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■どんなクルマ?

トロフェオの立ち位置

フィアット500ベースのアバルトに、新たなバリエーションが加わった。5車種もラインナップがあれば十分だろうと思うかもしれないが、そうではなかったわけだ。

この595トロフェオの英国価格は£17,360(251万円)で、ベーシックな595と、その上位の595ツーリズモとの中間に位置する。

また、これと同時に限定モデルの「695XSRヤマハ」も登場。モトGPでスポンサードしているマシンにちなんだもので、こちらの価格は£20,360(294万円)だ。

595と595トロフェオの違い

トロフェオの1.4ℓターボは160ps仕様で、595より15ps高く、ツーリズモより5ps低い。しかし、トロフェオとツーリズモのトルクは同値で、0-100km/h加速=7.3秒、最高速度=217km/hのパフォーマンスも同じ。なお、ベースの595は7.8秒/209km/hだ。

トロフェオの装備を見ると、595より大きな17インチのホイールや、4本出しのレコード・モンツァ製エグゾースト、前ベンチレーテッド/後ソリッドのドリルド・ディスク、コニの減衰力調整式ダンパーなどが備わる。

ダンパーは、低入力時のロード・ホールディングを犠牲にすることなく、高入力時のハンドリングを改善するべく、内部に別系統のオイル流路を追加している。

この構造は、コニ製でないダンパーにも採用されているが、乗り心地が乱れた際には、その効果に疑問を感じる部分もある。

インテリアは基本的に、他の500ベースのアバルトと変わらず、小さなスペースにスタイリッシュな仕立てが施される。

シートには6つの丸い通気孔が穿たれ、ヘッドレストにはアバルトの名が刺繍される。ステアリング・ホイールは革巻きリムで、7.0インチ・ディスプレイの「Uコネクト」インフォテインメント・システムは、基本的な車両データも表示する。

■どんな感じ?

魅せるクルマ

キャビンは狭く、座面は高いが、よほど背が高くなければ閉塞感はすぐに忘れる。走り出せば、そのエンターテインメント性に夢中になれるからだ。とくに、今回の試乗コースとなったサルデーニャのように、整った路面であればなおさらである。

フロント・タイヤは路面にしっかりと食いつき、脇目もふらず前へ進もうとする。コーナーのエイペックスめがけて獰猛なまでに突き進む。TTCと呼ばれるトルク・ベクタリング機構が貢献している。

1.4ℓターボは、2000rpmを超えると、射撃演習場を離れて見ているような音を発しはじめる。

ステアリングは精確で、安心感のある重さがあるが、フィードバックは小さい。けれどもその精確さが、反応性の不足を補っている。

ホールド性に優れたシート、手触りのいいステアリング・ホイール、滑らかな動きのシフト・レバー、そしてたくましい雰囲気が、大胆な走りを後押ししてくれる。

とくに、このクルマをタイトなコーナーに放り込み、ESPをカットして4輪を滑らせながら脱出できれば、そんな気分はなおさら盛り上がる。

熱狂的な走りではあるが、少なくとも路面がきれいなうちは、手に負えなくなることはない。

■「買い」か?

エネルギッシュのひとこと

そう、路面だ。踏み荒らされた道で、595が無駄に活発なクルマになることは経験済みである。おそらく長距離を走れば、どこかでそれを知ることになるだろう。時として、シートの上で跳ね上がることもあるだろう。乗り心地がスムースなのは、路面が荒れていない場合に限られる。

とはいえ、こんなに魅了されるほど好戦的なマシンであれば、そんな小さからぬ欠点も(ほぼ)忘れさせてくれる。

弾けるようなエネルギッシュな走りがお好みなら、トロフェオはそれを満たしてくれる。

このモデルは、わずかばかり出力が上回るツーリズモよりずっと手軽に、ベース・モデルからのパワーアップを手に入れられる。

145psの595に£2,100(30万円)追い金すれば、有効に使える速さと、その差はわずかでも魅力は大きい追加アイテムが得られるというのは、なかなか魅力的な提案ではないか。

アバルト595トロフェオ

■価格 £17,360(251万円) 
■最高速度 217km/h 
■0-100km/h加速 7.3秒 
■燃費 16.7km/ℓ 
■CO2排出量 139g/km 
■乾燥重量 1215kg 
■エンジン 直列4気筒1368ccターボ・ガソリン 
■最高出力 160ps/5500rpm 
■最大トルク 23.5kg-m/3000rpm 
■ギアボックス 5速マニュアル