シニアの性をオープンに

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【クローズアップ現代+】(NHK)2017年5月18日放送
高齢者だってセックス 『言えない』性の悩み

日本老年医学会が「高齢者」の定義を「65歳以上」から「75歳以上」にしようと提言するなど、最近、お年寄りが元気だ。

ところが、性欲はあるのに、「年甲斐もなく」と言われることを恐れ、周囲に相談できない高齢男性が増えている。妻との関係をどう築けばよいのか、子どもや孫は「枯れないお爺さん」にどう向き合えばよいのか。NHKらしからぬ大胆な角度からタブーに迫った。

「60歳未満お断り」のデリヘリの客たち

番組では冒頭、2017年4月、アダルトサイトを閲覧していた75歳の男性に偽の請求が届き、約5000万円をだましとられた事件を紹介した。モザイクがかかった映像で男性がこう告白した。

75歳男性「恥ずかしくて家族には相談できませんでした。要求されるままに、ずるずると何回もカネを払い込んでしまいました」

同様の被害に悩む高齢男性が急増している。国民生活センターによると、アダルト情報サイトの閲覧による詐欺被害は、2015年で約9万6000件だが、年代別で一番多いのが60代、次が70代で、3番目が50代だ。60〜70代男性のセックス面での脇の甘さが目立つ。日本性科学会が調査した結果でも、何と60代男性の76%、70代男性の75%が「性的な欲求がある」と答えている。

「まずは、様変わりするシニアの性行動の実態に迫りましょう」

MCの1人、鎌倉千秋アナのナレーションとともに、番組はNHKらしからぬ場面が始まった。東京都内のマンションの1室にある「派遣風俗店」の受付。こんなナレーションが流れる。

「ここは、60歳未満のお客様お断りのシニア専門店。自宅やホテルに女性を派遣します。料金は60分で1万5000円。いわゆる本番以外の性的サービスを提供しています」

従業員の女性がこう語る。

「60代後半から70代のお仕事をされている方が、よくお見えになります。若い人よりむしろ元気ですよ。パワフルなお客様が多い気がします」

店の常連客の70代男性が登場した。関西在住だ。妻に10年前から夜の営みを拒否され、2か月に1度、東京に出張するたびに利用している。

客の70代男性「僕は会社では、真面目な男で通っています。このトシで恥ずかしいですが、性欲を抑えることができません」

男性は、なじみの女性従業員とホテルに消えた。

「毎日アダルトサイトを見る自分がおぞましい」

番組では、60代を超えても性欲が衰えない男性たちの「苦悩」の声を次々に紹介した。

70歳男性「いまだに毎日のようにアダルトサイトを見ている自分がおぞましく、滑稽である」
69歳男性「『エロ親父』といわれるのが、シャク」

番組では、「高齢男性のセックス」に特化して売り上げを伸ばしている雑誌を紹介した。中高年向け健康情報誌が専門のマキノ出版の「壮快Z」だ。2年前に創刊され、毎号5万部を出している。番組では触れなかったが、同社のウェブサイトにはコンセプトをこう書いてある(要約抜粋)。

「『セックスを楽しむことは、健康長寿の秘訣である』をメインコンセプトにすえたムック本です。『Z』は絶倫、絶頂、絶品の意味から命名しました。すぐでき、すぐ効く、さまざまな性力アップ術が盛りだくさんの内容です」

そして、番組では触れなかったが、次のような見出しが表紙に踊る。

「美女医が続々登場! 高血圧、耳鳴り、腰痛を撃退する性感フィンガーセラピー初公開!」
「豊満カウンセラー、ミニスカ整体師が競演! 性力アップ術マルチレッスン!」
「豪華3大付録 歌麿の最高傑作春画が袋とじ16ページ/2大美熟女競演撮り下ろしDVD/No.1美熟女川上ゆいの妖艶袋とじ16ページ」

同社代表の室橋一彦氏がこう語った。

室橋氏「バイアグラのように男性機能を劇的に回復させる薬が開発され、高齢者の皆さんが性的な問題についても、非常に前向きになりました」

妻は「頭をなで、髪の毛に触れてほしい」だけ

一方、エキサイトする男性側に比べ、女性の側には戸惑いがみえる。中高年の性の問題が専門の田園調布学園大学の荒木乳根子(ちねこ)名誉教授(医師)は、40〜70代の約1000組の夫婦を対象に「どんな性関係が望ましいか」を調査した。その結果、男性で一番多いのが「性交渉を伴う愛情関係」だったが、女性の半数以上が「性交渉を持たない精神的な愛情やいたわりの関係」を望んだ。回答用紙には、76歳女性は「頭をなでてほしい。髪の毛に触れてほしい。性交渉をともなわない接触を欲している」と書き、65歳女性も「私自身は、触れ合ったり、ハグし合ったりして、心のつながりや温かさを感じることで十分なのです」と書いていた。

荒木さん「女性の場合、50〜60代で閉経すると性交痛が起こる人が多いのです。治療にはゼリーや女性ホルモン療法がありますが、そんなことをしてまでセックスなんかしたいと思わないよというのが女性の気持ちです」

この男女間のギャップから、男性の性欲に蓋(ふた)をされるヒズミが介護現場で起こっている。高齢男性をケアする女性介護職員がセクハラを受けるケースが増えているのだ。名古屋市の訪問介護センターの代表、漆原治志さんは、介護サービスを行なっている女性介護士や看護師から「セクハラ被害」の聞き取り調査を行なっている。

お爺さんの「セクハラ」にショックの家族

これまで264人中126人(48%)が被害を受けていた。内訳(複数回答)は、「胸や尻を触る」(94人)、「卑猥な言動」(89人)、「性交渉の誘い」(23人)、「陰部の露出」(15人)だ。女性介護士の1人が言った。

女性介護士「お尻を触られたことを家族の方に言っても、『ええ〜、お父さんが! そんなこと聞いたことがありません』とショックを受ける人が多いです。こちらも伝えられなくなり、表に出しにくくなります」

施設側でも表ざたにしたくないため、セクハラは長く続くという。

漆原さん「家族の理解があれば、対応の仕方があるのですが、家族もお爺さんの性の問題には触れたがらないため、問題が深刻化します。もっと社会全体が高齢者のセックスについてオープンに考える必要があると思います」

番組では最後に、高齢者の性をオープンにとらえるケースとして、米ニューヨーク市の老人ホームを取り上げた。ここでは入居者の恋愛を認め、施設内での性行為も許可し、性感染症予防のために避妊具を配っているという。番組ゲストの性科学者、宋美玄産婦人科医がこう語った。

宋さん「高齢者施設での恋愛は日本でもあっていいと思いますよ。相手が変われば、女性の側でもう一度セックスしたいという方が結構いるのです」