(写真提供=SPORTS KOREA)

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韓国の大統領選挙が終わって、早くも10日以上が経った。現在、文在寅・新大統領への好感度は非常に高く、言葉通り一挙手一投足がニュースになっている状態だ。

一方で、文在寅大統領を支持しなかった人たちのなかには失望感もあるだろう。そんな人たちを対象にした記事も出ている。

「大統領選挙が終わり…歓喜・虚脱を超えよう」という連載記事で、「大統領選挙は終わったが、自分が支持していた候補にあまりにも精神的な結束感を見せた人たちのなかには、火病(ファビョン)を患う恐れがある」と警鐘を鳴らしているのだ。

“韓国特有の病気”とされる火病

同記事で「火病」を取り上げた背景には、ここ数年で火病患者が青年層に拡大しているという事実がある。

そもそも火病という病気は、積もりに積もった怒りやストレスが原因で体や心にもたらされる苦痛のことで、呼吸困難、食欲不振、うつ症状、不眠、全身の疼痛などが起こる精神疾患のことだ。

“韓国特有の病気”とされ、同国では年間11万人が苦しんでいるという調査結果もあった。

(参考記事:年間11万人が“火病”に苦しむ現代韓国。なぜ火病は韓国特有の病気なのか

これまでは主に40〜50代の中年、そして女性患者が多いとされてきたが、ここ数年はどうも事情が変わってきたという。20〜30代の青年たちの間で、火病患者が急増しているというのだ。

青年患者がここ数年で53%増

韓国健康保険審査評価院の資料によると、20〜30代の火病患者数は2011年に1867人だったが、2016年には2859人に増えた。

ここ6年間で53%も増加していることになる。

特に青年層のなかでも男性は増加が顕著で、387人(2011年)から846人(2016年)と2倍以上も増えてしまった。

“青年火病”が広がっている原因は、どこにあるのだろうか。

韓国メディアの取材に答えた専門医は、「20〜30代の火病増加は就職難、貧富の格差、激しい競争文化などによる現代社会の青年問題とつながっている」と分析する。

そして「若い患者たちは主に職場や学業に対する負担感によって火病を発症する。未来に対する不確実性と、相対的な剥奪感から来る心の葛藤を訴える人が多い」と語った。

“ヘル朝鮮”で暮らす若者たちのストレス

韓国の若者を取り巻く社会状況の厳しさは、これまでも何度か紹介してきた。

恋愛・結婚・出産・マイホーム・人間関係をあきらめた「5放世代」(夢と希望をプラスした「7放世代」とも)と呼ばれたりする韓国の若者たちは、「スプーン階級論」という社会的“身分制度”を作り出したり、自国を「ヘル朝鮮」と自虐したりと、常にストレスが溜まっているように見える。

最近のSNS上では、「バスに乗ろうと思ったが腹が立ってタクシーに乗った」「さっきイラっとしたからコーヒーを買った」などという書き込みとともに、“シバルピヨン”(意訳すれば「ちくしょう費用」)という新造語も目につくようになった。

シバルピヨンを使わなければ、火病になるという主張だ。

火病は“怒り”を調節できない遠因にも

前出の専門医は、「火病はもどかしさから始まるが、次第に意欲喪失や無気力感を訴えるようになり、うつ病に発展することが多い。悪口、暴力、憤怒による行動を見せることも少なくない」と付け加えている。

成人男女の半数以上が怒りをうまくコントロールできない“怒り調節障害”を患っており、10人に1人は専門的な治療が必要な状態だという、韓国精神健康学会の調査結果もあった。

火病患者が増えれば、怒りを調節できない人も相対的に増えてしまうということだろう。

いずれにせよ、大統領選挙が終わり多くの人が喜んでいる今だからこそ、“少数派”は喪失感や虚脱感にさいなまれている。そこに火病がさらに拡大する恐れがあるわけだが、国家の未来を担う青年層たちには広がってほしくないものだ。

(文=慎 武宏)