tofubeats『FANTASY CLUB』

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 ケンドリック・ラマー、Future、Thundercat、The Weeknd、The Chainsmokersなどが次々と新作を発表しているが(どれも素晴らしい!)、彼らの作品は、海外の潮流に敏感な日本のアーティストもかなり大きな影響を与えている。最新のヒップホップ、R&B、ジャズをどのように解釈し、自己の作品のなかに取り込むか、そのエディット・センスこそが、いまのアーティストに求められる重要な要素なのだ。そこで今回は海外のトレンドにコミットしながら、独創的な音楽へと結びつけているアーティストたちの新作を紹介したい。

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 これまでtofubeatsの作品は「このトラックは○○の新作のシンセからの引用かな」「このビートの組み方はガバトランスっぽい」などという聴き方をすることが多かったのだが、メジャー3rdアルバムとなる本作『FANTASY CLUB』は、<これ以上もう気づかないでいい>と語り掛ける「CHANT #1」、<何かあるようで何も無いな>と呟く「SHOPPINGMALL (FOR FANTASY CLUB)」など、彼自身が紡ぎ出すリリックに強く惹きつけられてしまった。トライバルテクノの進化形とも言える「FANTASY CLUB」、近未来感たっぷりのフューチャーポップ「THIS CITY」などのインストももちろん素晴らしいが、本作のキモは彼自身の心情がリアルに反映された言葉ではないだろうか。声を素材として扱い、トラックに取り込む構成力の高さも素晴らしい。

 前作『Good Morning』に続きSALUのセルフプロデュースによる本作『INDIGO』には、SUNNY BOY、David Amber、Estra、RYUJAといったトラックメイカーが参加。現行のUSヒップホップのテイストを巧みに取り入れながら、恋人、親友、未来の子供たちなどに対する愛を表現したリリック、メロディの要素を強めたフロウを丁寧に重ねることによって、これまで以上にポップな仕上がりとなった。もっとも印象的だったのは、SALUをフックアップし、初期の作品をプロデュースしたBACHLOGICとのコラボレーションによる「TOKYO」。The Weekndを想起させるような近未来的ファンクサウンドに90年代の日本のポップス感を加え、現在の東京に対する愛憎を歌ったこの曲は、新しい表現に挑戦した本作を象徴するナンバーのひとつと言えるだろう。

 資生堂「アネッサ(ANESSA)」CMソングとしてオンエア中の最新シングル曲「SKY’s the limit」は、ぼくのりりっくのぼうよみ本人の「ここまで明るく突き抜けた曲を作ったのは初めて」というコメント通り、夏のキラキラした日差しをイメージさせるようなポップチューン。トロピカル・ハウス、EDMのテイストもさりげなく取り込まれ、“おしゃれで気持ちいい”というシンプルな印象を与える楽曲に仕上がっている。トラック・プロデュースはDYES IWASAKI。ジャズにも精通したこのクリエイターは、ぼくりりがリスペクトを表明している電波少女の新曲「ME」も手がけていて、このつながりも興味深い。カップリングにはササノマリイのトラックによる「つきとさなぎ」を収録。電子音、ノイズ、シンセなどを緻密かつ繊細に構築したサウンドと、自分自身の壁を壊そうともがく姿を描いたリリックが有機的に共存している。

 ファッション、音楽、パフォーマンスを高いレベルで融合させたボーイズ・グループとして支持を強めているXOXの4thシングル『High School Boo!』。表題曲「High School Boo!」は元*NSYNCのJC・シャゼイが作曲に参加したダンス・ポップ・チューン。ここ数年の海外ポップシーンのトレンドであるネオ・ファンク、ネオ・ソウル系のサウンドを前面に押し出し、<寝ても覚めても君に夢中で>という歌詞を組み合わせることで、2017年の潮流をしっかり捉えたアイドル・ポップに結び付けている。大瀧詠一が「分子分母論」で示唆している通り、もともと日本のポップスは、洋楽のテイストを取り入れ、その上に和の要素を乗せることで成り立ってきたーーということを改めて認識させてくれる佳曲。

 90年代のアシッドジャズ、R&Bなどをルーツにしたバンドサウンド、英語と日本語をナチュラルに結びつけるボーカルによって、シティポップ・ブームの枠を超え、幅広いリスナーに浸透しつあるNulbarichの1st EP『Who We Are』。リードトラックの「It’s Who We Are」はファンキーなカッティング・ギターにリードされたダンサブルなナンバー。徹底的に洗練されたコード構成と生き生きとしたグルーヴを放つバンド・アンサンブルのバランスが素晴らしく、ただひたすら気持ちよく浸ってしまう。80年代のAORを思い起こさせる音像とゆったりしたバイブレーションが印象的な「Ordinary」も絶品。気分が良くて何が悪い、と言いたくなる充実作だ。(森朋之)