<権力の座にしがみつこうとする一人の独裁者のせいで、経済と政治の危機から戦争状態へ>

南米のベネズエラでは、すでに泥沼化していた危機がさらに深刻さを増している。ニコラス・マドゥロ大統領の退陣を求める抗議活動が2カ月ほど前に始まってから、デモによる死者は少なくとも49人に上っている。5月22日には、ストリートで怒り狂っていた民衆が1人の男性の体に火をつけた。目撃者はその男性を窃盗犯だとしているが、政府は大統領支持派だったと述べている。また、独裁者だった故ウゴ・チャベス前大統領の銅像を破壊していたデモ隊は、飽きるとチャベスの母親の家に放火した。

そうした容赦ない破壊行動の大半は一般市民によるもので、その発端は、今年3月に政府が議会の立法権を剥奪しようとしたことだ。議会は野党の最後の砦だ。反発したのは民衆だけではない。マドゥロ派の中心人物と見られてきたルイサ・オルテガ検事総長が5月22日、マドゥロ寄りの議員で構成する議会を発足し憲法を書き直そうとする計画に公然と反対した。政治的・経済的な危機が制御不能に陥るなか、何としても権力の座にしがみつこうとするマドゥロの最後の試みだ。

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オルテガが初めて反対の声を上げたのは今年3月、最高裁が議会の権限を剥奪しようとしたときだ。ベネズエラ中に驚きが走った。最高裁による決定はその後ほとんどが撤回されたが、いったんタガが外れた暴動は元には戻らず、何十万人ものベネズエラ人がマドゥロ政権に対する抗議行動を続けている。

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狙撃兵がデモ隊を狙う

ベネズエラはあらゆる意味で戦場だ。首都カラカスは治安部隊の戦車などで占拠されている。報道機関やソーシャルメディアは、マドゥロ政権が狙撃兵を投入してデモ隊を攻撃していると報じている。体制崩壊のときに何が起こるかわからないという恐れも広まっている。ロイター通信が5月22日に報じたところによると、ベネズエラ政府は「ロシア製の携帯式地対空ミサイルシステムを5000基」保持しているという。

ベネズエラ政府はこれまで、「帝国主義」のアメリカが侵攻してくる恐れがあるとして、武器備蓄を正当化してきた。その軍備は南米最大だ。今のような不安定な状況下で、アメリカ製携帯式防空ミサイル、スティンガーミサイルのような兵器が政府保管庫から流出すれば、大変な脅威となるだろう。

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オルテガ自身が抗議行動に参加したわけではないかもしれない。しかし、マドゥロが選挙を遅らせて開こうとしている「憲法制定議会」れを公然と非難する書簡を書いたことは事実だ。

エミリー・タムキン