明らかになったものだ。

マシル次官は「民間企業に対して北朝鮮労働者の雇用を禁じる命令は出していない」とし、今後、北朝鮮労働者を雇用するか否かは、民間企業に任せるとの方針を示した。一方で、最後まで残っていた北朝鮮労働者35人については、雇用主が労働許可証の延長申請をしなかったため、5月に失効し、全員が出国したと述べた。

「命令がなかったにもかかわらず、なぜ契約を更新しなかったのか、私もよくわかっていない。確実なことは、誰も延長を申請しなかったことだけだ」(マシル次官)

これで、マレーシアには北朝鮮労働者が1人もいなくなった。連邦政府移民局は今年4月、北朝鮮労働者すべてを国外退去処分にする方針を示していた。

連邦政府のワン・ジュナイディ内務副大臣はニュー・ストレート・タイムズの取材に、北朝鮮労働者はマレー半島(西マレーシア)での就労は認められていないと述べているが、ボルネオ(東マレーシア)にあるサラワク州は、マレーシア13州の中で唯一、北朝鮮労働者を受け入れていた。

同州は、歴史的な経緯から、首都クアラルンプールのあるマレー半島の各州より高度な自治権を有している。入管行政も連邦政府ではなく州の管轄となっており、ビザや労働許可証も州の移民局が発行する。そのため、北朝鮮労働者の受け入れが可能だった。

彼らのほとんどは、州都クチンから南東に100キロ離れた、インドネシアとの国境付近のジャングルの中にあるスランティック炭鉱で働いていたが、その存在は近隣住民を除いて知られていなかった。

2014年11月、この炭鉱で爆発事故が発生し、4人が死亡、30人が負傷する大惨事となった。この際、北朝鮮労働者の名前が死亡者のリストにあったことから、彼らの存在と、その劣悪な労働環境が知られるようになった。

現地の独立系メディアは、サラワク州の王族、与党政治家、北朝鮮当局が結託して、北朝鮮人をはじめとした外国人労働者を劣悪な環境で働かせ、利権を貪っていたと批判している。ちなみにマシル次官は、与党連合の国民戦線(BN)のひとつ、サラワク人民党(PRS)の所属で、スランティック炭鉱のあるスリ・アマン選挙区選出の下院議員だ。

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