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東京都江戸川区のアパートで2015年、高校3年の岩瀬加奈さん(当時17歳)が、アルバイト先の元同僚の男性に殺害された事件の裁判員裁判の判決が5月23日、東京地裁であった。島田一裁判長は、強盗殺人と強盗強姦未遂の罪に問われた青木正裕被告人に対し、求刑通り無期懲役を言い渡した。判決後、加奈さんの遺族が記者会見し、判決の感想や、実名審理の意義を語った。

●日本の司法の限界を感じた

記者会見には両親と姉の3人が参加。無期懲役の判決を聞いた率直な感想を尋ねられ、父・正史さん(48)は「一言で言うと非常に残念です。最大限やっていただいたかとは思うが、『永山基準』(死刑を適用する際の判断基準)が一つの大きな壁になったかなと率直に思った」と言葉を絞り出した。

母・裕見子さん(49)は検察官と弁護士に感謝を述べた一方で「司法への絶望というよりは、司法への限界を感じました」、姉・咲貴さん(23)は「判決に関しては、ただただ残念でなりません。父と母も言っていますが、これは今の日本の司法の限界なんだということを改めて思い知りました」と厳しい表情で語った。

●実名で裁判をすることは当たり前、法廷で名前を呼べた

今回の裁判では、青木被告人が強姦未遂罪にも問われていたため、法廷で加奈さんの名前を出さずに匿名にすることも可能だったが、家族は今回の裁判で名前を出すことを希望した。

「被害にあった方たちが、被害者のAさんやBさんといった形で名前を呼ばれていることに違和感があった。娘の名前を法廷で当たり前に呼べないことがおかしなことだと思いました。悪いことをしていないのになぜ名前が出せないんだろうとは不思議だった」。事件後、様々な裁判を傍聴してきたという裕見子さんはそう話した。

「加奈」という名前は、生まれてくる子どもが女の子とわかった時に「運勢が良くて未来が開ける名前を」と「岩瀬」の苗字とあう名前を調べて決めたという。

咲貴さんは「妹の名前は岩瀬加奈なので、法廷で呼べたことは良かったと思う。実名で裁判をするという意味が分からなかった方たちもいるかもしれませんので、実名で裁判に臨むことができると皆さんに伝わったのであれば良かった」と振り返った。

加奈さんに今伝えたいことはなにかと聞かれ、咲貴さんは「4人で(裁判を)頑張らせてくれてありがとう、と会ったら抱きしめて言ってあげたい」。目を赤くしながら笑顔で話した。

(弁護士ドットコムニュース)